甲子園でノーヒットノーランを達成した名投手たち|【SPAIA】スパイア

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甲子園でノーヒットノーランを達成した名投手たち


伝説となった夏の決勝でのノーヒットノーラン

高校野球でノーヒットノーランといえば、やはり松坂大輔選手(現:福岡ソフトバンクホークス)を思い浮かべる方も多いのではないだろうか。横浜高校3年生だった1998年の夏の甲子園決勝、京都成章高校を相手にノーヒットノーランを達成し、見事に優勝を果たした。
この年の横浜高校は春の甲子園でも優勝したうえに、準々決勝のPL学園戦では延長17回3時間37分の死闘、続く明徳義塾戦でも熱戦を演じており、最高の形での春夏連覇となった。

また同じ年には、鹿児島実業高校のエースだった杉内俊哉選手も、ノーヒットノーランを達成している。1回戦の八戸工大一高との試合で、16奪三振の見事なピッチングであった。続く2回戦で横浜高校に敗れてしまったが、与えたインパクトは非常に大きかった。
後に杉内選手は、2012年にも交流戦中の楽天イーグルスとの試合でノーヒットノーランを達成しており、甲子園とプロと両方で記録を達成した唯一の選手となった。

最も近い記録は2004年、史上初の記録は1916年

春夏を通じて1番近いノーヒットノーランの達成は、2004年のダルビッシュ有選手(現:テキサス・レンジャース)である。
東北高校3年生だった春の選抜1回戦、熊本工業高校を相手に12奪三振の完璧なピッチングを見せた。最後の打者を打ち取ったときの笑顔が印象的であった。続く大阪桐蔭戦では直前に右肩を痛めてしまったこともあり、6回からは真壁賢守さんへと交代。この試合は辛くも3-2で勝利したが、3回戦の済美高校ではとうとう登板することができず、敗退してしまった。

反対にもっとも古いノーヒットノーランの記録は、1916年の松本終吉さんという方だ。
まだ今の高校が旧制中学だった時代、市岡中(現:大阪府立市岡高校)のエースとして出場した大会での準決勝、一関中(岩手 現:岩手県立一関第一高校)戦にて、この記録が達成された。この試合では松本さんのストレートが冴えにさえ、8奪三振の見事なピッチング。打線も後に野球殿堂入りを果たす田中勝雄さんが4安打、さらに打者としても4番を務める松本さんもタイムリーを放ち、8得点を挙げて快勝した。

市岡中の次の相手は鳥取中(現:鳥取県立鳥取西高校)。1回戦で和歌山中(現:和歌山県立桐蔭高校)に敗退したにもかかわらず、この1916年と翌年の大会のみに採用された「敗者復活制度」で戻ってきた学校だ。
この年の大会は敗者復活の他にも、初の外国人学生選手が出場したりと、さまざまなことがあった。ちなみに試合は延長10回の熱戦が繰り広げられ、5-4で市岡中が勝利している。

1920~30年代にはさまざまな名投手が記録を達成

その後は10年ほどノーヒットノーランの記録も出ていない時期が続いたが、1927年に広陵中(広島 現:広陵高校)の八十川胖(ゆたか)さんが史上2人目のノーヒットノーランを達成すると、それから30年代にかけて、たくさんの好投手たちがこの記録を達成していく。

1928年夏:伊藤次郎 京都 平安中(現:龍谷大平安高校)
1931年春:灰山元治 広島 広島商業
1932年夏:楠本保 兵庫 明石中(現:兵庫県立明石高校)
1932年夏:水沢清 長野 長野商業
1932年夏:岡本敏夫 熊本 熊本工業
1933年春:河合信雄 愛知 一宮中(現:愛知県立一宮高校)
1933年春:森田俊男 和歌山 海草中(現:和歌山県立向陽高校)
1933年夏:吉田正男 愛知 中京商(現:中京大中京高校)
1934年夏:長谷川治 和歌山 海南中(現:和歌山県立海南高校)
1936年夏:小林悟楼 和歌山 和歌山商
1938年春:野口二郎 愛知 中京商
1938年夏:浦野隆夫 大分 大分商業
1939年夏:嶋清一 和歌山 海草中 ※準決勝で達成
1939年夏:嶋清一 和歌山 海草中 ※決勝で達成

というように、30年代だけでもかなりの人数が達成した。達成した人物を見ても、野球殿堂入りを果たした人も見受けられる。

野球殿堂入りをはたした名投手たちも

中でも、中京商業の吉田正男さんは、史上初の夏の甲子園3連覇を達成した投手だ。春夏連覇や、夏の大会2連覇は複数校が達成しているが、3連覇となると、いまだ中京商しか達成していない。ノーヒットノーランの記録は、その3連覇がかかった1933年夏大会、初戦で達成されたという。
抜群のコントロールを誇り、特にアウトローへのストレートは打者が全く手が出ないほどだった。その後は社会人野球でも活躍し、アマチュア野球の発展に貢献。1922年に野球殿堂入りしている。

また同じ中京商業の野口二郎さんも、野球殿堂入りを果たしている。後に法政大学から東京セネターズへと入団し、1942年にはシーズン40勝、通算237勝をあげる大投手である。ノーヒットノーランを達成した1938年春の大会では、大会4試合をすべて完封し、記録は準決勝の和歌山代表の海草中学戦で達成された。
吉田さんと同じくコントロールが抜群であり、プロ入り後も無四球試合を57度記録。1948年の無四球試合13というのは、未だシーズン記録として残っている。

また嶋清一さんが1939年夏の大会で達成した、準決勝・決勝2試合連続ノーヒットノーランの話も欠かせないだろう。2試合連続での達成というのは、後にも先にも嶋さんしか達成していない、唯一の記録だ。前年は野口さんにノーヒットノーランの屈辱を味わった海草中であったが、翌年には最高の形で優勝を果たすことができた。
嶋さんは剛速球とキレのあるドロップボールが武器のサウスポーで、特にドロップはまるで垂直方向に落ちていたと打者が錯覚するほどだったそうだ。その後は明治大学に入学し、学生野球の発展に陣職。2008年に野球殿堂特別表彰を受けている。

世界のホームラン王が高校時代に達成したノーヒットノーラン

その40年代もしばらくは記録が出ていなかったが、50年代になると再び名投手たちが続々と記録を達成していく。

1951年春:野武貞次 兵庫 兵庫県立鳴尾高校
1951年夏:服部茂次 埼玉 埼玉県立熊谷高校
1955年春:今泉喜一郎 群馬 群馬県立桐生高校
1957年夏:清沢忠彦 岐阜 岐阜県立岐阜商業高校
1957年夏:王貞治 東京 早稲田実業高校
1958年夏:森光正吉 高知 高知市立高知商業高校

やはり王貞治さんの名前がとりわけ目立つ。早稲田実業高校のエースとして出場すると、2回戦の大阪府立寝屋川高校相手に、ノーヒットノーランを達成した。「世界の本塁打王」として知られる王さんであるが、当時は左の本格派投手であり、1957年に2年生エースとして春の選抜で優勝、そして夏の甲子園ノーヒットノーランを達成した。力のあるストレートに、時折見せるカーブで、相手打線を翻弄していった。

しかもこのときは延長11回を1-0で勝利しており、延長に入ってのノーヒットノーラン達成は未だこの試合以外では達成されていない。それだけ、相手投手の島崎武久さんも良い投手だったのだろう。実際に寝屋川高校と早稲田実業はこの年の春の選抜でも対戦しており、このときも早稲田実業を1点に抑えている。ちなみに打者としての王さんは2試合で合計7打数無安打に終わっている。

金属バット導入後は達成数が激減

その後60年代に2人、70年代に3人、80年代に3人、90年代に4人が記録を達成している。昔ほど記録が達せされないのは、1974年の春から金属バットが導入されたからだろう。これ以降、池田高校のやまびこ打線に代表されるように、打高の時代が長く続いたからだ。

1967年春:野上俊夫 和歌山 和歌山市立和歌山商業高校
1969年夏:降旗英行 長野 松商学園高校
1973年夏:有田二三男 大阪 北陽高校
1976年春:戸田秀明 茨城 茨城県立鉾田第一高校
1978年春:松本稔 群馬 群馬県立前橋高校 ※完全試合
1981年夏:工藤公康 愛知 名古屋電気高校(現:愛工大名電高校)
1982年夏:新谷博 佐賀 佐賀商業高校
1987年夏:芝草宇宙 東京 帝京高校
1991年春:和田友貴彦 大阪 大阪桐蔭高校
1994年春:中野真博 石川 金沢高校 ※完全試合
1998年夏:杉内俊哉 鹿児島 鹿児島実業高校
1998年夏:松坂大輔 神奈川 横浜高校
2004年春:ダルビッシュ有 宮城 東北高校

21世紀に入ってからは、ダルビッシュ選手1人しか達成していない。2009年春の選抜では、PL学園の中野隆之選手が9回まで無安打ピッチングを披露していたが、残念ながら打線の援護に恵まれず、延長10回表にヒットを許してしまい2失点。そのまま1-2で敗戦してしまった。このように非常に難しい記録であるが、それだけ貴重な記録であり、記憶にも残るものなのだ。
今後、どんな名投手たちがこの記録を達成してくれるのだろうか。

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