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関西学院大・黒原拓未、夏の甲子園で敗れてから急成長した即戦力左腕が待つ「運命の日」

2021 10/7 11:00沢井史
関西学院大の黒原拓未,ⒸSPAIA(撮影・沢井史)
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ⒸSPAIA(撮影・沢井史)

最後の夏は大阪桐蔭・徳山壮磨と投げ合って惜敗

関西の大学生投手で上位候補の一人とされているのが関西学院大の黒原拓未だ。

今秋のドラフト会議では補強ポイントとして即戦力左腕を挙げる球団が多く、大学生投手では隅田知一郎(西日本工業大)や佐藤隼輔(筑波大)らも1位候補として注目されている。

黒原は智弁和歌山高出身で、1年秋に公式戦初登板を果たし、2年秋からエースを務めた。当時から140キロ前後の速球を武器にした本格派左腕としても数えられていたが、目立った成績は残せなかった。

3年夏の和歌山大会は左ひじに違和感があったため、3試合で11イニングのみの登板となり、出場した夏の甲子園でも初戦の興南戦は体調不良で登板を回避。2回戦では大阪桐蔭のエースで今秋のドラフト候補に挙がる徳山壮磨(早稲田大)と投げ合うも、6回途中に1失点でマウンドを降り、チームは1-2で敗れた。

冬場に球速8キロアップし、プロ目標に

だが、黒原が本気を出すようになったのはこの後だ。甲子園から帰郷した翌日。「高校野球が終わって、夏休みでもどこかに遊びに行こうとか特に思えなくて。新チームが始まっていた学校に行って、自分も一緒に練習をしていました」

後輩を相手に打撃投手も務めた。自主練習も怠ることなく汗を流し続け、ブルペンでもピッチングを行っていると、冬場にストレートが現役時から8キロアップの144キロまで伸びた。当時、黒原の躍動を気にかけていた野球関係者がいることも伝え聞いており「大学で頑張ってプロに行く」という明確な目標もできた。

関学大では1年春からリーグ戦に登板するも、「自分が何かを残してきたという自負はないです」と苦笑する。下級生時はチームとしてもBクラスに低迷することが多く、ここ一番の場面で痛打されるシーンが目立った。

昨秋のドラフト会議前には佐藤輝明の凄さを見せる素材映像として佐藤がホームランを打つシーンが度々放送されたが、マウンドには黒原がいる映像もあった。だが、黒原はむしろその経験を「光栄です」と振り返りつつ、ここまでの糧としてきた。

「プロに行けば佐藤さんのようなすごいバッターがたくさんいます。佐藤さんはマウンドから見てもすごく大きく見えて、威圧感がありました。打たれた記憶しかありませんが、自分にとっては良い経験になりました」

今春リーグでタイトル総なめ

今春のリーグ戦では5勝を挙げ、防御率は0.88でMVP、最優秀投手、ベストナインとタイトルを総なめし、14季ぶり15度目の関西学生リーグ優勝の立役者となった。

自己最速の151キロをマークしたストレートとカットボール、チェンジアップを織り交ぜたピッチングはプロの世界でも十分に通用する。だが、直後の6月に行われた大学選手権では準々決勝の慶大戦で思うようなピッチングができず、悔いしか残らなかったという。

「(5回5安打4失点降板に)自分の調子を(本番に)ベストの状態に持ってこられなかったことが悔しかったですね。そこも含めて実力不足です」

秋こそは日本一を目標に再出発を誓ったが、今秋はコンディション不足のため10月3日の関大戦で初登板。2回を2安打無失点に抑え、復調ぶりを見せた。

148キロのストレートだけでなく、キレのあるカットボールなども駆使し、上々の内容。春に見せたゲームメイク能力の高さで、貴重な即戦力左腕の有力候補として高い評価は不変だ。

運命の10月11日は黒原にとってどんな日になるのか。その時を楽しみに待ちたい。

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