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巨人・丸佳浩が悔やみ、飛躍のきっかけとなった「3糸」の秘密

2022 2/19 06:00櫻井克也
巨人の丸佳浩,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

広島時代の2014年、初の3割マークも…

「3糸」の差と言われて想像が付くだろうか。あるかないか、分からないほどの差。だが、それが人生を左右することだってある。今や日本球界を代表する打者となった巨人・丸佳浩の一つの分岐点とも言える「3糸」について振り返ってみたい。

話は2014年までさかのぼる。丸は入団7年目のこの年から、背番号を「63」から「9」に変更。かつて三村敏之、緒方孝市らが背負った番号で期待通り、開幕から安定感ある打撃力を見せつけた。

自身初めてのシーズン全試合出場を果たし、打率も初めて3割を超える.310をマーク。19本塁打、67打点と打撃3部門で高いレベルの数字を残し、100四球、106得点はリーグ最多だった。

2年連続のクライマックス・シリーズ(CS)進出に貢献し、翌年以降のさらなる飛躍を予感させるシーズンとなったことは間違いない。だが、好成績にも満足感はかけらもなかった。その主要因が「3糸」だ。

バレンティンに譲った最高出塁率

前年に盗塁王のタイトルを獲得するも、この年は無冠。最も首位に近付いた部門は最高出塁率だった。丸の出塁率は.419254、首位のバレンティン(ヤクルト)は.419282。厘、毛どころではない。1万分の1を表す単位「糸」の差で決着は付いた。

シーズンオフ、丸は真剣な顔で振り返った。

「あの時、何かをしていれば。逆に何かをしていなければ、逆転していたかも知れない数字ですから」

あと1安打、もっと言えば、四球一つを選んでいれば逆転していた数字。記録員が失策ではなく、安打としていれば。主審のストライク判定がボールだったら。このレベルの数字であれば、自らでコントロールできるものではないだろう。それでも丸は要因を自らに求めた。

個人タイトルが欲しかったからではない。コントロールし得ない出来事が命運を分けることを思い知った。だからこそ、猛省した。

個人タイトルだから、まだいい。チームの勝敗に関わること、選手生命に関わるようなことだって、不確定要素によって支配される。ならば後悔を残さないよう、今できることを全てやるだけ。ここを分岐点に私生活も含め、一切の妥協を捨てた。

麻雀をやめ、外食を減らして野球漬けに

毎オフ、相手の心理を読む目的で楽しんでいた麻雀は完全にやめた。元々、遠征先での試合後も出歩くタイプではなかったが、外食の回数も激減させた。楽しみは家族との時間。それに、マンガとオンラインゲームくらい。野球中心の生活を徹底させた。

「世の中にたくさん仕事がある中で、好きな野球をやって、給料をもらえている。いい加減にやっていたら、皆さんに申し訳ないと思うんですよ」

翌年こそ打率.249と数字を落としたが、16年からは3年連続で20本塁打、90打点以上を記録し、チームの3連覇に貢献。3割以上を記録した17、18年は2年連続でMVPを受賞した。セ・リーグでの2年連続受賞は藤田元司、王貞治、ラミレス以来、4人目で巨人以外の選手では初の快挙だった。

巨人にFA移籍しても、丸は順当に実力を発揮し続けてきた。昨年は移籍後初めて、不調による出場選手登録抹消を経験し、118試合の出場で打率.265と低迷したが、妥協を捨てた男に心配はいらないと断言する。春季キャンプも順調に過ごしている。巨人打線の屋台骨を背負う男の逆襲に注目だ。

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