5戦全勝の最高のスタート
18勝11敗5分けで、首位阪神とゲーム差3のリーグ2位につけている巨人(5月5日試合終了時点)。エースの菅野智之が2勝(2敗)にとどまる中、ハーラーダービートップの5勝(0敗)を挙げ、チームを牽引しているのが、髙橋優貴だ。昨季は左肘を故障した影響で、1勝(3敗)という不本意なシーズンだったが、今季は先発ローテーションの一角として十分な働きを見せている。
制球が定まらずに四球を与え、自らピンチを招きがちだが、今季は要所を最少失点で切り抜けるシーンをよく目にする。7回を3失点と及第点の投球を見せた4月28日のヤクルト戦では、立ち上がりからボール球が多く苦しんだが、5回の無死一、二塁のピンチを1失点で切り抜け、以降の6回と7回はともに三者凡退に抑える投球を見せた。
球数が多いことは引き続き課題だが、先発として試合を作る力が着実についてきた印象だ。立ち上がりが不安定なことも多いため、まだ原辰徳監督から全幅の信頼を得るには至らないが、今後は長いイニングを任せられる機会も多くなるだろう。
スクリューの被打率.048
髙橋の武器と言えば、鋭く沈むスクリューボール。投球割合における同球種の占める割合は11.6%と少ないが、いざという時に空振りがとれる有効な球だ。21.3%という高い奪空振率を誇り、被打率は圧巻の.048。特に右打者にとっては、やっかいな球になっている。
直球の次に多投しているスライダー(投球割合は28.5%)も機能し、被打率は.171。昨季は.300と打ち込まれていたことを考えると、スライダーのキレがよくなったことも好成績を残している要因のひとつだろう。
カーブ(2.7%)やカットボール(0.9%)も投げるが割合は少なく、やはりスライダーとスクリューボールが髙橋の生命線と言える。
左打者の内角を攻められるかが課題
ⒸSPAIA
ゾーン別データを見ると、左打者に対しては外角中心、右打者に対しては内角中心の配球であることが顕著。特に左打者の外角低めは31.5%、右打者の内角低めは27%と投球割合が他のゾーンと比較して圧倒的に多い。ただ、右打者の内角低めは被打率が.000であることに対し、左打者の外角低めは.333と打ち込まれている。
左打者の内角に投じる割合が少ないが、内角を攻めていける制球力とそれに伴う自信が芽生えれば、投球の幅は広がるはずだ。もともと右打者に対しては、ピンチの際に内角へしっかりと投げられている印象があるが、今後は対左打者への攻め方を改善するべきだろう。右打者に対して多投し、かつ機能しているスクリューボールのような球を、対左打者でも持つことができれば最善だ。
ここまではピンチを迎えても最少失点に抑える粘りの投球を見せているが、ピンチを招かないに越したことはない。その一方、結果が出ていることで自信がついていくという側面もある。打線が援護してくれる試合は良いが、そうでない試合の時に、どんな投球を見せてくれるかに注目したい。
※数字は2021年5月5日試合終了時点。
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