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センバツ優勝に導く4番打者とは? 過去5大会成績から浮かび上がる打者像

2020 3/4 10:35林龍也
甲子園球場ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

センバツ優勝へ導く4番打者とは

3月19日に開幕する第92回選抜高等学校野球大会。今大会では、1年夏から聖地を経験している井上朋也(花咲徳栄)や、山村崇嘉(東海大相模)、仲三河優太(大阪桐蔭)、山地裕輔(天理)などのスラッガーたちが「4番打者」として注目を浴びている。

今回は、過去の優勝校にはどんな4番打者が座り、いかにしてチームを優勝へと導いたのか読み解き、4番打者に求められる仕事を考えてみたい。そこには意外とも言える事実があった。

際立つ三振の少なさ

まず、過去5年間の優勝校の4番打者たちの主な打撃成績を見てみよう。

過去5年間の優勝校4番打者成績


今季千葉ロッテマリーンズで飛躍が期待される藤原恭大(大阪桐蔭)や、北海道日本ハムファイターズでスタメン定着を目指す平沼翔太(敦賀気比)、昨秋の明治神宮野球大会にも出場した福元悠真(大阪商業大)など錚々たるメンツが並ぶ。

まず5名の共通点として、全5試合において4番スタメンで出場していることが挙げられる(ポジションも固定)。打率は平沼の.250から熊田の.421まで幅があるが、OPSは全員.800超えと高い水準にある。

また、三振数が少ないことも特徴の一つと言えるだろう。4番打者と言うと、従来は一発長打を秘める代わりに、三振も多いというイメージだった。だが、今回取り上げた5名はいずれも三振数が安打数より少なく、平沼以外の4名に至っては、10打席立っても1回三振するかどうかという計算だ。山本に至っては三振なしと、高いミート能力を有していたことがわかる。

平沼についてはやや見劣りする数字もあるが、投手として全試合で先発完投していることを考慮する必要もあるだろう。

4番にホームランはいらない?

また、意外にも本塁打数が少ないことがわかる。本塁打を放ったのは平沼、福元だけで、ともに1本ずつ。長打率.636を記録した藤原でさえも、本塁打を放っていないのだ。熊田は長打なしの打率.421を記録し、繋ぎの4番としてチームを平成最後の選抜王者へと導いた。

ではチームとして本塁打がなかったのかというと、そうではない。平沼のチームメイトには史上初の2打席連続満塁弾を含む3本塁打を放った松本哲幣(同志社大)がいた。山本の前後には山田健太(立教大)や藤原が、その藤原が4番に座った翌春選抜でも、やはり山田が一発を放っている。熊田の前を打つ三番には石川昂弥(中日)が座り、3本塁打を放った。

4番が打たなくても他に一発を打てる打者が揃っていたのだ。平均打点が3.6とそこまで多くないのも、前後の打者がしっかり走者をかえす打撃ができていたことの表れだろう。唯一、福元以外に本塁打がなかった智弁学園は、エースの村上頌樹(東洋大)を中心に5試合で18得点3失点と、ロースコアでもしっかり勝つチームだった。

さらに特徴的なのが、失策が少ないことだ。5名のポジションは投手、右翼手2人、中堅手、遊撃手と、守りの要を担っている選手が多いにも関わらず、失策は遊撃を守った熊田の1つのみ。あとの4名は無失策で大会を終えている。このことからも、従来の4番像とは少々違った選手がそろっていることがわかるだろう。

これらのことから、選抜を制するチームの4番は、厳しいマークの中で長打は少なくても三振も少なく、コンスタントに打率を残せ、さらに守備面でもチームに貢献することができるという選手像が浮かび上がってきた。春の選抜は調整期間が短いことから投手有利とも言われるが、そのことと無関係ではないのかもしれない。

今大会は新型コロナウィルスの影響のため、各地で大会や試合などの中止・延期が相次ぎ、本大会自体の開催も危ぶまれる事態になっており、例年と比べても一層調整が難しくなっている。もし、予定通り開催されるのであれば、各チームの4番打者がどのような打撃を見せてくれるか、楽しみにしたい。