K/9は11.08!球界で最も三振を奪う男
昨季、前半は苦しみながらも最終的には投手三冠に輝き、圧巻の投球を披露したソフトバンクのエース・千賀滉大。最速161km/hのストレートに代名詞のお化けフォークと、その完成度はまさに一級品だった。
球種ごとの被打率でも、軸となるストレートが.253、カットボールが.228、決め球のフォークが.118、スライダーが.133と驚異的な数字が並ぶ。10%を超えると優秀とされる空振り奪取率も、フォークにおいては25.2%と超人的な数字を記録している。
K/9(奪三振率)11.08は、2019年に自身が記録した歴代最高記録11.33に迫る記録で、2位のオリックス・山本由伸の10.59に0.49差をつけるトップの数字だ。球界で最も三振を奪う男に死角はあるのだろうか。
奪三振増で被本塁打数低減につながる?
千賀には奪三振率に並んで圧巻だった数字がある。それは、HR/9だ。
HR/9とは、1試合での被本塁打数を示す指標で、千賀はこの数値で0.30を記録し、2位のオリックス・山本の0.43に0.13差を付けトップに立っている。
千賀と山本は共にK/9とHR/9においてワンツーフィニッシュで、奪三振率が高い投手は被本塁打数を減らすことにつながっている可能性が考えられる。
また、被本塁打数が減ると安打がそのまま点になる機会が減るので、防御率が改善される。実際に千賀はパ・リーグトップの防御率2.16を記録し、山本も同2位の防御率2.20を記録している。奪三振、被本塁打、防御率には高い相関関係がありそうだ。
奪三振が投手の全てではないが、三振を奪える確率の高い投手ほど、良い成績を収める可能性が高いと言えるだろう。そのことは、パ・リーグトップクラスのピッチャーが数字で証明している。
制球面に課題も、四球を与えても三振を奪えばお構いなし
ここまで、圧巻の数字が並ぶ千賀だが、ずば抜けて低い数字がある。それはBB/9(与四球率)である。
千賀のBB/9は、リーグ平均を大きく割り込む4.24で57個の与四球もパ・リーグの規定投球回到達者で最多となっている。
決め球のフォークがストライクからボールに落ちるため、見極められた際に四球になりやすいことも考えられるが、千賀のヒートマップ(SPAIA参照)では全てのコースに万遍なくボールが投じられているため、ある程度コントロールがアバウトになっても球の強さとキレで勝負していると見られる。
四球を与えてランナーを出しても、三振を奪ってしまえば点は取られないことを体現するようなデータだが、四球は悪とする野球の常識を根底から覆し、三振を奪うための四球は善しとする野球の新常識の立証とも捉えることができる。
もちろん、三振を奪えていれば四球をいくら出してもいいというわけではない。四球が出ればそれだけ失点リスクが高まるのは事実で、千賀に限って言えばランナー3塁でのフォークのワイルドピッチの危険性が高まるため、コントロールが良いことに越したことはない。
それでも千賀のデータは、四球が多い投手は全て悪とする考え方に再検討の余地を与えたのではないのだろうか。言うまでもないが、四球を出し三振も奪えない投手が本当の意味での悪である。
故障の影響で開幕投手を外れることとなった千賀。現在2軍調整中だが、開幕までに1軍に復帰し、今季も圧巻の奪三振ショーを披露してくれることに期待したい。
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