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大エース?それとも複数投手? 過去5大会の選抜優勝校から見る投手運用

2020 3/10 11:00林龍也
甲子園球場ⒸSPAIA
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過去5年の選抜優勝校の投手成績

コロナウィルスの影響により、無観客開催の方針が示された第92回選抜高等学校野球大会。昨秋の明治神宮野球大会を制した中京大中京の髙橋宏斗や、昨夏甲子園の優勝投手・岩崎峻典(履正社)、最速151キロ右腕の中森俊介(明石商)など、各校のエースたちの活躍が期待されている。

今回は、過去の選抜優勝校の投手成績を振り返り、大会を勝ち抜くための投手運用を探りたい。過去5年間の選抜優勝校で登板した主な投手は以下の通り。

過去5年間の優勝校の主な投手成績

2015年の平沼翔太(敦賀気比)、2016年の村上頌樹(智弁学園)は全5試合を投げ抜くなど、まさに大黒柱と言える投球を見せた。2017年の徳山壮磨(大阪桐蔭)、2019年の石川昂弥(東邦)も、大部分を一人で投げ抜いている。2018年の大阪桐蔭だけは、背番号1の柿木蓮、背番号6の根尾昂の二人が主戦となり、大会を勝ち抜いた。これらの投手たちの成績を見ていくと、さすがと言える数字が並ぶ。

意外にも高くない奪三振率

ここからは項目別に見ていこう。まず投球回では40回前後が多くなっている。1試合平均8回を投げる計算だ。先発したエースが試合の大半を投げ、終盤でリリーフが試合を締めるという継投も多く見られた。

次いで防御率を見ていくと、村上、平沼、石川が1点未満。大阪桐蔭の3投手も1点台と、エースと呼ぶに相応しい数字だ。WHIPにいたっては全5投手が1以下と、1イニングあたり平均して1人以下の走者しか許していないという結果だった。

過去5年間の優勝校の主な投手成績

そして興味深いのが奪三振率だ。平沼、村上、徳山、石川らは6~8と、それほど多くの三振を奪っていないことがわかった。奪三振数が多い投手は球数が多くなってしまう傾向にあるが、彼らは一人で投げ抜くため、球数を少なく抑える術を身に付けていたのかもしれない。

柿木、根尾は交互に登板しハイパフォーマンスを発揮

ここまでは、ほぼ一人で投げ抜いた投手について主に見てきたが、最後に、二人で主戦として戦った柿木と根尾の成績について見ていきたい。

二人の成績を合算すると、概ね他の4投手の数字に近いものになる。つまり2018年の大阪桐蔭は、選抜優勝校のエースクラスの実力を持つ投手が二人いて、交互に先発しながら高いパフォーマンスを維持したことが優勝につながったと考えられる。

また、交互に先発できたことが功を奏したのか、二人の奪三振率は非常に高く、合算しても9.88と他のエースたちを遥かに上回っている。柿木だけで見ると、奪三振率11.40、四死球率1.20、K/BBが19.00と圧倒的な成績を残していた。

今春からは新ルールとして、1週間で500球以内という球数制限が導入される。40回前後を投げた4投手の投球数は600球ほど。大会終盤でエースの連投が続くことになると、引っかかる投手も出てくるかもしれない。好投手が多く集まるチームだからこそできる戦い方なのかもしれないが、優勝を目指すなら、2018年の大阪桐蔭の戦い方が一つの手本となるだろう。

各チームにとって、ますます投手運用が難しくなることが予想される今春選抜。複数投手を擁するチームが勝ち上がるのか、それとも大エースを擁するチームが勝ち上がるのか、楽しみに待ちたい。