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慶応義塾高校野球部の吉岡眞司メンタルコーチが明かす甲子園で優勝できた理由

慶応高の吉岡眞司メンタルコーチと大村昊澄主将
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本人提供

スーパーブレイントレーニング導入で全国制覇

第105回全国高等学校野球選手権記念大会で優勝した慶応義塾高の吉岡眞司メンタルコーチがSPAIAの取材に応じ、塾高ナインが107年ぶりに全国制覇を果たすまでの裏側を明かした。

吉岡氏はサラリーマン時代、管理職に昇進した際にチームマネジメントについて深く追究。西田文郎氏が確立した「スーパーブレイントレーニング(SBT)」を知り、資格を取得した。

SBTとは、一般的なメンタルトレーニングとは異なり、緊張や不安から来るネガティブな心理状態を脳の機能と特性を活用してポジティブに変えることのできる、言い換えると感情を自らのタイミングで自由にコントロールできるようになるメンタルトレーニング手法のこと。

吉岡氏は「チームは良い雰囲気が保たれていないとうまく機能しない。人のパフォーマンスは感情に左右されるので、感情を上手にコントロールして、いかにしてポジティブな状態に導けるかがポイントです」と説明する。

具体的には、ポジティブになった時に思わず出てしまう言葉や態度、表情を認識し、ネガティブになった時はポジティブな言動をアウトプットすることで脳が肯定的な錯覚を起こす。そういったことを繰り返しながら自分の思考癖を知り、改善していくというものだ。

サラリーマンを退職して独立した吉岡氏は野球経験はないが、母校でもある慶応義塾大学野球部から請われ、2021年1月からメンタルコーチに就任。福井章吾主将(現トヨタ自動車)ら部員たちはSBT理論を貪欲に吸収し、同年に30年ぶりの春秋リーグ戦連覇、6月の大学選手権で34年ぶり日本一の栄冠を手にした。

その後、塾高野球部の森林貴彦監督からも要請を受けて高校でも指導をスタート。今回優勝した大村昊澄主将の新チームから本格的に関わり始め、いきなり最高の結果を出した。

2021年の慶大と重なった今年の塾高

年に一度の講習をした後は月に数回グラウンドに顔を出す程度だが、質問や相談はLINEなどで随時受け付ける。

「今年のチームは福井君の時のチームと似ていました。人は分からないことがあると、“どうしたらいいですか”などと尋ねるのが一般的だと思うのですが、彼らは自分の考えを先に述べた上で“どう思いますか、合ってますか”などと聞いてくるんです。自分で考えて行動できる選手が多く、今年のチームは凄く秀でていると思います」

すぐに答えを求めるのではなく、自ら仮説を立てて主体的に考える姿勢は、塾高ナインが全国の頂点に立つべくして立った資質だったのだろう。それを引き出した吉岡氏から見ると、リーグ戦で春秋連覇し、大学選手権も制した2021年の慶応義塾大と重なったわけだ。

夏の甲子園は全行程でチームに帯同。同じ宿舎に寝泊まりし、試合はアルプススタンドから見守った。「彼らは日本一になると言ってましたが、正直どうなるかは分かりませんでした。なので、優勝した瞬間はめちゃくちゃ嬉しかったです。私も達成感がありましたね」と目尻を下げる。試合後、バス乗り場に引き揚げてきた選手一人ひとりとハグした時の感動は宝物だ。

吉岡氏は現在、札幌日大高校野球部や東洋大学ラグビー部、箕面自由学園高校チアリーダー部などでも指導。今回の慶応義塾高の優勝によって、SBTスーパーブレイントレーニングの認知度や重要性はより一層高まっていきそうだ。

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