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実力拮抗のハイレベルな日本シリーズ、勝敗分けた阪神とオリックスの「わずかな差」

2023 11/7 06:00SPAIA編集部
阪神の岡田彰布監督とオリックスの中嶋聡監督
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ⒸSPAIA

7戦通して中盤以降に試合が動く

プロ野球の日本シリーズは第7戦で阪神がオリックスを下して38年ぶりの日本一に輝いた。リーグをぶっちぎりで制した両チームが、がっぷり四つに組んだ見応え十分の関西ダービー。勝敗を分けたポイントはどこにあったのだろうか。

第6戦を終えた時点で両チームの合計スコアが23-23であることが話題になった。それだけ実力が拮抗している証拠でもあるが、イニングごとに見ても特色の似たチームであることが分かる。イニング別の合計得点を集計したのが下の表だ。

2023年日本シリーズのイニング別合計得点


計5点以上入っているのは阪神が5回と8回、オリックスが4回、5回、7回だ。両チームとも先発投手陣がハイレベルなため、立ち上がりはあまり得点できていない。

試合が動くの中盤以降。打順が一巡してからということが分かる。さらに阪神は今季35セーブの岩崎優、オリックスが今季29セーブを挙げて名球会入り条件の日米通算250セーブに到達した平野佳寿というクローザーが君臨しているため9回の得点も少ない。

先発陣は役割果たす

細かく見ていこう。阪神が5回に得点したのは第1戦に4点、第4戦に1点、第7戦に3点の計8点。第1戦は山本由伸、第4戦は山崎福也、第7戦は宮城大弥といずれも先発がつかまった。

ただ、プレッシャーのかかる日本シリーズのマウンドで、先発が中盤に失点することは責められない。実際、山本は第6戦で14三振を奪って1失点完投勝利、宮城は第2戦に6回無失点で勝利投手となっており、先発としての役割を十分に果たしている。

一方のオリックスは第2戦の4回に3点、第3戦の4回に1点、5回に3点、第5戦の4回に1点、第6戦の5回に2点。第2戦は西勇輝、第3戦は伊藤将司、第5戦は大竹耕太郎、第6戦は村上頌樹が先発だった。とはいえ、西勇輝以外は5回を投げ切っており、それぞれ先発として最低限の仕事はしたと言える。

中継ぎ、リリーフ陣は阪神が一枚上

終盤の得点についても見ていこう。阪神が8回に6点を奪ったのは甲子園で行われた第5戦。先発の田嶋大樹に7回まで無得点に封じられていたが、0-2で迎えた8回裏に山崎颯一郎、宇田川優希、阿部翔太のオリックス自慢の中継ぎ陣に6安打を集中して一挙6点。逆転勝ちで王手をかけた。

一方、オリックスは第2戦の7回に3点、第4戦の7回に2点、第5戦に1点と7回に計6点を奪った。ただ、第2戦は8-0で大勝したものの、第4戦、第5戦は敗れている。第3戦と第6戦はオリックスが逆転勝ちしたが、いずれも中盤までに逆転しての勝利だった。阪神の中継ぎ陣を打ち崩しての逆転勝ちではない。

つまり、今回の日本シリーズの勝敗を分けたポイントのひとつは、「中継ぎ陣のわずかな差」だったと言えるのではないか。両チームともリーグ1位の防御率を誇る強力投手陣を擁していたが、先発とリリーフに分けると、シーズンの先発陣防御率2.79、リリーフ陣防御率2.37の阪神に対し、オリックスは先発陣防御率2.61で阪神を上回っている半面、リリーフ陣は防御率2.93と一抹の不安を抱えていた。

オリックス中嶋聡監督にしてみれば、信頼してマウンドに送り出したはずの中継ぎ陣が逆転を許した第5戦は痛恨の1敗だっただろう。第7戦も5回途中で宮城大弥を諦め、2番手として起用した比嘉幹貴が後続を抑えられず、結果的に大きなビハインドを背負うことになった。

もし山下舜平大がいれば……

勝負事に「タラレバ」は禁物だが、今季9勝を挙げてブレイクしながら腰痛で離脱した21歳の剛腕・山下舜平大がいればどうだったか。

第7戦で阪神は先発要員の伊藤将司を3番手で投入し、3回1安打無失点と完璧なリリーフで流れを渡さなかった。ロングリリーフも可能な山下がいれば、第7戦も大量リードを奪われることはなかったかも知れない。

オリックスは頓宮裕真がシーズン終盤に左第4中足骨疲労骨折、杉本裕太郎は左足首を痛めながら強行出場、ケガなのか不明だが山崎颯一郎も第3、4戦でベンチを外れるなど、レギュラーメンバーが万全の状態でなかったことも響いた。

結果論とはいえ、もし全員が万全なら結果は逆になった可能性も十分にある。いずれにせよ、それくらい実力の拮抗した見応えのあるシリーズだったことだけは間違いない。

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