鷹の正捕手の打棒が復活
優勝へのマジックナンバー「34」が点灯しているソフトバンク。8日のロッテ戦では相手先発の佐々木朗希を攻略して、2位との直接対決で勝ち越しに成功。ゲーム差を11に広げ、貯金は今季最多タイの32と、圧倒的な強さを見せている。
この独走モードを支えているのが、リーグダントツの420得点を誇る打線だ。チーム打率.259、72本塁打はいずれもリーグトップ。柳田悠岐が戦列を離れる中、栗原陵矢、山川穂高、近藤健介の強固なクリーンアップに加え、柳町達や正木智也ら若手も台頭。主砲が抜けた穴を感じさせない攻撃力を見せている。
この破壊力抜群の打線の中で存在感を放っているのが、正捕手・甲斐拓也だ。大分・楊志館高から2010年育成ドラフト6位で入団し、2013年に支配下登録。2017年には正捕手の座をつかみ取り、育成出身初となるゴールデングラブとベストナインをダブル受賞した。2020年からは野村克也氏の背番号「19」を継承し、2021年には球団3人目となる全試合出場も果たすなど順風満帆なキャリアを築いてきた。
ただ、その陰で打撃が低迷。打率は2019年の.260をピークに、ここ数シーズンは2割前後で推移と苦しんできた。それが今季は8月8日時点で80試合に出場し、打率.263、5本塁打、34打点をマーク。出塁率/長打率/OPSも.324/.411/.735と、昨季までとはまるで別人のような好成績を残している。
好調の要因は「フライボール革命」?
特に、進化を見せているのが長打力。本塁打こそ5本にとどまっているが、二塁打はここまで18本で自己最多となる昨季の16本を既に超えており、長打率もキャリアハイの.411を記録している。
昨季までとは一味違った打撃を見せている甲斐だが、好調の要因は何なのだろうか。調べてみると、ゴロとフライの割合に大きな変化が見られた。
上の表は今季を含めてこの4年間の打球性質内訳を示している。過去3年間はゴロ、フライともに40%台中盤を記録し、ほぼ同じ比率となっていた。だが、今季はゴロの割合が30.7%に低下した一方、フライの割合が60.8%にまで増加。外野フライの割合も50.0%を記録するなど今季はフライを意図的に打ち上げるよう、打撃スタイルを変更している様がうかがえる。
近年、野球界ではボールの下面を叩き、スピンをかけてフライを打ち上げる打法が流行。「フライボール革命」とも呼ばれ、長打になりにくいゴロを打つよりも打球に角度をつけて打ち上げる方が得点につながりやすいことから、データ分析が盛んなMLBが発端となり、注目を集めた。
甲斐は一軍に定着した2017年以降でフライの割合が50%を超えたことが一度もない中、今季は60.8%と突出して高い値を記録。上記の考え方を取り入れ、大きな打撃改造を行ったとみるのが自然だろう。
「フライボール革命」によりキャリアハイとなる成績を残している甲斐拓也。打順こそ変わらず8番に座るが、切れ目のない打線形成に一役買っていることは間違いない。4年ぶりのペナント制覇へ、鷹の正捕手が守備だけでなく打撃でもチームを下支えしている。
※成績は8月8日終了時点
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