「スポーツ × AI × データ解析でスポーツの観方を変える」

【数字で見るチーム力の変化:広島編】鈴木、坂倉が奮闘もチームの得点力は上がらず

2021 12/8 11:00SPAIA編集部
広島の佐々岡監督,ⒸSPAIA
このエントリーをはてなブックマークに追加

ⒸSPAIA

鈴木、坂倉は成績向上もその他の選手は苦しむ

2021年の広島は昨シーズンの5位からひとつ順位を上げ、4位でシーズンを終えた。10月以降には猛追を見せ、一時はクライマックス・シリーズへの出場権を手にできる3位まであと一歩に迫るも及ばなかった。

野手陣では鈴木誠也がチームを牽引し、小園海斗、坂倉将吾、林晃汰といった若い選手も台頭した。一方の投手陣は、大瀬良大地、森下暢仁、九里亜蓮と3人が規定投球回に到達。抑えには新人の栗林良吏が君臨し37セーブをマークした。

このように個々の成績で見ると充実していたが、チームスタッツはどのように変化したのだろうか。主な打撃スタッツと投手スタッツを2020年シーズンと比較してみたい。

広島打撃スタッツ比較,ⒸSPAIA


打撃スタッツを見ると、打率が若干ではあるが上昇した。しかし出塁率、長打率ともに減少しておりOPSは.019も下がった。結果的に得点も1試合あたり0.46点減少している。

個人で見ると、鈴木がOPS.953から1.072、坂倉もOPS.758から.857と首位打者を争ったふたりは成績を上げた。その他の規定打席到達者のOPSを見ると、菊池涼介は.757から.762とほぼ横ばい。西川龍馬は昨シーズンの.794からは下がったものの、それでもOPS.733と一定の数字を残した。

一方で林(376打席/.693)、野間峻祥(270打席/.663)と、規定打席には達しなかったものの多くの打席を与えられた若手が、ともにOPSは.700を下回ってしまった。その他の主力では、會澤翼(204打席)が.774から.686、松山竜平(194打席)が.722から.679と、昨年を下回るOPSに終わっている。

また新外国人選手も苦しんだ。2020年シーズンはピレラが打率.266(316打数84安打)、11本塁打、OPS.723の成績を残していた。今シーズンは鈴木とともに右の大砲として期待されたクロンが加入するも、打率.231(130打数30安打)、6本塁打、OPS.701と物足りない数字に終わった。

鈴木と坂倉のふたりは数字を上げたもののクロンが不発。またその他の主力選手の成績が下がった背景もあり、チーム全体としては得点力が上がらなかった。

大瀬良、九里、森下の3人でQS率は77.8%

投手スタッツを見ると、勝率は昨シーズンと同じく.481で失点数と防御率はともに改善された。先発投手が試合を作ったとされるQS(6回以上自責点3以下)の割合は6.3%も改善され、セ・リーグトップだった。大瀬良、九里、森下の3人の力が大きく、3人合計で72先発して56QSを記録、QS%は77.8%だった。

広島投手スタッツ比較,ⒸSPAIA


その他では、高卒2年目の玉村昇悟も17先発で11QSとQS%は64.7%、床田寛樹が15先発で9QSを記録し60%とまずまずの数字を残している。一方で、その他の投手たちの合計は39先発で7QSとなり17.9%と苦しんだ。ローテーションの谷間にあたる投手という部分はあるが、その他の投手たちも試合を作れるようになると格段に戦いやすくなるだろう。

奪三振、与四球を見ると、K%(奪三振/打席数)、BB%(与四球/打席数)ともに昨シーズンと大きな違いはなかった。そのため、K/BBもほぼ横ばいとなっている。1試合あたりの被本塁打数を表すHR/9は、若干だが改善した。そのため、FIP(投手の責任である被本塁打、与四死球数、奪三振数のみで投手の能力を評価した指標)は3.92から3.78へとやや良化している。

失点が減ったのは被本塁打が減ったことだけでなく、被打率そのものが.262から.257へと改善されたこと、そして守備面の向上もある。DER(グラウンド上に飛んできた打球のうち、野手がアウトにした打球の割合を表す指標)を見ると、.675から.684へとわずかではあるが改善した。

このように各項目少しずつではあるが改善したことが、失点数の減少につながったといえそうだ。ただ、防御率と失点が改善したとはいえ、それでもリーグ5位。先発ローテーションの軸は揃っているだけに、その他の投手たちの奮起が求められる。

【関連記事】
打撃の陰で目立たないが鈴木誠也は守備も凄い!紅林弘太郎は大橋穣を彷彿
野球殿堂入り候補の黒田博樹がメジャーで苦心した「スパイクの歯」
【セ・リーグ三塁打ランキング】ヤクルト塩見泰隆がトップ、2位は広島・小園海斗