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楽天・石井一久監督は歴代2位の奪三振率 GMとしては意外⁉な才能で大補強

2022 5/22 11:00広尾晃
東北楽天ゴールデンイーグルスGM兼監督の石井一久,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

現役時代は歴代屈指の左腕として活躍

東北楽天ゴールデンイーグルスのGM兼監督の石井一久は、現役時代は現代野球屈指の左腕投手だった。

石井の剛腕ぶりは様々な数字に表れている。2000イニング以上投げた投手は、今年5月7日に達成した西武・内海哲也まで92人いるが、その奪三振率(K/9=9イニング当たりの奪三振数)10傑はこうなっている。

2000投球回以上投手の奪三振率(K9)10傑,ⒸSPAIA


この記録は1984年に引退した江夏豊の8.41がアンタッチャブルと思われてきた。以後、何人もの投手が挑んだが「K/9が8以上」という投手は永年出てこなかった。そんな江夏の記録をほぼ30年ぶりに塗り替えた石井。5年後に杉内俊哉が更新したものの、平成以降では屈指のパワーピッチャーだといえよう。

近年、投手の球速が上がるとともに三振を取ることができる変化球が進化したことで、奪三振率は上昇する傾向にあるが、石井はその中でも傑出した存在だった。ちなみにNPBのK/9上位5人中4人は左腕投手だ。

シーズン奪三振率(K/9)10傑 規定投球回数以上,ⒸSPAIA


シーズン単位でも石井は奪三振率で傑出した成績を残している。シーズン記録でも江夏の記録がアンタッチャブルだった時代が長く、1968年の401奪三振はNPB記録、奪三振率10.97も圧倒的数字だった。

この奪三振率を1990年に野茂英雄が22年ぶりに更新。さらに1998年に石井が11.06まで上げた。この数字から石井が屈指の「ドクターK」だったことが分かる。一方で1998年の成績からは与四球もリーグ最多の105、暴投も20で最多と「三振か四球」の荒れ球投手だったことも分かり、野茂と似ている点がある。

この記録を2019年に更新した千賀滉大も与四球が多かった。そして今季、佐々木朗希が5月13日時点で55イニングで87奪三振、K/9は14.24という破天荒な数字を記録しているため、今後どうなるのか楽しみだ。

MLB日本人左腕投手最多の通算39勝

1973年生まれの石井だが、この年はイチローや松中信彦、小笠原道大、三浦大輔など多くの個性的な選手も生まれており、当たり年といえる。東京学館浦安高からドラフト1位でヤクルトに入団した石井は最速156㎞/hの速球に加え、横変化の大きなスライダー、さらに左投手には珍しいフォークで三振の山を築いた。

2002年にはポスティングシステムでMLB、ロサンゼルス・ドジャースに挑戦。イチローから2年遅れだった。最初にNPBからMLBに挑戦した村上雅則は左腕投手だったが、それ以降右投手しか挑戦してこなかった。それがこの2002年に野村貴仁、石井と2人のサウスポーが海を渡った。

MLBで登板した左投手の通算成績は下表のようになる。なお、順位は全投手(右投手も含めた)50人の勝利数順だ。

MLBで投げた日本人左腕投手,ⒸSPAIA


石井はドジャースに3年、メッツに1年在籍し、規定投球回数以上は2004年だけだったが、二けた勝利を2回記録。強力なドジャース先発陣の一翼を担った。ドジャースの3年間は野茂と同僚で、ともに36勝ずつを挙げた。石井のMLB通算39勝は日本人左腕投手では最多勝だ。

2005年オフにメッツをFAになると、翌年ヤクルトに復帰。2年連続で規定投球回数に達して合計20勝を挙げるが、2007年オフにFA宣言をして西武に移籍。西武では6年在籍し、2013年に40歳で引退した。所属したほぼすべてのチームでローテーションを維持し、先発投手として結果を出してきた石井は、NPBで通算143勝103敗、防御率3.63、MLBとの合計では182勝を挙げている。

GM兼監督として優れたマネジメント能力を発揮

引退後は吉本興業に所属し解説者の傍らタレント的な活動もしていたが、2018年9月に楽天のGMに就任。指導者や球団職員の経験が全くない石井のGM就任は世間を驚かせたが、未知数とされた手腕も次第に優れたマネジメント能力を有していることが明らかになった。特にストーブリーグでは、他のNPB球団の追随を許さない活発な動きを見せている。

石井GMのもとでのドラフト入団選手、新外国人選手を除いた楽天の選手の異動を見てみよう。
【2019年】
●シーズン前
浅村栄斗をFAで西武から獲得。前ヤクルト由規と育成契約、巨人の橋本到を金銭トレードで獲得、広島の福井優也を菊池保則とのトレードで獲得。
●7月:広島の下水流昂を三好匠とのトレードで獲得、巨人の和田恋を古川侑利との交換トレードで獲得。

【2020年】
●シーズン前:ロッテに美馬学がFA移籍、人的補償で酒居知史を獲得。ロッテから鈴木大地をFA移籍で獲得、人的補償で小野郁が移籍。同じくロッテから涌井秀章を金銭トレードで獲得。ロッテには西巻賢二、ハーマンも移籍した。前パドレスの牧田和久を獲得。前オリックスのロメロを獲得。
●6月:巨人の池田駿をウィーラーとのトレードで獲得。巨人の髙田萌生を高梨雄平とのトレードで獲得。

【2021年】
石井GMが監督兼任となる。
●シーズン前:前ヤンキースの田中将大が楽天復帰、日本ハムの横尾俊建を池田隆英とのトレードで獲得。
●7月:巨人から炭谷銀仁朗を金銭トレードで獲得。
【2022年】
前ソフトバンクの川島慶三と契約、同じく釜元豪と育成契約。前日本ハムの西川遥輝と契約。

GM就任から4シーズン、現在の楽天の主力のかなりの部分が、石井GMになってから獲得した選手であることが分かる。アメリカ在籍中にMLB流のチームの補強方法を学んだのだろう。

石井一久は現役時代に経験したこと、学んだことを無駄にすることなく、球団のマネジメントに活かしている。今季の楽天は久々に優勝のチャンスだ。手腕に期待したい。

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