勝負強い打撃で勝利に貢献
2年連続リーグ5位からの巻き返しを図る日本ハム。エース・有原航平がメジャーリーグのテキサス・レンジャーズへ移籍するなど戦力ダウンが懸念される中、投打における若手の台頭は他のチームよりも求められるところだ。
清宮幸太郎は打撃の調子が上がらずに開幕一軍から外れたが、正三塁手としてブレイクが期待される20歳の野村佑希がまずまずのスタートを切った。7番・三塁で先発出場した3月27日の楽天戦では、今季初打点となる決勝の2点適時打を放ち、チームに今季初勝利をもたらした。
2-2の同点で迎えた3回2死満塁の好機に打席に入ると、楽天の先発・高田萌の直球を右中間へ鮮やかに弾き返した。昨季の得点圏打率は.357(28打数10安打)をマークしていたが、勝負強い打撃を再びアピールした形だ。ここまでの4試合で打率.385(13打数5安打)、出塁率.529をマーク。打率.342、3本塁打、7打点をマークしたオープン戦の好調ぶりをキープしている。
課題は三塁守備
花咲徳栄高校時代には、対外試合で通算58本塁打を放つなど右のスラッガーとしてその名を轟かせた野村。2018年ドラフト2位で日本ハムに入団し活躍が期待されていたが、1年目は左股関節の後方亜脱臼、開幕スタメンで1軍公式戦デビューを果たした2年目は、守備中に打球を小指に受けて骨折するなど、怪我に悩まされた。それでも2年目の昨季は21試合に出場し、3本塁打を放つなど大器の片鱗を見せてブレイクの土台を作った。
懐が深くインコースのさばきに非凡なものを見せ、ヘッドスピードも速く打球も強い。追い込まれるまでは自分の形でしっかりとスイングできるが、高卒3年目でなかなかできることではない。
課題は昨季20試合で7失策という三塁守備。肩は強いが捕球に改善の余地がある。今季場数をこなして守備に自信が生まれれば、打撃にも好影響を及ぼすだろう。
広角への長打と変化球の対応力
まだ打席数も少ないが、現時点での打球方向を見ると、中堅方向が38%、右中間方向が38%、右翼方向が25%と、全ての打球がセンターから右への打球となっている。3月10日に行われたDeNAとのオープン戦では、内角寄りの直球をバックスクリーンへ運ぶ特大のアーチを放ったことでもわかるように、広角に長打を打てることが魅力だ。
昨季放った3本の本塁打は全て左方向へ引っ張った打球だったが、今季意識が高まっている逆方向への本塁打が増えれば、相手投手にとっても脅威となるだろう。
昨季の球種別の打率を見ると、対直球の打率は.200で差し込まれるケースも散見された。対スライダーは.333、対カットボールは.500、チェンジアップとフォークはともに.333と、ある程度どの球種にも対応できることは証明済み。課題はパ・リーグに多い力強い直球への対応だが、そこをクリアできればかなりの数字を期待できるのではないだろうか。
中田翔をはじめ、西川遥輝、近藤健介、大田泰示、渡邉諒らが並ぶ打線において、野村が確固たる戦力として機能することができれば打線につながりが生まれ、チームの得点力も高まるだろう。既に計り知れないポテンシャルを感じさせてくれている野村が、今季どんな数字を残せるのか注目したい。
※数字は2021年3月30日試合終了時点
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