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広島4位の愛工大名電・田村俊介は二刀流断念…もっと果敢に挑戦を

2022 2/3 06:00柏原誠
愛工大名電の田村俊介,ⒸSPAIA(撮影・柏原誠)
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ⒸSPAIA(撮影・柏原誠)

投打で高いポテンシャルも「打者スタート」決定

12球団が一斉にキャンプインした。個人的には「二刀流」の選手がどうキャンプを過ごすのか興味を持っている。本格的に投打で練習に励むのは今のところ日本ハム上原健太くらい。来年以降まだまだ増えていってほしい。

愛工大名電から広島にドラフト4位で入団した田村俊介外野手にも指名当初は二刀流の期待がかけられていた。本人もドラフト後には「キャンプで両方やらせてもらって、そのあと投手か、打者かという風になっていくんじゃないかと思います」と話していた。冬まで学校グラウンドで投打に練習を積んできたが、今年に入って「打者」でのスタートが球団方針で決定。バットで勝負することになった。

高校では最速145キロ、32本塁打という投打の柱で3年夏の甲子園に出場した。明徳義塾中から投打で注目。名電入学直後から投手として活躍し、1年夏に名門でエース番号をもらったことからも投手能力の高さは疑いようもない。

倉野光生監督も「投手としては(理想を言うと)もう少し上背がほしい、150キロほしいとなるが、投球のうまさ、相手を見ての投球などはすごいです。投手だけでも十分、プロにいけていたと思う。本当にすごい選手です」とセンスを高く評価している。

高校までは二刀流が当たり前なのに…

名電といえばイチロー氏。同氏は高校時代に「3番・投手」で甲子園に出場している。イチロー氏の投手としての能力は今さら言うまでもなく、話題になったオールスターでの登板や、メジャーでの登板経験も記憶に新しい。結果として打者として世界のレジェンドとなったが、投手としてプロ入りしていたらどうなっていただろうか…と想像を膨らませる選手だった。

同じように投打に才能あふれる田村について、倉野監督はうれしい悩みとばかりに話していた。「どちらかと言われたら打者かもしれないんだけど…。両方、見てみたいですよね」と言ったあと、素朴な意見として「日本ももっと二刀流やらせたらいいと思うんですけどねえ」と微笑んだ。

記者もかねて不思議に思っていた。高校までは当たり前の二刀流が、大学、社会人に進むと「打者」と「投手」どちらかの道に分かれていくケースがほとんど。思考停止して「高いレベルになるほど、両立は難しいのではないか」と短絡的に結論づけていた。

倉野監督は以前に比べて高校でも減っていた「投打の大黒柱」が、最近は少しずつ復活傾向にあるのでは、と感じているという。理由は不明だが、やはりエンゼルス大谷翔平の影響があるのだろうか。

「大谷くんが向こうで(二刀流を)やっていなかったら、日本でも二刀流を育てるという監督はあまりいなかったと思う。でも、日本の方がやりやすいですよね。大学野球や社会人は絶対やるべきだと思うんです。投手にも、打者にも、いい選手がいっぱいいるんだから」

日体大の矢沢宏太が投打でドラフト候補に

日本体育大の矢沢宏太が、DH制のある首都大学リーグで4番投手として出場。今秋のドラフトで「投打」とも上位候補となりそうなポテンシャルを見せている。大学生では珍しい事例だ。

「大学生は授業優先で練習時間が短いでしょう。そこまで練習が追いつかないんじゃないんですかね。DHだったら余計やりやすいですよね。守備をする必要がないんですから」と、同監督は私見を語ってくれた。

大学(とくに強豪大学)や社会人は高校に比べて人材が質量豊富。1人でも多くプロに送り出すことも大事なので、投か打に特化させた方が効率はいいのだろう。体への負担は否めず、リスクは生じるだろうが希望する選手のモチベーションにはなるはずだ。

可能性を早々につぶすのではなく「生かしていく」ことはできないだろうか。時代は変わり、常識は大谷によって壊された。アマのみならず、NPB球団のチャレンジに期待したい。

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