岡田彰布監督18年ぶり歓喜の胴上げ
2005年と同様、堂々と歩いてマウンドに向かった阪神・岡田彰布監督が待ち構えたナインに胴上げされる。18年前にも見た甲子園の満天の星空に舞うこと6度。1982年以来41年ぶりの11連勝で、就任以来「アレ」と表現してきた優勝をついに果たした。
試合は両チーム無得点で迎えた6回裏にようやく動いた。1死一、三塁から大山悠輔が中犠飛で先制すると、続く佐藤輝明がバックスクリーンに20号2ラン。史上7人目となる新人から3年連続20発で、巨人先発の赤星優志をこの回で引きずり下ろした。
投げては先発の才木浩人が7回に岡本和真に39号ソロを浴びたものの、7回3安打1失点と力投。8回は岩貞祐太、石井大智、島本浩也がつないで1点でしのぎ、9回はクローザーの岩崎優がマウンドへ向かった。
入場テーマはドラフト同期入団で、今年7月18日に脳腫瘍のため28歳の若さで亡くなった横田慎太郎さんが現役時代に使用していた、ゆずの「栄光の架橋」。故人への思いを胸に左腕を振った。坂本勇人に一発を浴びても動じることなく、いつも通り淡々と3アウトを取った。
岡田監督は試合後のインタビューで「絶対今日決めようとみんなで言っていた。勝負は9月と言っていたけど、まさか9月にこんなに強くなると思ってなかった。勝ちすぎましたね。選手のおかげです」と余裕のコメント。「今日で“アレ”は封印してみんなで優勝を分かち合いたい」と話し、甲子園のファンを沸かせた。
さらに、日本一について問われると「いい言葉があったら教えてほしい」と“アレ”に代わる新ワードを緊急募集。「引き続き応援よろしくお願いします!」と日本シリーズ制覇に意欲を見せた。
軒並み活躍する近年のドラフト1位
今季の主力選手はほとんどが近年のドラフトで獲得した選手。オリックスからFAで加入した西勇輝やソフトバンクから現役ドラフトで獲得した大竹耕太郎ら移籍組もいるものの、多くは生え抜き選手だ。18年ぶりの優勝は岡田彰布監督の用兵や采配もさることながら、毎年着実に戦力を積み上げてきたドラフト戦略が実を結んだとも言えるだろう。
かつての阪神はドラフトの指名方針について批判されることも少なくなかった。「欲しい選手」ではなく「獲れる選手」を指名しているという声が、他球団も含めた球界関係者の間から漏れ伝わることもあった。
また、ドラフト戦略だけでなく、人気球団ゆえの入団後のプレッシャーやちやほやされる環境の影響か、高卒で入団した選手が大成しないこともたびたび指摘されてきた。
ドラフト1位だけでも、古くは1981年の源五郎丸洋(日田林工)、1984年の嶋田章弘(箕島)、1991年の萩原誠(大阪桐蔭)、1992年の安達智次郎(村野工)、1997年の中谷仁(智弁和歌山)、2005年の鶴直人(近大付)、2006年の野原将志(長崎日大)、2007年の髙濱卓也(横浜)らは目立った成績を残せなかった。
2012年の藤浪晋太郎(大阪桐蔭高)は3年目までは順調に伸びていたものの4年目以降は下降線。高いポテンシャルを惜しむ声は多かったが結局、阪神では復活できないまま現在はメジャーで活躍している。
しかし、最近はドラフト1位で獲得した選手の活躍が目立つ。高校生と大学生・社会人の分離ドラフトから再び一本化された2008年以降の歴代ドラフト1位とその成績は下の通りとなっている。
2008年の蕭一傑(奈良産業大)や2009年の二神一人(法政大)、2011年の伊藤隼太(慶応大)らは期待に応えられなかったが、逆にここ10年はドラフト1位の成功例が多いことが分かるだろう。
2016年1位の大山悠輔(白鴎大)は今季全試合で4番として打線を引っ張り、2018年1位の近本光司(大阪ガス)はリーグトップの26盗塁、2020年1位の佐藤輝明(近畿大)はチームで本塁打、打点の二冠、2022年1位の森下翔太(中央大)は球団の新人右打者では岡田彰布以来43年ぶりの2桁となる10本塁打を放っている。
投手でも2013年1位の岩貞祐太(横浜商科大)は中継ぎとして今季47試合に登板し、1勝23ホールド、2019年1位の西純矢(創志学園高)は5勝を挙げている(いずれも9月13日終了時点)。
安全運転のドラフトではなく、欲しい選手、必要な選手を見極めた上で指名してきたからこそ、戦力は着実に増強されてきたのだ。
高卒より大卒、社会人が圧倒的多数
主力を形成しているのは、1位に限らず大卒や社会人出身の選手が多い。主な投手のドラフト指名年度と今季成績は下の通り。
先発ローテーション投手では、才木浩人(須磨翔風)と西純矢(創志学園)が高卒での入団だが、2年連続最多勝の青柳晃洋(帝京大)、今季ブレイクした村上頌樹(東洋大)、クローザーの岩崎優(国士舘大)は大卒、10勝を挙げている伊藤将司(JR東日本)は社会人出身だ。
野手ではさらにその傾向が強い。主な野手のドラフト指名年度と今季成績は下の通りとなっている。
前述の大山、近本、佐藤、森下だけでなく、梅野隆太郎(福岡大)や坂本誠志郎(明治大)、木浪聖也(ホンダ)、中野拓夢(三菱自動車岡崎)らは大卒か社会人の出身だ。
これまでのドラフトを振り返っても、決して高校生を指名していないわけではないが、結果的に生き残っているのは大卒、社会人出身が多い。
いずれにしても外国人助っ人に頼らず、生え抜き選手がレギュラーを占めるのはチーム強化において好ましい状況だ。この日のような森下、大山、佐藤の和製クリーンアップトリオが固定できるほどの成績を残すようになれば理想的だろう。
今季は18年ぶりだったが、充実の戦力を誇る今なら次の優勝もそう遠くないのではないか。もしかしたら、阪神の黄金時代が始まったのかも知れない。
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