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阪神・佐藤輝明が本塁打を量産できる4つの技術的要因

2021 3/23 06:00中村タカシ
阪神・佐藤輝明ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

割れによる「捻れ」ができている

プロ野球オープン戦が全日程を終了した。大きな話題となったのが阪神のドラフト1位・佐藤輝明。ルーキーながら12球団最多の6本塁打を放ち、長嶋茂雄のオープン戦新人記録にあと1本と迫る大活躍だった。

佐藤の飛距離を生む土台となっているのが「捻れ(ねじれ)」だ。上半身と下半身の捻れが大きいほど反動も大きくなり、強いスイングが生まれる。佐藤は前足(右足)のステップ時に体幹の捻れを作り、前足着地と同時に捻れによって溜めたパワーを一気に爆発させている。長距離打者特有の「捻れの深さ」が飛距離を出すことに繋がっているのである。

捻れを深く作れている要因は「左脇を開けている」ところにある。佐藤の場合、構えの段階から左脇を開けており、捻れとともにそのままトップも高い位置へ動く。脇を最初から開けておくことによって、捻れを深くまで入れることができ、トップも自然と上がるのだ。

佐藤がホームランを連発できるパワーは「捻れ」によって生まれている。

右肩の開きを抑えられている

佐藤のバッティングのすごいところは「右肩」がまったく開かないところだ。オープン戦で放った6本のホームランのうち4本は逆方向。外角の球を軽々ホームランにできるのは、肩の開きが抑えられているからである。

右肩の開きを抑えることのメリットとして、外角の球も引っ張りと同様の力を伝えられることだ。佐藤の場合は先ほども触れた「捻れ」が深いのも相まって、右肩がギリギリまで開かない。

前足の着地後、前足側の腰は打つ体勢に入るので開いていくが、佐藤の右肩は開かずに待てている。腰は打つ体勢に入っているので、速球がきてもスムーズなスイングができ、緩い球がきても右肩が開いていないので対応ができる。緩急の両方に対応できる恐ろしいフォームなのだ。

また、肩が開く要因としてよく言われるのが「力み」であるが、佐藤の場合は変な力みがなく、右肩が開くのを抑えられている。ルーキーでありながら、打席の中で冷静さを保てているメンタルにも脱帽だ。

前足が崩れず壁ができている

溜めたパワーを最大限ボールに伝えるために重要なのが「前足の壁」である。前足の壁がちょっとでも崩されるとパワーは逃げ、ボールに十分な力を伝えられない。しかし、佐藤はどんな球がきても前足が崩されることがないため、パワーを最大限ボールにぶつけることができている。

前足の壁が崩れなければ、緩急によってタイミングを外されてもスイングの強さをキープできるため、体勢が崩されても打球は飛んでいく。さらに、佐藤の場合は広角に打てるため、打率も高くなりやすい。

投手からすると、これほど恐ろしいと感じるバッターはいないだろう。

左手の押し込みが強い

右投左打の選手は基本右利きが多いため、左手の押し込みが左利きの選手に比べ弱いと言われている。しかし、佐藤は右投左打にも関わらず、左手の押し込みが強いため逆方向にも飛距離が出る。

ソフトバンクの柳田悠希も右投左打で逆方向によくホームランを放つが、柳田も押し手が強い印象だ。多くの外国人選手もポイントが近く、インパクト時は押手で強く押し込むイメージだが、佐藤も外国人選手のバッティングの形に近い。

また、逆方向に打球を飛ばす選手の特徴として「打つポイントが捕手寄り」である選手が多い。佐藤もポイントが近い方で、ギリギリまでボールを引きつけるタイプ。近いポイントでの打ち方は、スイングスピードが速くなければ難しい打ち方である。しかし、佐藤の場合は背筋と押手が強いため、手元まで呼び込んで打つことができる。

佐藤はプロ入り前から長距離砲として大きく注目されていたが、プロ入り1年目のルーキーとは思えないくらい貫禄がある。2021年シーズンの新人王有力候補として注目していきたい。

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