“絶対王者”不在で4人が初受賞
10月9日(水)、楽天モバイルパークで行われた楽天-西武戦をもって2024年プロ野球のレギュラーシーズン全日程が終了した。
それに伴い、今季の個人タイトルも正式に決定。野手では6部門のうち5部門をソフトバンク勢が占めるなど、独走で4年ぶりのリーグ制覇を成し遂げたチャンピオンチームの躍動が目立つ結果となった。
今季のパ・リーグのタイトル争いと言えば、“ポスト山本由伸”の座を巡るバトルが大きな注目を集めていた。今年から海を渡ったかつてのオリックスのエースは、2021年から2023年にかけて3年連続で“投手四冠”を達成。これはプロ野球史上初の快挙だった。
一人の投手が独占していた「最多勝」「最優秀防御率」「最高勝率」「最多奪三振」が解放され、6球団の投手たちによる争奪戦へ。まずはその結果から見ていこう。
▼ 最多勝
14勝 有原航平(ソフトバンク/5年ぶり2度目)
14勝 伊藤大海(日本ハム/初受賞)
▼ 最優秀防御率
1.88 リバン・モイネロ(ソフトバンク/初受賞)
▼ 最高勝率
.737 伊藤大海(日本ハム/初受賞)
▼ 最多奪三振
187個 今井達也(西武/初受賞)
最多勝は同数で2名が分け合うこととなったため、先発投手のタイトルホルダーは計5名。このうち4名は嬉しい初受賞となった。
日本ハムの伊藤大海は最多勝と最高勝率の二冠達成。ライバルの有原が先に14勝でシーズンを終えており、10月8日の楽天戦では単独最多勝をかけて先発するも、結果は7回2失点で敗戦投手に。勝率も下げる結果となったが、規定投球回到達者としては唯一の7割超えで堂々のタイトル奪取となった。
また、伊藤は奪三振も161個で終わってみればリーグ2位の好成績。“三冠”を阻んだのは西武の今井達也。昨季までは137個がキャリアハイだった右腕が、一気に50個も更新する187奪三振で嬉しい初タイトルを掴んだ。
序盤からハイペースで奪三振を積み重ねていたなか、決定打となったのが7月の奪三振率11.65(17回/22奪三振)、9月も同10.64(22回/26奪三振)という猛チャージ。今井は「開幕前から目標にしていましたが、まさか獲得できると思っていなかったので、正直なところ驚いています」と喜びを語りつつ、「来年は200奪三振を目指してがんばりたい」とさらなる飛躍も誓った。
“雨天コールド”に涙
そしてもうひとつ、最後の最後まで熾烈を極め、かつ印象的な幕切れとなったのが最優秀防御率を巡る争いだ。
今季から先発に転向したソフトバンクのモイネロが規定到達者で唯一の1点台となる防御率1.88でシーズンを終えたなか、「個人成績」の欄に載っていないところから虎視眈々と逆転を狙う男がいた。オリックスの宮城大弥である。
今季は故障による離脱もあって規定投球回に到達していなかったものの、9月29日の楽天戦を終えた段階で規定まで「7回1/3」と迫り、防御率も1.92の好成績。10月6日のチーム最終戦・楽天戦の結果次第では4年連続の規定到達、さらには最優秀防御率のタイトル獲得という可能性も残していた。
迎えた今季20度目の先発マウンドでは、降りしきる雨にもペースを乱されることなく6回・79球で1失点と好投。規定到達まであと1回1/3、防御率も1.91とモイネロの背中を確実に視界に捉えていたのだが、宮城の挑戦はここでまさかの結末を迎える。
弱まることなく降り続けた雨の影響がグラウンドレベルを悪化させ、7回表のオリックスの攻撃中に試合が一時中断。土を入れたうえで懸命なグラウンド整備が行われるも、約40分の中断もむなしく“降雨コールド”のジャッジが下された。8-1でオリックスが勝利。宮城には7勝目が記録されたが、スタンドに残ったオリックスファンからあがったのは歓声ではなく悲鳴にも近い声だった。
試合後、ベンチではタオルで目元を拭う宮城の姿が。23歳の左腕は過去に新人王の獲得歴はあるものの、先発投手としての個人タイトルは手にしたことがない。“最も身近で偉大な先輩”が大きな壁となって立ちはだかっていたからだ。
かねてより「由伸さんからタイトルを“奪いたい”」と口にしていたなか、昨年も防御率はリーグ3位、勝率は惜しくも2位とあと一歩及ばず。“奪う”という目標を達成することが叶わなかっただけに、先輩が不在となる今季こそはタイトルを、という想いは強かったことだろう。
この悔しさをバネに、来季こそは1年間ローテーションを守って雪辱を果たしたいところ。今季から先発に転向していきなりタイトルを奪取したモイネロはもちろん、ルーキーイヤーから2ケタ・10勝を挙げてリーグ2位の防御率2.17を記録した西武・武内夏暉らとの争いが今から楽しみだ。
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