5年ぶりの4番で21打席ぶり快音
DeNA筒香嘉智が19日の中日戦(横浜)で5年ぶりの4番に座った。今季全試合で4番を務めてきた牧秀悟が前日の走塁で右膝裏の張りを訴えたためスタメンから外れ、筒香が2019年以来となる“元指定席”で先発出場。第3打席で二塁打、第4打席で左前打と2安打を放ったが、チームは2-3で敗れた。
MLBジャイアンツをFAとなっていた筒香の古巣復帰が発表されたのが4月16日午後2時25分。時間は「つつごう」にちなんだもので、退団以来空けていた背番号25を再びつけることも決まった。
復帰後は二軍で6試合に出場して17打数3安打の打率.176にとどまっていたものの、5月6日に一軍昇格してヤクルト戦に6番レフトでスタメン出場すると、8回に豪快な逆転1号3ラン。DeNAファンで埋まる右翼席に放り込むド派手な“復帰祝い”となった。
さらに5月11日の阪神戦でも8回に決勝2号ソロを放ち、抜群の存在感を見せつけた。
しかし、それ以降、ピタリと快音が消え、12日の阪神戦から19日の中日戦第2打席まで20打席連続無安打。第3打席で21打席ぶりの安打を放ったものの打率.206にとどまっている。26年ぶりのリーグ制覇へ救世主としての活躍を期待されただけに、現状は物足りなさが残る。
秋山翔吾や福留孝介も苦労した日本球界復帰1年目
メジャーリーグに挑戦した選手が日本球界に復帰すると、いやが上にも期待が高まる。渡米前に活躍したイメージが残っており、そこに「元メジャーリーガー」という肩書が加わるのだから仕方ないだろう。
しかし、似て非なる日米の野球で、すぐに適応できるほど甘くないことは歴史が証明している。記憶に新しいのは現広島の秋山翔吾だ。
西武時代の2016年には216安打のNPB記録を樹立したヒットメーカーは、2020年からMLBレッズでプレーしたが、142試合出場で317打数71安打の打率.224に終わり、2022年シーズン途中にパドレスをFAとなって広島に移籍した。
古巣・西武ではなく広島を選んだため驚きと期待が入り混じった加入だったが、同年は44試合出場で155打数41安打の打率.265。西武時代に首位打者1回、最多安打に4回輝いた強打者のイメージとは違っていた。
さらにさかのぼれば、日米通算2450安打の福留孝介でさえも、ヤンキース傘下を自由契約になって阪神に移籍した2013年は63試合出場で212打数42安打の打率.198に終わっている。140試合に出場して打率.281、20本塁打の好成績を残したのは日本復帰3年目の2015年だ。
課題は変化球と低めのボール球の見極め
いくらメジャーに挑戦するほどの一流打者でも、アメリカの野球に適応しようとフォームのマイナーチェンジやトレーニングなどを繰り返す。結果、アメリカでの成功につながったとしても、帰国してすぐに日本球界で結果を残せるとは限らない。
渡米中に出てきた他球団の投手に慣れていないこともある。アジャストするのは簡単ではないのだ。
では、筒香は具体的に渡米前後でどこが違うのだろうか。29本塁打を放った渡米前年の2019年と2024年5月19日までのデータを比較してみた。
ストレートの打率は2019年が.228、2024年が.222とほぼ変わらない。しかし、変化球は打率.317から.188と大きく下がっている。日本の投手の変化球に対応できていないのだ。
また、筒香はローボールヒッターとして知られるが、高低のデータは以下の通りとなっている。
高めの打率は渡米前が.188で今季が.200と上がっているが、低めの打率は.301から.231と大幅に下落。得意なはずの低めを打てていない。
つまり、低めの変化球を見極められていないのではないか。そこでストライクゾーンとボールゾーンのデータも調べてみた。
ストライクゾーンのスイング率は63.7%から58.2%に下落。逆にボールゾーンのスイング率は24.3%から25.0%とわずかだが上昇している。日米のストライクゾーンの違いもあるだろう。2019年と比較すると、ストライクを見逃してボールに手を出していることになる。
それならファーストストライクから積極的に打っていくのも方策のひとつ。ファーストストライクのデータは下の通りとなっている。
ファーストストライクのスイング率は2019年が45.5%、2024年が45.7%とほぼ変わらないにもかかわらず、打率は.462から.375に下落。コンタクト率も87.7%から62.5%に下がっている。
つまり積極性は失っていないものの、変化球や低めのボール球の見極めができていないのだ。
やはり、より多くの投手として対戦して勘を取り戻し、馴れていくしかないだろう。筒香の完全復活はもう少し先になりそうだ。26年ぶりの優勝へ救世主の完全復活が待たれる。
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