日本男子最重量級の金メダルは北京大会の石井慧が最後
パリオリンピックの柔道は7月27日に軽量級からスタートする。注目ポイントは多いが、そのひとつが男子100キロ超級の斉藤立(22)。言わずと知れた1984年ロサンゼルス、1988年ソウル両大会95キロ超級で金メダルに輝いた斉藤仁氏(故人)の次男だ。
前回の東京大会で日本は男子5個、女子4個の金メダルを獲得したものの、男子の最重量級に限ると金メダルは2008年北京大会の石井慧までさかのぼる。斉藤には日本柔道界の期待がかかっているのだ。
そして、斉藤の最大の強敵として立ちはだかるのが、地元の期待を一身に背負うテディ・リネール(35)。身長204センチ、体重150キロの巨漢で、世界選手権10度の優勝を誇るフランス柔道界のレジェンドだ。
2008年北京大会で銅メダル、2012年ロンドンと2016年リオデジャネイロ大会で金メダル、2021年東京大会で銅メダルを獲得し、東京では混合団体でも日本を破って金メダルに輝いている。
過去2度の対戦はいずれもリネールに軍配
斉藤とリネールは公式戦で2度対戦したことがある。初対戦は2023年5月のドーハ世界選手権。100kg超級準々決勝でぶつかり、ゴールデンスコア方式の延長戦に入ったが3つ目の指導を受けた斉藤の反則負けだった。
2度目の対戦は今年3月のグランドスラム・アンタルヤ大会。100キロ超級決勝で雪辱を期したが、優勢に進めながらも残り30秒で技ありを奪われ、返り討ちにされた。
リネールは柔道のオリンピック個人最多記録更新となる5個目のメダル獲得を目指している。金メダルならアトランタ、シドニー、アテネの60kg級を3連覇した野村忠宏に並ぶ個人3個目の偉業となる。
山下泰裕に一度も勝てなかった父・仁氏
斉藤の父・仁氏は1984年ロサンゼルス大会95kg超級で金メダルを獲得したが、当時の日本柔道のエースは無差別級で足を引きずりながら優勝した山下泰裕だった。斉藤は山下には8度の対戦で一度も勝てないまま、山下が先に引退。金メダリストになっても、満たされない斉藤の「最強」を目指す戦いは終わらなかった。
1988年ソウル大会。斉藤が出場する95kg超級まで、日本選手は誰一人、金メダルを獲得できていなかった。日本柔道の危機。悲壮感を漂わせた日本のエースはしかし、決勝でヘンリー・ストールを下して2連覇を達成。顔をくしゃくしゃにして、人目を憚らず号泣した。
どうしても勝てなかった山下への鬱積した思いをソウルでぶつけた父。今度はその血を受け継ぐ斉藤立が、いまだ勝ったことのないリネールを倒す番だ。
日本柔道の威信を守り抜いた父に続いて優勝すれば、柔道史上初の親子金メダルとなる。パリオリンピックの100キロ超級は8月2日。斉藤とリネールは決勝まで当たらない。世界が注目する頂上決戦が実現するか注目だ。
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