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期待の大砲候補・ヤクルト濱田太貴のK%、BB%は中田翔らの高卒2年目時点と遜色なし

2020 9/29 11:51勝田聡
東京ヤクルトスワローズの濱田太貴ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

激しい外野の争いを20歳の濱田が勝ち抜く

昨シーズンオフにバレンティン(現ソフトバンク)が退団したことで、今シーズンの外野手のレギュラー争いが激しくなっていたヤクルト。左翼の青木宣親こそ当確だったが、中堅と右翼は塩見泰隆、雄平、山崎晃大朗、中山翔太、そして一塁との併用になる坂口智隆で争うものと見られていた。

とくに中堅の塩見には大きな期待がかけられており、開幕戦では「5番・中堅」で出場したほど。山崎、雄平、中山翔太で残り1枠を争い、坂口は一塁での起用が既定路線だった。本職が外野である坂口が一塁起用となるのは、高津臣吾監督が主砲の村上宗隆を三塁で起用することを明らかにしていたからだ。

しかし9月半ばも過ぎた今、外野のスタメンは開幕時に思い描いていたものとは大きく違う。主将の青木は健在だが、開幕スタメンを任されながらもコンディション不良で離脱中だった塩見と、状態が上がらない雄平は9月14日に登録を抹消されている。

開幕から好調で一時は打率3割を超えていた山崎も、9月12日を最後にスタメンでの起用はない。9月16日からは坂口、そして濱田太貴がほぼ中堅と右翼を任されている。

高卒2年目ですでに2本塁打を記録するも……

濱田は2018年ドラフト4位で指名され、明豊高からヤクルトへと入団した高卒2年目の外野手である。昨シーズンは二軍で105試合に出場し、打率.254(338打数86安打)、8本塁打、11盗塁の成績を残し終盤に一軍デビューを果たした。

今シーズンは8月12日に初めて一軍昇格を果たすと、一度登録を抹消されたものの9月15日に再昇格し、以降はスタメンでの起用が続いている期待の若手だ。打率.211(71打数15安打)、2本塁打、5打点とここまで残した数字だけを見れば、レギュラーと呼ぶに相応しくないと思うかもしれない。しかしそれは、去年の村上(規格外の高卒2年目)を目の当たりにしているため、感覚が麻痺しているからだろう。

同じ高卒2年目の時点では、あの山田哲人でさえも26試合で打率.250(44打数11安打)、1本塁打、1打点だった。すでに21試合に出場し2本塁打を放っている濱田は、高卒2年目の時点で山田と肩を並べているといってもいいだろう。いや、本塁打と打点ではすでに超えている。とはいえ、他の数字を見ると少し気になる点がある。

濱田は三振が多く、四球が少ない。一般的には本塁打の多い長距離砲が三振、四球ともに多くなり、K%(打席数に対する三振の割合)とBB%(打席数に対する四球の割合)はともに上がる傾向。昨シーズンの村上が良い例で、593打席に立ち36本塁打を記録しながらも184三振を喫したため、K%は31.03%となる。およそ3打席に1回は三振をする計算だ。

ヤクルト:日本人規定打席到達者の三振と四球ⒸSPAIA

ここで、今シーズンのヤクルトにおける規定打席に到達している日本人選手の数字と比べてみる。濱田は村上や山田以上に三振をしながら、四球を選ぶことができていないことがわかる。この数字に不安を覚えてしまうのも無理はない。

高卒2年目時点における中田翔のK%は約40%

それでは過去の高卒2年目の選手たちと比べるとどうなのだろうか。9月27日終了時点で規定打席に到達している高卒出身の右打者の2年目の数字と比較してみる。

右打ち高卒野手の規定打席到達者の高卒2年目成績ⒸSPAIA


浅村栄斗(当時西武)と山田のBB%は10%を超えているが、その他の選手はさほど変わらない。2000本安打まであと少しの坂本勇人(巨人)でさえ、5%を切っている。中田翔(日本ハム)に至っては2.63%しかない。38打席でわずか1個と、ほとんど四球を選ぶことができていなかったのである。

K%が39.47%と40%近い中田は、シーズン500打席に立つとすれば200三振になる計算だ。しかし今年の中田のK%は23.10%(85三振/368打席)と、このときから大幅に良化している。

現在、それぞれのチームで活躍している選手たちも、高卒2年目の時点では皆苦しんでいた。その試練を乗り越え、主力へと成長していったのである。今の濱田が数字的に見劣りしたとしても、悲観することはないだろう。

濱田には2年夏の甲子園、神村学園高校戦で貫禄を見せたエピソードがある。8-8の同点で迎えた延長12回裏2死満塁の場面で打席に入った濱田は、フルカウントから外角低めの球を悠然と見送り、押し出しの四球を選びサヨナラ勝ちを演出したのだ。緊迫した場面でも見逃すことができる落ち着きを高校時代から持っていた。

高校野球とプロ野球のレベル差があるのはもちろんだが、濱田自身に落ち着きがあるという事実に変わりはない。焦らず、落ち着くことで四球を選ぶことができるようになれば、自ずと数字は改善されるはずだ。先輩たちが乗り越えてきた壁を濱田も乗り越え、村上に次ぐ主軸へと成長することをファンは願っている。

※数字は2020年9月27日終了時点

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