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レスリングの審判員ってどんな人たち?審判員の役割や経歴

2016 12/16 20:07
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Photo by Tumar / Shutterstock.com

多くの選手を輩出しオリンピックではメダルラッシュもあったレスリング。レスラーが熾烈な戦いを行う中で、その勝敗を判定しているのが審判員たちだ。レスリングの試合で重要な役割を果たす審判員に焦点を当ててみよう。

レスリングの試合で審判が果たす重要な役割

レスリングの審判員は、マットチェアマン、レフリー、ジャッジの3人で構成されている。
レフリーの役割は、試合をルールに則ってきちんと運営すること。試合の中断やレスラーが使った技術の有効性、指によるポイント表示、フォールの確認、不適切な行動への警告や阻止など、即座の判断を要求される場面がとても多い立場だ。
ジャッジはレフリーとは異なりほぼその場を動かず、「スコアシート」にレスラーに与えられたポイントなどを記入する。また、ジャッジはフォールの確認をし、レフリーにフォールであることを伝えなければならない。レスラーが不適切な行動や反則をした場合でレフリーがそれを見逃した場合は、そのレスラーと同じ色の「ラケット」をあげて知らせる役割も担っている。
マットチェアマンはレフリーとジャッジの調整役だ。彼らの見解に齟齬が生じた時に初めて見解を示す。ただ、レフリーとジャッジの両方が誤った判定をした場合は、試合を中断させ3人で協議を行う。また、「チャレンジ」の際に行うビデオ検証にも参加する。

レスリングの審判員には国内の資格と国際資格がある

レスリングの審判員の資格には日本国内の資格と国際大会で裁ける国際資格がある。
日本国内の資格は日本レスリング協会の公認審判員としての資格で、C級からA級がある。C級は子どもたちの試合を、B級では高校生の大会を主に裁く。それ以上を裁けるのがA級審判員だ。
一方、国際大会の審判員には3級から1級があり、オリンピックで裁けるのは1級の審判員だ。国際審判員となるには日本レスリング協会の審判委員会から推薦をもらわないとならない。

レスリングの審判の服装。2015年、スーツからポロシャツへ

レスリングの審判員のユニフォームは2015年に新しくなった。ここでは、変更前のユニフォームと変更後のユニフォームについて紹介する。
2015年までのユニフォームはスーツとネクタイ。指定のロゴマークをつけた濃紺のジャケットとロゴマークをつけた黄色いネクタイが特徴的だった。このスタイルは審判員に威厳を与える一方、当の審判員としては「動きにくい」という難点があった。
2015年の変更後は、スーツからポロシャツになった。実際にポロシャツのユニフォームを着て審判をつとめた方からは高評価が出ている。やはり動きやすさが大切で、それがレフェリングのしやすさにもなっているようだ。
ユニフォームが変わっても共通しているのは、レフリーのリストバンド。右手首に青、左手首に赤のリストバンドをしており、これがレスラーのユニフォームの色に対応している。

オリンピックで審判員を務めた代表的な日本人審判員4人

1990年代に多くのオリンピックで裁いた審判員には、東俊光審判員や伴義孝審判員がいる。
東俊光審判員は国際レスリング連盟(当時)の審判委員会の重鎮であるとともに、アジア・レスリング連盟の会長だった。1960年から1988年のオリンピックの多くに参加している。
伴義孝審判員は1976年から1992年のオリンピックで審判員を務めた。関西大学の教授でもあり、レスリングの指導や審判の他に身体運動文化論や体育原理を専門としていた。
2000年以降では、芦田隆治審判員と齋藤修審判員がいる。
芦田隆治審判員は北京五輪とロンドン五輪で審判をしており、その他アジア大会や世界選手権などでも活躍している。
齋藤修審判員も北京五輪、ロンドン五輪で審判を務め、2016年のリオ五輪でも審判を務めた。世界レスリング連合審判委員会インストラクターであり、日本レスリング協会の審判委員長でもある。

どんな人がレスリングの審判員になるの?

どのような人たちがレスリングの審判員になっているのだろうか。
日本国内で公認審判員となっている人の多くは、もともとレスラーだった人が多いようだ。リオ五輪の審判員に抜擢された沖山功審判員ももともとレスラーであり、高校時代のインターハイで2位、1987年のアジア選手権で2位、日本体育大学1年生の時はフリースタイル48kg級の一年生学生王者となった。その後レスラーを引退し、教員になるとともに審判員になる。そして他の人たちより少し遅い40歳で国際審判員となった。
オリンピックなどの国際大会で裁いた経験を持つ多くの審判員が、高校教師としての職をもつ一方で、休日や有給休暇をつかって審判員の責務を果たしているという生活のようだ。

まとめ

国内外で盛んなレスリング。微妙な判定の時は必ずブーイングを受けることになる審判員だが、それでも本業と両立させながら休日を返上してその責務を務めているのだ。そんな審判員たちのレスリングに対するとても深い愛情が分かる。