やっぱり本命の青山学院大学 追う昨年の王者の東洋大学
青山学院大学が本命視されることについて、「本当にその通りなのでしょうか」と書きましたが、その通りだと思います。3強の中では、少し頭が抜けた存在かもしれません。1月の箱根では1区から1度もトップを譲らない「完全優勝」をしました。その時の主力だった4年生は卒業しましたが、力はさほど落ちていません。大学三大駅伝の幕開けで、短い区間で争われる10月の出雲で優勝。各区間で20キロを走る箱根のタフさを持つだけでなく、スピードを兼ねそろえていることを証明して見せました。
全日本は出雲より距離が伸びる分、青山学院大学はさらに得意になることが予想されます。この大会のポイントは長い距離の四つの区間=1区(14.6キロ)、2区(13.2キロ)、4区(14キロ)、8区(19.7キロ)=をどう走るかにあるのですが、青山学院大学にはしっかりと駒がいます。
エースの一色恭志がどこを走るか
最も気になるのは、エースの一色恭志がどこを走るかということでしょう。6月の日本選手権5000メートルで学生トップの4位になるスピードを持ち、東京マラソンでも2時間12分を切るスタミナを持っています。単にタイムをよくするために机上で考えるなら、できるだけ長い距離、この場合だとアンカーを走らせた方がいいと思えます。実際、出雲では最も長い区間であるアンカーで優勝を決める走りを見せました。
ただ、ここで全日本のコースの特性を頭に入れなければいけません。1995年に早稲田大学のアンカー渡辺康幸が1分30秒ほどの差を逆転したことが有名ですが、起伏が少ないコースのため、例年は終盤の逆転劇があまりありません。昨年優勝した東洋大学が1、2区で流れをつくったように、普通は先行逃げ切りが有利なコースになっています(駒沢大学が得意とするパターンです)。
そのため、一色が序盤にまわる可能性は十分にあります。一色が序盤を走っても、東京マラソンを走った下田裕太や、関東インカレ2部のハーフマラソンで優勝した池田生成が控えています。逆にアンカーに回っても前半に適したスピードをもった選手もいます。いずれにせよ、青山学院大学が優勝に最も近い位置にいることだけは間違いありません。
青山学院大学の初優勝、今季の3冠を阻止する一番手として名が上がるのが昨年初優勝した東洋大学です。
「その1秒をけずりだせ」。こんなテーマで知られる東洋大学ですが、昨年の全日本は、まさにそのテーマ通りの走りで、各区間の最後にすさまじいスパートを見せ、頂点に立ちました。ただ、今季はいささか厳しいかもしれません。
エースの服部弾馬は健在です。その「イケメン」ぶりもあり、今年の大学駅伝界最大のスターである服部のスピードは武器です。ただ、昨年の3区で区間賞をとり、最優秀選手に選ばれた口町亮は9月に故障して影響で今回の全日本のエントリーから外れました。これは大きいです。櫻岡駿ら、力のある選手はいますが、やはり青山学院大学に比べれば力が落ちると言わざるを得ません。エースの服部がアンカーに回るよりも、序盤でリードを奪い、逃げ切る方が現実的な戦い方と言えるでしょう。
ライバルの2人は、元同級生なんです
さて、ちょっと話がそれますが、青山学院大学の一色、東洋大学の服部は、今年の大学駅伝のスター中のスターです。一色は京都、服部は新潟出身ですが、この2人、高校は同じです。それも、2人とも高校は二つ行っています。
高校野球で地元の代表と思って出身中学を見てみると、県外の選手ばかりだったということがありますが、高校の長距離界でも、そういうことはあります(高校野球ほどではありませんが)。一色も服部も「駅伝留学」で最初は強豪の仙台育英高校に通っていました。ところが、学校の経営陣と陸上部の指導者が対立してしまい、仙台育英の長距離の選手のほとんどが、愛知の豊川高に転校しました。それ以前から女子の強豪として名が知られていた豊川ですが、これで男子を一気に「補強」。2012年に一色、服部ら仙台育英組を擁し、初出場初優勝を成し遂げました。その時、服部は1区、一色は4区で、一色は区間賞を取りました。そんな2人が大学生のエースとなって戦うの今年の大学駅伝なのです。
話を優勝争いに戻したいのですが、3強のもう一つ、駒沢大学と、ダークホースについては、次回に。
(きょういち)