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ヤクルト宮本丈、吉田大成、松本友が一軍定着へ新オプション 95年生まれトリオの熾烈な争いに注目

2022 3/3 11:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズの吉田大成/宮本丈/松本友,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

レギュラーを脅かす若手の突き上げはなし

球界を見渡すと多くのチームで新人を含めた若手が躍動している。セ・リーグでは広島の大砲候補・末包昇大や巨人の中山礼都、DeNAの森敬斗、中日の石川昂弥らが対外試合で結果を残し、レギュラーの座を脅かす存在にのし上がってきている。

一方で春季キャンプやオープン戦の序盤を見る限り、ヤクルトではびっくりするような若手の躍進はない。新人で唯一、春季キャンプ一軍スタートだった丸山和郁は、練習試合で負傷してしまった。すでにゲーム復帰も果たしているが、まだ万全な状態ではないだろう。

高卒2年目の捕手・内山壮真は対外試合5試合連続安打と気を吐くも、今年から背番号「27」を背負う中村悠平が正捕手に君臨している。今シーズンも二軍で実戦経験を積んでいくことが濃厚だ。その他にも武岡龍世と長岡秀樹らアピールしている若手はいるが、突き抜けてはおらず、正直レギュラーを脅かすほどではない。

そのなかで注目したいのが、若手から中堅と呼ばれる年齢になった松本友、吉田大成、宮本丈の3人だ。松本(2月生)と吉田(3月生)は早生まれのため宮本(4月生)よりも一学年上になるが、3人は奇しくも同じ1995年生まれの27歳。そろそろ一軍に定着したい年齢でもある。

この3人には共通点が多い。内・外野を守れるユーティリティープレーヤーであり右投げ左打ち。内野手としてプロ入りし、外野も守るようになった。守備位置に多少の違いはあれど、役割は大きく変わらない。つまりライバル関係にもなるわけだ。

吉田は外野、宮本は一塁、松本は中堅のオプション

吉田は昨シーズン遊撃のバックアップがメインだったが、一塁、二塁でも出場。二軍では三塁も守っており、内野はどこでもできる。また選球眼がよくBB%(打席数に対する四球の割合)は21.2%と50打席以上の打者では12球団トップだった。

その吉田がこの春季キャンプでは外野でも練習を行っていた。昨シーズンも二軍では外野での出場はあったが、一軍ではプロ入りしてから1試合もない。そのなかで練習試合とオープン戦では左翼と中堅で出場。内野だけでなく外野も守れるオプションがつきつつある。

昨シーズン代打での活躍が目立った宮本は、一塁での起用が増えている。一軍での一塁起用は2020年の1試合だけであり、ほぼ未経験のポジション。春季キャンプ序盤ではオスナが合流していなかったこともあるが、シートノックで外野に入らず最初から一塁に入っていたこともあった。

昨シーズンの宮本は代打で46試合に出場したが、その後に守備についたのは5試合だけだった。二塁、三塁そして両翼に加えて一塁も守れるようになれば、代打後にそのまま守備につくケースも増えそうだ。

そして昨シーズン打率.353(34打数12安打)とバットで結果を残した松本だ。一軍では左翼と一塁しか守ったことがなかったが、2月20日のロッテ戦(練習試合)では中堅(二軍では経験あり)の守備についた。また、2月27日の阪神戦(オープン戦)では代打安打を放ち、打撃面でも健在ぶりをアピールしている。

二軍には昨季首位打者の太田賢吾も控える

吉田は左翼と中堅、宮本は一塁、松本は中堅と3人がこの春にプラスアルファを得ようとしている。3人はレギュラーが確約されている立場ではない。もっと言えば一軍が確約されているわけでもない。もちろんレギュラーを目指すのが大前提だ。だが、たとえ控えに回ったとしても、色々な役割を高いレベルでできるのであれば、一軍に定着する可能性は高くなるだろう。

ただ、ライバルはその他にもいる。新型コロナウイルスの影響で出遅れた太田賢吾も年齢こそ2歳下だが、右投げ左打ちで内外野のユーテリティー。過去3年の間に一軍で内外野全てのポジションで守備についており、昨シーズンは二軍で首位打者を獲得した。太田も3人と役割はかぶってくる。

今シーズンは延長12回制に戻ることがほぼ決定的な状況だ。一方でベンチ入りの人数は昨シーズンと同じ26人で増枠はない。そうなると中継ぎ投手だけでなく、控え野手の起用法も重要となってくる。代打の切りどころ、守備固めや代走のタイミングも、9回打ち切りよりはるかにむずかしい。もちろん試合中のアクシデントによる不測の事態も頭に入れておかねばならない。

吉田、宮本、松本の3人に太田を加えた4人のユーティリティープレーヤーは重宝されることだろう。とはいえ、3人も4人も右投げ左打ちのユーティリティープレーヤーをベンチに入れておくことは現実的ではない。4人全員が控えならばベンチに入れるのは恐らく2人。昨シーズンも多少の役割の違いはあれど、3人以上が同時に一軍登録されていたことはなかった。

開幕まであと1ヶ月を切った。現時点では若手の突き上げがなかったと言わざるを得ない。それでもベンチに欠かせないユーティリティープレーヤーたちが己を高め、選手層の底上げが進んだ。延長12回制のシーズンへ向けて高津臣吾監督はどのように一軍メンバーを決めていくのだろうか。連続日本一を目指すヤクルトの一軍ベンチ入りをかけた争いが始まる。

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