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ボブスレー、リュージュ、スケルトンの違い、最も速いのは?

2021 9/28 06:00田村崇仁
ボブスレーとリュージュとスケルトン,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

発祥はスイス・サンモリッツ、最速はリュージュ

そりに乗って氷上のコースを滑り、タイムを競うボブスレー、リュージュ、スケルトンの3競技は冬季五輪でスピード感とスリリングな展開を楽しむのが醍醐味の一つでもある。

近代スポーツとして発展したそり競技は19世紀半ばから後半、スイスのサンモリッツを休暇で訪れていた英国人が配達用のそりを遊戯用に改造したのが発祥とされている。

最もスピードが出やすいのは両脚を前にして仰向けに乗るリュージュで、唯一走ってスタートしないものの、コースによっては最高時速が150キロを超え、1000分の1秒単位で争われる。

日本勢は2018年平昌五輪でスケルトンのみ出場

日本勢は2018年平昌冬季五輪でボブスレー、リュージュとも出場できず、唯一出場したスケルトンは男女3人とも厳しい結果に終わった。

一方、日本に強化で後れを取っていた韓国は地元の平昌五輪で集中的な投資を行い、男子で尹誠彬がアジア勢初の金メダルに輝き、6位入賞者も出した。1998年長野冬季五輪で使われた国内唯一の拠点「スパイラル」が製氷を終え、日本は選手強化も大きな曲がり角を迎えている。

ボブスレーは「二刀流」も

ボブスレーは強化プラスチック製のそりで氷を張ったコースを滑り、タイムを競う。最高時速が140キロ前後に達することから「氷上のF1」と呼ばれる。

第1回冬季五輪から採用され、男子2人乗り、4人乗りと女子2人乗りがあり、2022年北京冬季五輪では女子1人乗りも初めて採用される。

「パイロット」が最前部に乗り、ハンドルでそりを操作。スタート時にそりを押して加速させる「ブレーカー」は、陸上競技出身者が転向して務めるケースも多い。勝敗のカギを握るのはスタートから50メートルのタイムとコース取り。タイムは100分の1秒まで計測し、わずかなミスも大きく響く。

ボブスレー

Ⓒゲッティイメージズ


4人乗りは選手を含めて重さ630キロまで、2人乗りは男子が390キロ、女子が325キロと規定されている。

冬季と夏季競技の「二刀流」の選手も多く、男子100メートルの元日本記録保持者の青戸慎司は1998年長野五輪4人乗りの代表として、日本男子で初めて夏冬の両五輪出場を果たした。日本女子ではソフトボールの高山樹里がボブスレーに挑み、スケルトンに挑戦した例もある。

仰向けのリュージュ

リュージュはフランス語で「木ぞり」の意味。仰向けでそりに乗って滑走する。最近は技術の進歩により、シャーレ(選手が寝る部分)は強化プラスチック製、刃に当たる滑走部のシーネが鉄製となっている。1964年インスブルック五輪で正式競技となった。

男子1人乗り、女子1人乗り、性別を問わない男女共通2人乗りと、2014年ソチ冬季五輪から採用されたチームリレーの4種目がある。チームリレーは女子1人乗り、男子1人乗り、2人乗りの順に滑走し、各1回の滑走により合計タイムで争う。ボブスレー、スケルトンより最高速度が速いとされる。

リュージュ

Ⓒゲッティイメージズ


スタートは座ったまま両手でグリップを握り、反動をつけて飛び出す。手袋についたスパイクで氷をかいて加速し、そりの先端を足首で挟んでコントロールするのが特徴。空気抵抗を少なくするため頭を上げず、前を見ない状態で滑る。危険性と隣り合わせの種目でもあり、過去に練習で死亡事故も起こっている。

腹ばいのスケルトン

スケルトンはそりの上に頭を前にして腹ばいとなり、氷上10センチ程度の状態で滑走。1500メートルほどの曲がりくねった氷のコースを滑ってタイムを競う。最高時速は130~140キロにもなる。

スケルトン

Ⓒゲッティイメージズ


長さ1メートル前後のそりはランナー(滑走部)や車台を中心としたシンプルな構造のため「骨組み」の意味を持つスケルトンが競技名になったとされる。

ハンドルやブレーキはなく、体の重心移動で操作する。1948年サンモリッツ五輪を最後に実施種目から外れていたが、2002年ソルトレークシティー五輪で復活した。

日本勢は越和宏が五輪に3大会連続で出場し、2002年ソルトレークシティー五輪では8位入賞したのが最高成績となっている。

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