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巨人V奪還のキーマン・坂本勇人 鬼門の8月をどう乗り越えるかがポイント

2022 6/19 11:00浜田哲男
読売ジャイアンツの坂本勇人,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

復帰試合で猛打賞

交流戦を8勝10敗で終え、リーグ戦では36勝33敗で2位につける巨人。交流戦で圧倒的な強さを見せて優勝した首位のヤクルトとのゲーム差は9に広がった。そんなヤクルトを追随するために欠かせないキーマンが坂本勇人。6月9日の西武戦で復帰すると、いきなり猛打賞をマークしてチームの勝利に貢献。さすがの存在感を見せつけた。

万全を期して復帰するために調整の時間はかかったが、攻守の中心である坂本の復帰は何よりもの起爆剤。交流戦最後のカードとなった楽天戦では、投打で圧倒されて負け越して嫌なムードもあったが、リーグ戦で巻き返していきたい。

高い技術で広角に打ち分け

復帰戦となった6月9日の西武戦では、5番・遊撃で先発出場。第1打席は西武の先発・隅田知一郎の外角の直球を逆らわずにライトへ。次の打席ではチェンジアップを拾い上げてレフトへ運び、その後はセンター前に鋭いライナー性の安打を放つなど3方向に打ち分けた。

今季の打球方向を見ると、右中間が25%と最も多く、次に多いのが中堅の24%、以降は左中間が18%、左翼が17%、右翼が16%と続く。広角にバランスよく打ち分けていることがデータからもわかるが、隅田から打った3本の安打でそれを証明した形だ。

ゾーン別の打率を見ると、一般的に多くの打者が苦手とする内角高めの打率が.400と高く、同様に多くの打者が打てていない真ん中低めの打率も.300と高い確率で打ち返している。真ん中高めを.125と苦手としているが、内角高めや真ん中低めなど、投手が空振りを取りたいコースに投げた球を弾き返しているのはさすがだ。

8月をどう乗り越えるかがポイント

これからの季節、気温が上がるため野手も投手も開幕からの疲労がたまってくる時期となる。直近3年間の坂本の8月の打率を見ると、2019年が打率が.260、2020年が.263、2021年が.259と、8月に不振に陥る傾向が見られる。

その一方で9月の打率を見ると、2019年が361、2020年が.337、2021年が.352と大幅に上昇している。シーズンの最終段階で一気に帳尻を合わせる傾向があるが、あまりよくない8月を状態よく乗り越えることができれば、それに越したことはない。

今季は右膝内側側副靱帯損傷によって約40日間も登録抹消されており、故障箇所の状態が気になるところではあるが、体力的には温存できたという考え方もできる。8月を含む夏場に坂本がある程度打ってくれれば、チームにとって良い意味で大きく影響するだろう。

5番坂本がチャンスで打てるかがカギ

坂本ほどの経験と技術があれば、2番や3番、現在任されている5番でもどこでも機能するだろうし、何の心配もないだろう。現在は1番の丸佳浩と2番のアダム・ウォーカーがともに打撃好調であることも関与してか、4番岡本和真の後ろを任されているが、両選手の状態次第では開幕以降しばらく任されていた2番など、打順が上がる可能性もある。

得点圏打率を見ると、2019年が.325、2020年が.337とハイアベレージをマークしていたものの、2021年は.269、今季は.286となっている。このあたりがどう出るかだが、坂本が5番にいることで岡本とは勝負せざるをえなくなるなど、メリットはいろいろある。走者のいるシチュエーションで坂本がどれだけ打てるかが、勝敗の行方を大きく左右することになるだろう。

※成績は2022年6月18日終了時点

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