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6年ぶりリーグ優勝の高津ヤクルト データから見えた2015年からの変化

2021 11/7 11:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズ監督の高津臣吾,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

2桁本塁打が2人から5人へ増加

ヤクルトは2015年以来6年ぶりにセ・リーグ制覇を成し遂げた。2位の阪神と最終的にゲーム差はなく、混戦を勝ち抜いての優勝は2位・巨人とのゲーム差が1.5だった前回を彷彿させる。

2年連続最下位からの戴冠は前回と同じ。また、強力打線と信頼できる勝ちパターンの組み合わせも似通っているが、各チームスタッツも同様に似通っていたのだろうか。投打に分けて振り返ってみたい。

主な打撃項目のチームスタッツは下記のようになった。

主な打撃項目のチームスタッツ,ⒸSPAIA


前回から得点は51増加、1試合平均で計算すると0.36点(4.01点→4.37点)のアップとなった。しかし、チーム打率及び安打数は若干ではあるが下がっている。一方で本塁打数は107本から142本に増え1.33倍となった。

本塁打の内訳を見ると、前回は2桁本塁打が山田哲人(38本)と畠山和洋(26本)の2人だけ。この2人に続くのが8本塁打を放った雄平と川端慎吾だった。強力打線ではあったが、相手投手からすると一発の恐怖は少なかっただろう。

一方、今年は本塁打王に輝いた村上宗隆(39本)をはじめ、山田哲人(34本)、サンタナ(19本)、塩見泰隆(14本)、オスナ(13本)と5人が2桁本塁打を記録。その結果、長打率も.020アップしている。また、安打数が減り打率が下がったにも関わらず、出塁率は.011アップした。これは与四球の大幅増加(433四球→513四球)が要因だ。

前回と比べて打率は下がったが、出塁率と長打率が上がったため、チームの得点数は大きく伸びている。昨今、野手の評価をする際に打率だけでなく、OPS(出塁率+長打率)も重要視されるようになった。打率よりもOPSのほうが得点との相関があるということが理由だが、それが結果となって表れている。

セ・リーグ新の149ホールド

投手のスタッツは下記の通り。勝利数は前回のほうが3つ多いものの、引き分けの関係で勝率は今回が大きく上回った。勝率.584は野村克也監督が退任し、若松勉監督体制となった1999年以降でもっとも高い。つまり、野村ID野球が終わって以降、最高の勝率を記録したことになる。

投手のスタッツ,ⒸSPAIA


QS(6回以上自責点3以下)を記録した回数は前回のほうが多かった。前回は小川泰弘(168回/11勝)と石川雅規(146.2回/13勝)のふたりが規定投球回に到達。2桁勝利も達成したが、今年はいずれも達成者は不在だった。

今年は1年間、先発ローテーションの柱となった投手はいなかったが、規定投球回の半分(72回)以上を投げた投手は7人で前回の5人より2人増えた。ほぼ中10日以上の間隔をとった奥川恭伸をはじめ、ゆとりのあるローテーション管理を行い、シーズンを乗り切ったといえる。

ホールド数は大幅に増加した。NPB記録となる50ホールドを記録した清水昇を筆頭に、チーム合計で149ホールド。これはNPB記録(150H)とはならなかったものの、セ・リーグ記録を更新。前回もロマン、オンドルセク、バーネット、そして秋吉亮の4人は強力だったが、今年はそれ以上のフル回転を見せていたようだ。

各指標を見ると奪三振(935→1129)は増え、与四球(429→363)が減った。これはK%、BB%にも結果として表れている。またBB%が10%を超える投手が8人から5人に減り、K%が20%を超える投手は6人から15人へと大幅に増加した。ひとりの突出した投手の出現ではなく、投手陣全体としての改善だったことがよくわかる。

ただ、防御率は悪化しており、そのまま結果(自責点の減少)には結びついていない。これは被本塁打の多さが原因だろう。1試合あたりの被本塁打数は0.79本から1.03本へ悪化しており、与四球を減らすためにゾーンで勝負した結果、被本塁打が増えたと読み取れる。被本塁打数を減らしていくことが今後の課題となりそうだ。

2015年と2021年。チームの特徴は似ているが、指標を見ると変化があった。この先、どのような進化を遂げていくのだろうか。高津ヤクルトの未来が楽しみだ。

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