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元阪神・星野おさむ氏も歓喜の優勝「今年のタイガースは岡田彰布二軍監督時代とダブる」

星野おさむ氏,本人提供
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「次世代の主軸を作りながら勝っている」岡田阪神

阪神タイガースが2005年以来18年ぶりのセ・リーグ優勝を果たし、「純粋に嬉しい」と喜ぶOBがいる。1990年代に左の巧打者として活躍した星野おさむ氏(53)だ。

現在は女子硬式野球のヴィーナスリーグに所属する「ZENKO BEAMS(ゼンコービームス)」でヘッドコーチを務めており、警備や交通規制などを事業とする株式会社ゼンコー(埼玉県)の戦略室に勤務しながら、20人の女子選手を指導している。

「現役時代は近鉄、楽天に移籍した後の2003年と2005年に阪神が優勝したんで100%は喜べなかったけど、今は本当に嬉しいですね」。そう話す表情は現役時代と全く変わらない。

最近は阪神時代のチームメイトだった川尻哲郎氏(54)が東京都内で経営する飲食店を訪れてファンと交流する機会があり、虎党の前で今季の優勝を予想していたという。

もちろん根拠はある。岡田彰布監督が二軍監督時代のチーム作りを間近で見ていたからだ。

「当時、関本(賢太郎)と濱ちゃん(濱中治)が入って、岡田監督はファームで良いチームを作っていました。今年の阪神も大山選手と佐藤選手がいるし、良いチームができるだろうなと思ってたんです。中野選手を活かすためにコンバートすることも予想してましたね。次世代の主軸を作りながら勝っているから、当時とすごくダブるんです」

岡田采配をよく知る星野氏は今季の躍進を予想していたのだ。その最大の特長を「洞察力」と証言する。2005年優勝時の「JFK」もそうだが、選手の実力から内面までを見抜き、適材適所に配置する。大胆なコンバートや打順、ポジションの固定などはその典型例だろう。

阪神と楽天で名将・野村克也氏の薫陶を受けた星野氏は「いろいろな指導者を見てきましたが、岡田監督の計算力、洞察力は一番だったと思います」と話した。

17年間のプロ野球選手生活の礎を築いた若虎時代

星野氏は埼玉・福岡高から1988年ドラフト外で阪神に入団。プロ5年目の1993年に一軍初出場すると、1995年には中日戦で古池拓一からプロ初本塁打を放つなど、67試合に出場して打率.339をマークした。

「プロ初ホームランを打った時、これで田舎に帰れるなと思いました。ゼロじゃ帰れないと思ってたから。ナゴヤ球場のライトスタンド、練習でも届かないくらいの場所まで飛びました。今でも感触を覚えてます」と懐かしそうに振り返る。

現役時代の星野おさむ氏

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さらに1997年には自身最多の117試合に出場。内野の全ポジションを守るなどユーティリティプレーヤーとして活躍した。2002年から近鉄に移籍し、楽天に移籍した2005年に現役引退。通算738試合に出場して387安打、24本塁打、155打点、打率.252の成績を残し、引退後は楽天の二軍守備走塁コーチや一軍打撃コーチ補佐などを歴任した。

現役として17年間、コーチとして5年間、プロの世界で生きていく土台を築いたのが阪神での下積み時代だ。入団時に二軍内野守備コーチだった永尾泰憲氏から礼儀やプロとして生きていく上でのイロハを教わったという。

「礼儀もできてなかったから、ほぼ毎日言われました。体力的にも全然ついていけなかったけど、2年目くらいまでを乗り越えられたのは永尾さんのおかげです。父親みたいな存在だったので一軍で初ホームランを打った時も永尾さんには電話しましたね」

星野氏がタテジマを着て活躍していた1990年代は「暗黒時代」と呼ばれた低迷期。1995年から2001年の7年間で最下位が6回、5位が1回と惨憺たる成績だった。今季は18年ぶりの優勝とはいえ、毎年のように優勝を争う状況は隔世の感だろう。

「今の阪神は自信がついて内面的に強くなったり、周りの見る目も変わって、底力がありますね。阪神の伝統力がついたのかなと見ています」と星野氏は分析する。

阪神で学んだことを女子野球に注入

星野氏は楽天のコーチを退いた後、独立リーグの愛媛マンダリンパイレーツや武蔵ヒートベアーズの監督、福島レッドホープスのGM兼総合コーチなどを務め、2021年12月からZENKO BEAMSのヘッドコーチとして女子野球に携わるようになった。

チームの中島梨紗監督は侍ジャパン女子代表監督でもあり、広島県三次市で行われているWBSC女子野球ワールドカップ・グループBには、ZENKO BEAMSから田中露朝と泰美勝の投手2人が選出されている。

読売ジャイアンツ女子チームや埼玉西武ライオンズ・レディースなど11チームが参加するプレミアヴィーナスリーグに所属しており、優勝を目指してトレーニングに励む選手たちを指導する日々だ。

「女子野球は転換期に来ていて、パワーとスピードの時代になりました。少し前までは、捕手がセカンドまで山なりのボールを投げたりしてたけど、女子の野球人口が増えて、予想より倍のスピードくらいでレベル上がっています」と話す。

高校の全国大会決勝が甲子園で開催されるなど、ソフトボールに流れがちだった女子が硬式野球に振れる機会が増えている影響もあるだろう。女子野球のレベルは急激に上がっているという。

また、女性を指導する上での苦労も語る。「個別練習でも偏らないように全員に声をかけたり、同じメニューにしたり、不公平にならないように配慮してます。最近は意外と男性に教えるのと同じ感覚で大丈夫かなと思ってますが、朝の顔色とか、帰りの後ろ姿は絶対に見ています」と長い指導歴で培ってきた細かい心配りを忘れない。

星野氏は今後について「女子選手が25、26歳まで野球をやってからでも社会人として自立できるように、しつけや仕組みを作っていかないといけない。野村監督の影響もあって、現役を終えた後の方が大事だと思っています」と真剣な表情で語る。

阪神時代を礎としたプロ生活で学んできたことを今度は女子野球界に還元する番だ。阪神の一時代を彩った名バイプレーヤーは、今も野球界に貢献している。

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