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バレーボール男子日本代表・宮浦健人、成長示したポーランドからパリ五輪へ飛躍の道筋

2023 8/28 11:00米虫紀子
宮浦健人,ⒸJVA
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ⒸJVA

ネーションズリーグで46年ぶり銅メダル

今年7月まで行われたバレーボールの国際大会・ネーションズリーグで、男子日本代表が、主要な世界大会では実に46年ぶりとなる銅メダルを獲得した。

メダルをかけたイタリアとの3位決定戦は、1、2セットを日本が取ったが、その後、昨年の世界選手権王者に3、4セットを取り返され、試合はフルセットに。

3、4セット目は大差をつけられたが、第5セットの立ち上がり、いきなりオポジットの宮浦健人(パリ・バレー)が、サイドライン上にノータッチエースを決めた。

宮浦のこの日7本目となるサービスエースで一気に流れを引き寄せた日本が、エースで主将の石川祐希(パワーバレー・ミラノ)のスパイクや、宮浦、山内晶大(パナソニックパンサーズ)の連続ブロックなどで点差を広げ、第5セットを15-9で取り、銅メダルをつかんだ。

体格もジャンプ力もレベルアップした宮浦健人

ネーションズリーグの準決勝、3位決定戦は、西田有志(パナソニック)が腰の痛みのために欠場を余儀なくされた。昨年まで西田はオポジットで飛び抜けた存在だったが、今年はその西田を欠いても、宮浦が遜色のない存在感を発揮する。それは今の日本代表の大きな強みだ。

宮浦は昨年も日本代表に名を連ねていたが、今年ほどのインパクトは残せていなかった。しかし昨シーズン、ポーランドリーグのスタル・ニサでプレーし、今春日本代表に合流した時、体格もプレーも明らかに変わっていた。体の厚みが増し、ジャンプ力も、放つボールの威力も格段に上がっていた。

ポーランドでは出場機会に恵まれず、二枚替えやリリーフサーバーでの起用が主だったが、身長も技術も高い選手たちを相手に日々練習する中で、プレーの精度やジャンプ力の向上を実感していた。

ジャンプ力の向上は、強度の高いトレーニングと、毎日の練習の中でなんとか高さのある選手と渡り合おうとフルパワーで跳び続けた成果だと語っていた。

「本当にインテンシティの高い練習や試合を毎日してきたので。最初ポーランドに行ったばかりの頃はブロックの上から打たれるケースも多かったんですけど、それに適応しようとする中で、ジャンプ力も上がったのかなと思います。映像を見ても明らかに去年とは違いますし、自分の感覚も全然違う。世界に対してそれなりに渡り合える高さが出てきたのかなと思います」

ネーションズリーグ中も、高い打点から幅広いコースにスパイクを決め、「やっぱり高さがついたなと実感しています。周りからも言われるし、自分のフィーリングとしても。相手の見え方が違うし、打てるコースも本当に変わったなと感じる」と手応えを漂わせた。

もちろん海外でも試合に出場した方が得られるものは多いが、出場機会が少なかったとしても、高いレベルの中で、高い意識を持って日々練習を重ねればこれほどまでに成長できるのだと示した。

宮浦健人

ⒸJVA

ブラジル戦30年ぶり勝利に貢献

今年のネーションズリーグでは、日本は基本的に先発メンバーを固定しており、宮浦は二枚替えや途中出場での出場が多かったが、予選ラウンド第7戦で、待ちに待った先発出場。相手は世界ランキング2位(対戦前の時点)の強豪・ブラジルだった。

初先発の緊張で「最初はふわふわしていた」と苦笑する。

「この1年間で成長できて、自分のパフォーマンスは通用すると思っていたんですけど、久しぶりのスタメン出場で、迷いがあったというか、地に足がついていない感じでした」

第1セット終盤、日本はセットポイントを握るが、宮浦のスパイクがアウトとなり24-23と追い上げられた。

その時、フィリップ・ブラン監督は笑いながら、「自分を信じろ。自信を持ってやればいい」と宮浦に声をかけた。

自分を信じられるだけのことはやってきた。その後、徐々に自分を取り戻していった。

「最初は迷いがあって、ブロックを見過ぎて打ち出しがワンテンポ遅れている部分がありました。そうなると相手のミドルブロッカーがきてブロックが完成してしまうので、自信を持って、ここに打つと決めたら打つ。そういう気持ちで、途中からは打ち出しを早く、通過点を高くして長く打つことだけを意識してやりました」

セットを追うごとに迷いがなくなり、第5セットは勝負所でスパイクやサービスエースを決め、公式戦では30年ぶりとなるブラジルからの勝利に貢献した。

この勝利は日本にとって大きな自信となり、予選ラウンド10連勝、そしてファイナルラウンドでのメダル獲得につながった。

その後、日本代表は8月19日からイランで開催されたアジア選手権に臨み、決勝でホームのイランを破って、2017年以来3大会ぶりに優勝。準決勝ではカタールを相手に今大会初めてセットを奪われたが、途中からコートに入った宮浦が安定したプレーで逆転勝利に貢献した。

9月30日からは、今年最も重要視する大会であるパリ五輪予選が開催される。

今年、カギになる試合で重要な役割を果たしてきた宮浦が、五輪切符をかけた大舞台でも輝きを放つはずだ。

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