朝6時前に判断
3日連続を含む、史上最多となる7度の順延(一部順延を含む。8月23日現在)となっている第103回全国高校野球選手権大会。当初、決勝は8月25日の予定だったが、休養日を2日つぶしても追いつかず、29日に行われることになった。
ここまで雨にたたられた大会は過去にない。途中でノーゲームにしたり、コールドゲームにしたりして、大会運営が批判されることもあったが、この雨天順延の判断、どのように行われているのか。
その日の試合をすべて順延させる場合、第1試合が始まる前の、朝6時前に判断されることが多い。朝6時のテレビのニュースで順延のお知らせを流してもらうためだ。もちろん、台風など、前日から荒天がわかっている場合は前日に判断することもある。
例えば、今年の開会式は順延となったが、台風9号の接近がわかっていたため、前日に順延の判断が下された。
気象情報会社が常駐
順延や開催の決断をするのは大会本部(主催者)だが、彼らは天候を予想する専門家ではない。そこで、大会本部には民間の気象情報会社が常駐しており、この後どんな雲がきて、どれだけ雨が降るのか、何時まで降るのかなどを説明する。それを大会本部が聞き、球場やグラウンドを整備する阪神園芸の意見も聞きながら、順延か開催かを判断する。
なので、基本は天気予報に従っていると言えるのだが、気象情報会社の見立てが必ずしも当たるとは限らない。ノーゲームになった1回戦の明桜―帯広農、近江―日大東北のように、予報では試合ができると思って始めても、そうならなかった試合もあるし、8月18日には雨で順延が発表されたものの、実際には雨があまり降らず、試合ができたかもしれないような時がある。
大会側の判断を批判するのは簡単なのだが、最新の天気予報に従ってもうまくいかないのだから、開催可否の判断は非常に難しいのである(土砂降りの中の大阪桐蔭―東海大菅生を試合成立まで引っ張ったことは別だが)。
30分おきに会議…異例の2試合だけ順延も
第1試合開始前に順延の判断をするより難しいのが、試合が始まってからの判断だ。
8月19日の試合は1回戦の近江―日大東北の5回途中で雨が強くなり、中断された。ここまではよくあることなのだが、その時点ですでに順延が6日となっており、日程的に余裕がない、大会側はどうするのか迷った。
できれば、近江―日大東北を再開したいが、午前中には雨がやみそうにない。一方で午後になれば、小雨になり、やむ可能性もあった。通常なら、全試合順延の判断になりそうだが、日程が苦しいために、簡単に順延とは言えない。
大会本部は時には30分おきに気象情報会社の予報を確かめながら、開催可否の判断をする会議を持った。ただ、予報の厳しさもあり、なかなか結論が出ず、何度も先送りになった。
結局、午後にやれる見通しがたったものの、第1試合の学校をそこまで待たせることはもちろん、第2試合の学校も待機時間が長くなるので、この二つの試合だけが順延になるという、今までになかなかない形の「一部順延」となった。
なお、この時はもともとの第3試合が15時から開始となったのだが、開始時間は雨のあがる時間の予報はもちろん、グラウンドを管理する阪神園芸の整備時間も考慮した上での時間である。
阪神園芸は楽天本拠地のメンテナンスや甲子園の蔦の管理も
その阪神園芸だが、雨にたたられた今大会の影の「主役」とも言える存在だろう。ネット上では「阪神園芸が整備しているところを放送してほしい」という声が上がるほどだった。
阪神園芸は1968年に設立され、1979年から甲子園の整備を担当している。同社のホームページによると、楽天の本拠地のクレー部分メンテナンス作業も請け負っており、甲子園の蔦の管理もしている。
2017年のプロ野球セ・リーグのクライマックスシリーズ、阪神―DeNAでその名を広く知られるようになった「職人集団」だが、メディアの間では以前から知られた存在だった。
高校野球やプロ野球のシーズンだけ仕事をしているのではない。毎年1月ごろからグラウンドの土を畑のように掘り起こしたり、季節に応じて配合を調整したりして、甲子園を最適な状態にしているのだ。
雨の状況によって、土の部分全体にシートをかける時もあれば、マウンドや本塁付近をシートで覆うだけの時もある。8月14日に第1試合がノーゲームとなった時の判断は後者だった。
この時はマウンドやバッターボックスの土をならし、マウンドや本塁にシートをかぶせたが、本格的な整備はしなかったという。その後振る強い雨が流れることで、泥がスパイクの穴を埋めることや、強い雨がたたきつけることでグラウンドを適度に固めてくれることを知っているからなのだ。
まさに職人技なのである。
※当初はほっともっとフィールド神戸の管理も任せていると記載していましたが、楽天本拠地の誤りでした。
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