中野拓夢はセカンドにコンバート
いよいよプロ野球各球団がキャンプインする。岡田彰布監督が就任した阪神は投手陣が充実しており、優勝候補の一角。2005年以来18年ぶりの「アレ」に向け、キャンプでいかに戦力を底上げできるかは極めて重要だ。
得点力アップとともに課題に挙がるのがショートだろう。WBCのメンバーにも選ばれている中野拓夢は昨季、12球団最多の18失策。チームとしても12球団最多タイの86失策を記録したため、岡田監督は打率.276、23盗塁をマークした中野の俊足強打を活かすべく、ショートからセカンドへコンバートさせる方針を示している。
ショートの後釜として期待されるのが小幡竜平だ。延岡学園高から2018年ドラフト2位で入団した22歳。まだ19歳だった2020年に54試合に出場するなど早くから期待されていたが、2021年は43試合、2022年は49試合の出場にとどまり、成長曲線がやや鈍化している。
身長184センチ、体重75キロと線は細いが、強肩と守備範囲の広さへの評価は高い。打力も含めてまだまだ課題は多いものの、何より一軍で経験を積むことが重要だろう。そういう意味では2023年が大きなチャンスであることは間違いない。
吉田義男、平田勝男、鳥谷敬らが受け継いできた名ショートの系譜
阪神には時代を彩る名ショートが名を連ねてきた。「牛若丸」と呼ばれた吉田義男は1950年代から60年代にかけて、巨人・広岡達朗と比較される華麗な守備を誇った。引退後は監督を3度務め、現役時代の背番号23は永久欠番となっている。「ショート」という枠を取っ払っても球団史に残る名手だ。
その後を受け継いだのが藤田平。球団の生え抜き選手として初めて2000安打をマークし、1970年代のショートを守り抜いた。引退後は監督も務めている。
1985年のV戦士・真弓明信も元々はショートだった。1979年に田淵幸一、古沢憲司との2対4のトレードで若菜嘉晴、竹之内雅史、竹田和史とともにクラウンライターから阪神に移籍。1983年には打率.353で首位打者にも輝き、走攻守3拍子揃った好選手だった。
真弓をライトに追いやり、ショートのレギュラーを奪ったのが平田勝男。1981年ドラフト2位で明治大から入団し、1985年の日本一にも貢献するなどゴールデングラブ4回の守備力は折り紙付きだった。
1990年代のショートを守ったのが久慈照嘉。1992年に新人王に輝き、堅守とシュアな打撃で活躍した。
その後、今岡誠、田中秀太、沖原佳典、藤本敦士らを経て、2004年から長らくレギュラーを張ったのが鳥谷敬。堅守と2099安打をマークした打撃、1939試合連続出場を記録した強靭な肉体で替えの効かない存在だった。
チーム失策数は5年連続12球団最多
鳥谷がサードにコンバートされてからは北條史也、糸原健斗、植田海、木浪聖也らが起用され、2021年から中野がほぼ固定されてきた。
しかし、2018年からチーム失策数は5年連続12球団最多(2022年は西武、日本ハムと並んで最多タイ)。守備力アップは積年の課題で、巨人で名ショートとして鳴らした川相昌弘氏を臨時コーチとして招くなど対策を講じてきたが、改善には至っていない。
センターラインの固定は強いチームの条件のひとつでもある。岡田監督は小幡を我慢して起用しながら育てるのだろうか。実績のある木浪らにもチャンスはあるだろう。
いずれにしても守備力強化は喫緊のテーマ。いまだ宙ぶらりんな「ポスト鳥谷」争いに終止符を打つ若虎の出現に期待したい。
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