菊池涼介、糸原健斗のIsoDはリーグ最低クラス
今季のセ・リーグ首位打者争いは、広島・菊池涼介と阪神・糸原健斗が共に打率.350前後をマークするハイレベルな展開となっている。昨季は両選手とも打率3割を切っていたが、今季は現時点で菊池が打率.352、糸原が打率.348と見違えるような活躍を見せている。
しかし、菊池と糸原には共通して珍しい傾向が見られる。それは、四死球によってどれだけ出塁したかを表す指標のIsoD (Isolated Disciplineの略)がリーグ最低クラスであることだ。
昨季セ・リーグ首位打者のDeNA・佐野恵太、一昨季セ・リーグ首位打者の広島・鈴木誠也と比較してみてもその違いは明らかだ。
昨季の佐野のIsoD.066はずば抜けて高かった訳ではないが、リーグ14位で平均的なラインはクリアしていたと言えるだろう。2019年の鈴木のIsoD.118はリーグ2位とさすがの数字だ。ボールには手を出さない選球眼の良さが証明されている。
それに対して、菊池はリーグワースト1位のIsoD.026。糸原もリーグワースト3位のIsoD.033となっている。
例年の首位打者は総じて一定のIsoDを記録しているのに対し、今季このような例外が起こっている理由は何なのか、打者の傾向からふたつの可能性が考えられる。
四球が少ない原因は“悪球打ち”と“先入観”
四球が少ない理由のひとつとして、「悪球打ち」が考えられる。
特に菊池は対左投手のアウトコースのボール球をよくヒットにしていることがヒートマップのデータから分かる。
しかし、糸原のヒートマップのデータからは悪球打ちと言えるデータはなく、むしろストライクゾーンのボールをしっかり捉えている印象を受ける。
ここで考えられるのは、「一発がないという先入観」を対戦投手に持たれている可能性だ。そのため、ストライクゾーンで勝負される事が多くなり、相対的に甘いボールが増え、それをしっかり捉えることができているので、高打率につながっているのではないか。
実際には、菊池はここまでリーグ8位タイの5本塁打を放っており、昨季までに5年連続で2桁本塁打を記録している。糸原もここまで本塁打こそ1本だが、リーグ3位タイとなる8本の二塁打を放っている。
「小柄で足が速い」というイメージが先行し、一発をあまり警戒されていないことが菊池と糸原のチャンス拡大につながったのかもしれない。ただ、そのチャンスボールを確実に捉える能力が、今季の両選手にあることは間違いない。
改めて、データから選手を知ることの大切さを感じる。
2000年以降の首位打者のIsoDワーストはラミレスの.025
2000年以降の首位打者で最も低いIsoDは、2009年の巨人アレックス・ラミレスが記録した.025である。逆に最も高いIsoDは、2001年の巨人・松井秀喜が記録した.130となっている。
四球数だけ見ても、その記録が桁違いであることが分かる。
ちなみに2000年以降にラミレス以外でIsoDの低かった首位打者は、2003年の阪神・今岡誠(.034)、2008年の横浜・内川聖一(.038)、2005年のヤクルト・青木宣親(.043)と続く。
今季の首位打者に輝く選手は、2009年のラミレスを下回る珍記録となるのか、タイトル争い以外にも楽しみがあるシーズンとなりそうだ。
※成績は2021年5月1日現在
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