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もがき苦しんだ錦織圭の2019年を振り返る サーブの強化が急務

2019 12/11 11:00中村光佑
プロテニスプレーヤー錦織圭Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

苦しかった2019年

デビスカップと同時に終わりを告げた2019年のツアー。全仏から悩まされていた肘の痛みにより、錦織圭は全米以降全ての大会を欠場。そのため、年初のATPカップや全豪オープン復帰には暗雲が立ち込めている。

1月のブリスベン国際で、3年ぶりのツアー優勝した今シーズン。全豪でもなんとかベスト8までたどり着き、スタートは上々。全仏とウィンブルドンでベスト8の成績を残し、ナダル・ジョコビッチに次ぐグランドスラム5大会連続の8強以上進出を記録。

しかし、マイアミやモンテカルロなどマスターズの大会では4度の初戦敗退と、調子にムラがあるシーズンだった。昨年末には「大きな大会で優勝したい」と語っていただけに少々物足りないシーズンとなったようだが、2020年は肘治療からのカムバックに大きな期待が寄せられている。

サービスゲームの勝率とブレークセーブ率に課題

2019年は、苦しみながらも4大大会で成績を残してきた錦織。今年を含んだ過去5年分のスタッツを比較する。

錦織圭の2015-19年スタッツⒸSPAIA

出場試合数が少なかったことも影響しているが、2019年はサービスゲームの勝率やブレークポイントセーブ率の減少が見られる。特に今季は簡単に相手にブレークされてしまう場面が多かったためか、ブレークポイントセーブ率が60%を切っている。1stサーブ成功率は64%と、若干だが5年間で最も高い。だが、サービスゲームの勝率及びポイント獲得率は5年間で最も低い。

おそらく、錦織の弱点であるサーブの速度やプレースメントの甘さが影響しているのだろう。これは今後の課題の一つといえ、必須。しかし、チチパスやメドベージェフといった若手が台頭してきているため、ポイントを取るためのサーブの強化はなるべく時間をかけずに行いたいところだ。

錦織の生命線となるリターンゲームは、そこまで大きな差がない。シーズン終盤の大会をすべて欠場したにしても、416というブレークチャンス数から、強さに衰えが見られるとは考えにくい。しかし、相手にプレッシャーを与えることが難しくなってきていることも事実で、試合数を考慮しても、世界4位にまで上り詰めた2015年や2016年に比べるとブレークチャンスの数は減ってきている。ここ2年はリターンゲームの勝率も30%を切っているため、重要なチャンスを逃さずに数字を上げていきたいところ。

新コーチ招請でサーブ強化なるか

11月30日、ファンの元に大きなニュースが飛び込んできた。10月にダンテ・ボッティーニ氏との契約を解消した錦織が、新たにマックス・ミルヌイ氏をコーチとしてチームに入れることに決め、「サーブとネットプレーの改良をする」と宣言した。

「Beast(野獣)」の愛称で知られ、強力なサーブと巧みなネットプレーを武器とするミルヌイ氏は、ダブルスで6度のグランドスラム優勝を果たしている。IMGアカデミーでは錦織とともにトレーニングを積んでいたため、錦織を知り尽くす人物と言っても過言ではない。

また、錦織は「サーブの時の体の使い方を考え直す」とも話しており、スピードが出るサーブとなるべく肘に負担がかからないフォームの習得に取り組むようだ。ビッグタイトル獲得に臨むミルヌイ氏と錦織圭。多くのファンが注目している。