古巣相手に痛烈な恩返し
10月16日(水)、東京ドームで開幕した『2024 JERA クライマックスシリーズ セ』ファイナルステージ。第1戦はファーストステージを勝ち上がったDeNAが王者・巨人を2-0で下し、優勝アドバンテージを含む対戦成績を1勝1敗のタイとした。
先発したアンソニー・ケイが6回1安打無失点の好投を見せると、4回表に佐野恵太のソロが飛び出し1点を先制。終盤7回には代打・筒香嘉智が起用に応える適時打を放って貴重な追加点を挙げ、このリードを計5投手のリレーで守り抜いた。
今季チーム最多の28セーブを挙げたクローザー・森原康平が右肩の不安でベンチ外となる緊急事態のなか、かつての守護神・山﨑康晃を皮切りに、7回のピンチは坂本裕哉が無失点で切り抜け、8回は昨年まで巨人でプレーしていた堀岡隼人が無失点の好リリーフ。2点差の最終回は今季セーブなしの伊勢大夢が三者凡退で見事に締め、完封リレーを完成させた。
なかでも“サプライズ起用”と言えるのが、2点リードの8回を堀岡に託したシーンだろう。昨オフに巨人を自由契約となり、DeNAが育成契約で獲得した26歳の右腕。支配下登録を勝ち取ったのは今年6月のことで、レギュラーシーズンの登板は6~7月に3試合と、10月に入ってから3試合という計6試合の登板に留まっていた。
それでも、阪神とのファーストステージ第2戦でも8回から登板して1回無失点の好投。この時は8点リードというやや余裕のある状況だったが、迎えた古巣相手のファイナルステージでは2点差の8回という緊迫した場面を任され、その重圧をはねのける投球で期待に応えて見せた。
「リストラ組」の意地
今季のDeNAの救援防御率は2.83で、これはリーグ5番目という成績。セーブランキングでは森原がリーグ3位タイに入っているが、ホールドランキングを見ると14位の伊勢(18ホールド)がチーム最上位と、年間を通じて勝ちパターンを固定することはできなかった。
それだけに、この大一番で堀岡のような新星が登場するというのは頼もしい限りだろう。ちょうど1年前、10月13日に戦力外通告という絶望を味わい、そこから這い上がった男の意地。その点、DeNAのブルペンにはもう一人たのしみな男がいる。中川颯だ。
奇しくも堀岡と同じ1998年生まれの26歳右腕。昨オフにオリックスで2度目の戦力外通告を受けるも、地元球団のDeNAが獲得を表明。オリックスでは育成契約だったが、DeNAは支配下選手として獲得したところからも期待の大きさが見て取れた。
春季キャンプもA班スタートで、実戦でも好調ぶりをアピール。特にオープン戦では3試合・13イニングを投げて無失点という完璧な内容で、開幕ローテーションの座を掴んだ。
開幕後は先発だけでなくロングリリーフとしても起用されるなど重宝され、4月30日の中日戦で嬉しいプロ初勝利を挙げたほか、9月5日の広島戦ではプロ初ホールド、10月6日の中日戦ではプロ初セーブも記録。加入1年目から29試合に登板し、3勝負けなしと存在感を発揮した。
昨年はファームで好投を続けながら、投手陣の層が厚すぎたオリックス特有のチーム事情もあって支配下復帰を勝ち取ることは叶わず。自身が入団した2021年からチームはリーグ3連覇を達成したが、その間の一軍登板はわずか1試合だけという悔しい日々を過ごしていた。
それだけに、これまでは外から眺めることしかできなかったポストシーズンの戦いに参加できているというのは選手としてこれ以上ない喜びだろう。ファーストステージからここまでまだ登板機会はないが、マウンド上でその喜びを爆発させるようなパフォーマンスが発揮された時、DeNAのブルペンにまた新たな光明が差し込んでくる。
捨てる神あれば拾う神あり
2024年のプロ野球は8球団が戦いを終え、ポストシーズンに入る前には各球団から戦力外通告を受けた選手たちが続々と発表された。
しかもそれで終わりではなく、クライマックスシリーズの全日程終了後から日本シリーズ終了翌日まではいわゆる“第2次戦力外通告期間”となり、各球団から追加の自由契約選手が発表される。
ファンにとっても気の休まらない時期となるが、なかには堀岡や中川のように戦力外を経て大舞台に返り咲く例もある。まさに「捨てる神あれば拾う神あり」。今まさにどん底にいる選手のなかから、1年後に新天地で輝きを放つ選手が出てきても何ら不思議はない。
リーグ3位からの“下剋上”を目指すDeNAの救世主として躍動することが、「リストラ組」の希望となる。堀岡や中川には1試合でも多く大舞台で活躍する姿を届けてもらいたい。
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