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もう「ポスト秋山」で文句なし?西武・スパンジェンバーグの進化ぶりがすごい

2020 10/13 06:00青木スラッガー
埼玉西武ライオンズのスパンジェンバーグⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

「ポスト秋山」を期待された新外国人打者

自慢の「山賊打線」が影を潜める今年の西武打線の中で、日に日に存在感を増してきているのが新外国人のコーリー・スパンジェンバーグだ。

10月11日終了時点の成績は打率.273・12本塁打・45打点。打線に破壊力をもたらすべく獲得された助っ人打者の数字としては物足りなくも映るが、7月終了時点での打率が.250だったことを考えれば、それ以降の働きぶりは立派なものである。

入団決定当初、スパンジェンバーグに期待する役割として盛んに聞かれたのが「ポスト秋山」という言葉だった。今年から大リーグへ移籍した秋山翔吾といえば、プロ野球のシーズン安打記録を更新した安打製造機。ヒットで塁に出るだけでなく、四球も選べて出塁率が高く、さらに長打もあるという、まさに理想的な1番打者であり、山賊打線の火付け役。そんな強打者の後釜候補として、俊足の左打者は日本球界へやってきた。

しかし開幕してみれば、調子の良い日は固め打ちしてまずまずの打率を残すものの、高めの釣り球に手を出すシーンが目立って三振が異常に多く、四球はまったくと言っていいほど選べないという弱点が露呈する。

開幕から7月までの出塁率は3割に満たず、四球を打席数で割った四球率(BB%)は2%台の最低クラス。これでは開幕当初のトップバッターを任せ続けるのは難しく、次第に下位打線に回されるようになり、「ポスト秋山」というファンの期待の声もいつからか聞かれなくなっていった。

8月以降はまるで別人……「選球眼」が劇的に進化

ところが、暑い所沢の夏本番を迎えると、不安定だった打撃に変化が起きてくる。7月30日のソフトバンク戦で第1打席から本塁打、二塁打、三塁打と「サイクル未遂」の大暴れで勝利に貢献すると、8月はヒットを量産して月間打率.330を記録。9月は打率.284とアベレージこそやや落としたものの、OPSは8月を上回る.951とさらに恐いバッターになった。

打率3割と20本塁打以上を全てクリアした直近3シーズン合計の秋山の打撃成績を参考にしつつ、スパンジェンバーグの月間成績を振り返ってみたい。

秋山翔吾 最近3シーズンの打撃成績ⒸSPAIA
スパンジェンバーグ 月別打撃成績ⒸSPAIA

打率が伸びてきているのは前述したとおりだが、そこに加え、注目したいのが「選球眼」だ。7月まで2%台だったが四球率が8月は7.8%。9月は12.8%と急上昇している。選球眼に定評のあった秋山でも直近3シーズンの四球率は11.2%だったことを考えれば、スパンジェンバーグの選球眼は最低クラスから一転して、驚くべき進化を遂げていることがわかる。

さらに8月以降は、それまでまずまず優秀だった長打率も伸びて秋山以上の水準を残した。ここまでの12本塁打は中距離ヒッターという印象の本数だが、二塁打24本と三塁打7本はリーグトップ。足でも長打を稼いで、現時点で長打率.495は山川穂高の.488を上回ってチームトップ、リーグでも7位をマークしている。

リーグトップクラスの長打力に加えて。シーズン途中から向上しだした選球眼も安定してくれば、まさに「ポスト秋山」と呼ぶにふさわしい存在になってくるだろう。

西武とは1年契約だと報じられている。今の段階で来年の去就は不透明だが、いつもよりも短いシーズンの中でせっかくここまでの進化を見せてくれているのだから、来年も西武のユニフォームを着たスパンジェンバーグの姿をぜひとも見たいところだ。

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