今後も攻撃のキーマン
現在両リーグダントツの288得点を挙げているロッテ。強力打線の絶対的リードオフマンとして、リーグ3位の打率.310をマークするなど、開幕から好成績をキープしているのが荻野貴司だ。今年10月に36歳になるベテランだが、走攻守で元気な姿を見せている。
出塁すればプレッシャーをかけられる走力はもとより、右方向へも左方向へも鋭い当たりを飛ばし、どんな球種でも粘り強く食らいつく、相手バッテリーに「嫌がられる」打者。さらに、ここぞという場面での本塁打も印象的だ。
佐々木朗希の初登板となった5月16日の西武戦では、先頭打者初球本塁打。佐々木の2回目の登板となった5月27日の阪神戦でも、同様に先頭打者初球本塁打を放ち強力に援護した。放った相手は初対戦のラウル・アルカンタラ。150kmの直球だったが、初めて見る球筋でも見事にとらえ、左翼席に放り込んだ。
昨季は7月下旬に右足の負傷で戦線離脱し、53試合の出場にとどまったが、打率.291、出塁率.370、19盗塁と確かな存在感を示した。今季はここまでコンディションをキープし、期待通りのパフォーマンスを披露しており、今後も攻撃のキーマンであることは間違いない。
最もしぶといリードオフマン
荻野の打撃で特筆すべき点は、三振の少なさだ。セイバーメトリクスの指標PA/K(打席数÷三振数)がリーグ5位の8.42。この数値は高いほど三振しにくく、しぶとい打者であることを示す。
パ・リーグの他チームの主な一番打者と比較しても荻野がトップ。6月は打率.464と絶好調のオリックス・福田周平は際どい球を何球もカットするなど粘りに定評があるが、その福田をも上回っている。
荻野が粘って出塁すると、相手バッテリーは足を警戒して直球主体の配球となる。すると、主に2番を打っているレオネス・マーティンは球種を絞って狙い打ちをしやすくなり、長打で一気に得点もしくはチャンスが拡大する。荻野の良さをマーティンが活かし、マーティンの良さを荻野が活かすという関係性が強力打線の一番の得点源だ。
タイプの異なる球種で高打率
荻野は苦手な球種が少ない。スプリットやフォーク、チェンジアップなど落ちる球の打率が一様に低かったり、直球やスライダーなど特定の球種の打率が特に悪かったりと、大概は苦手な球種があるものだ。しかし、荻野は対直球の打率.325、スライダー.326、スプリット.500、シンカー.1.000、ツーシーム.333と、タイプの異なる球種で高打率を残している。
カーブは.077と苦手としているが、カーブを投げる投手は比較的少ない上に投球割合が多い球ではないため、大きな影響はないだろう。
このように、様々な観点から理想的なリードオフマンと言える荻野だが、チーム内に荻野の後釜と呼べるプレーヤーがいない。これまでのシーズンでも、荻野が戦線を離脱した際に戦力は大幅にダウン。その穴を埋められずにチームの順位が下降するという事態は幾度となくあった。ポスト荻野の育成は喫緊の課題だ。
昨季、国内FA権を保有していた荻野は「ロッテで優勝したい思いが強い」とチームへの愛着を口にし、残留を表明した。ロッテが優勝争いをするためには、荻野がベストナインを受賞した2019年のように、怪我なくシーズンを乗り越え、高いパフォーマンスを継続することが最大のポイントになるだろう。
※数字は6月9日試合終了時点
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