勝利を手繰り寄せる殊勲打が多い
16勝14敗1分けでリーグ3位につける西武。チーム得点数138はリーグ3位、チーム本塁打数26本はリーグ5位、チーム打率.247はリーグ2位(7月26日試合終了時点)と、ここ数年見せてきた圧倒的な打撃力から考えると少々破壊力に陰りが見える。
そんな中、勝負強い打撃で打線を牽引しているのが栗山巧だ。昨季首位打者を獲得した森友哉をはじめ、全体的に本調子に至っていない打線において確かな存在感を示している。打率.323、出塁率.425はともにリーグ5位。6番や7番などクリーンナップの後ろを任されており、試合の中でポイントとなるような殊勲打を多く放っている印象だ。
7月26日、本拠地メットライフドームで行われたロッテ戦では7番左翼で先発出場。2回裏1死一、三塁の好機で打席に入ると先制点となる適時二塁打を放ち、6回には勝ち越しとなる二塁打。チームの勝利に貢献した。
同試合で史上45人目となる通算350二塁打も達成。今年で37歳を迎えるベテランだが衰えは一切見られず、当面の目標である通算2000本安打(残り144本)も、大きな怪我がない限りは通過点になると言い切れそうな打撃の充実ぶりだ。
直球への強さと甘い球を仕留める力
今季の栗山の打撃で特徴的なのは、直球に滅法強いこと。昨季は対直球の打率が.287だったが、今季は.436(39打数17安打)と大幅に向上。各チームのエース級投手たちの直球も、振り負けることなく弾き返している。
また、ゾーン別データを見ると、真ん中の打率が圧巻の1.000(10打数10安打)。甘いコースに来た球は確実に仕留めている。例え真ん中でも打ち損じはあるものだが、そこをものにするのがベテランの読みと卓越された技術。内角中程は.182(11打数2安打)、外角低めは.111(18打数2安打)と苦手とするコースもあるが、基本的に選球眼が良く打ち取るのが困難な打者と言える。対右投手の打率.313、対左投手の打率.345と投手の左右を苦にしないことも大きい。
7月10日、敵地ZOZOマリンで行われたロッテ戦では、2点ビハインドの8回表に同点となる2点本塁打を放った後、9回表の満塁の好機では押し出しの四球を選び、これが決勝点に。この緊迫の場面について、「球場が静かだったので、僕の鼻息が聞こえるんじゃないかと。皆さんの厳しい目線、温かい目線が感じられて嬉しかったです」と振り返っていた。
チームメイトのため、ファンのために
7月12日のロッテ戦、栗山は先制となる適時二塁打を放ったほか、貴重な追加点となる3点本塁打も放つなど、2四球を含む2打数2安打4打点と躍動。10日のロッテ戦同様、栗山のバットがチームを勝利に導いたが、その活躍の裏には、同試合で先発した與座海人にプロ初勝利をプレゼントしたいという想いがあった。
「本当は與座に勝ち星がつけば良かったんですけど(チームは勝利するも、與座は5回2死で降板)、今まで與座の時に僕がタイムリーを打ってなかったんで。今日は絶対打つからと約束してて。まぁ、次回與座が投げた時にまた打ちたいと思います」
また、「試合前はファンの皆さんにいい姿を見せたいという気持ちになりますし、僕たちのプレーをしっかりみてほしいと思ってプレーしてるんで、皆さんの前で打ててよかったです」とファンへの思いも語っていた。
そんな栗山に対して、SNSには「チームを代表する人格者、ライオンズの宝です」「年齢を感じさせないスイングとしっかりとした選球眼で甘い球を確実に打ってくれる」「練習に対する真面目さや準備の入念さも若手にとっていい模範」「チャンスで勝負強いし、試合の状況を読んで、最善の選択肢を必ず頭に入れてる選手。ミスターレオ、大好きです」と賛辞が飛び交う。
ここぞの場面で頼りになるベテランであり現在進行形のレジェンド。今後も栗山の一挙手一投足に注目だ。
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