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チチパスのATPファイナルズ優勝はテニス世代交代の兆しか ジョコヴィッチらとの類似点も

2019 11/25 11:00橘ナオヤ
ATPファイナルズで優勝したステファノス・チチパスⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2年連続で21歳がATPファイナルズ制覇

2019年のATPツアー最終戦ATPファイナルズは、ステファノス・チチパス(ギリシャ)の優勝で幕を閉じた。初出場で初優勝したチチパスの21歳という若さは、昨年の優勝者アレクサンダー・ズベレフ(ドイツ)、2008年大会で初優勝したノヴァク・ジョコヴィッチ(セルビア)と同じ年齢だ。

2年連続で21歳の若手が優勝。これにより、いよいよ男子テニス界の世代交代が進むという見方が広がる。だが、彼らの前には大きな壁が立ちはだかっている。30代に入ってもなお衰えを知らない、”BIG3”ことロジャー・フェデラー(スイス)、ラファエル・ナダル(スペイン)、そしてジョコヴィッチだ。

今季、チチパスの勢いは目を見張るものがあった。ファイナルズ以外で獲得したタイトルは3つにとどまったものの、全豪やローマでフェデラーを、マドリードではナダルを、上海ではジョコヴィッチを下した。

また、ズベレフは2シーズン前にすでにATPランク3位でファイナルズ初出場を経験しており、22歳にしてファイナルズ3年連続出場を果たした。今シーズンは優勝1回にとどまるも、ランクは一時3位になるなど、シーズンを通してトップ10をキープしている。

既にBIG3に次ぐ存在感を示しているとはいえ、2人ともいまだ期待の若手の枠から抜け出せない。というのも、グランドスラムはジョコヴィッチとナダルが2つずつ分け合い、ATPランクも1年を通してこの2人が1位と2位を独占し、年間最終順位1位はナダルが手にした。フェデラーは一時トップ3から陥落したものの、1年のほとんどの期間で3位をキープした。グランドスラムやマスターズ1000の大会で彼らを倒しタイトルを獲らずして、世代交代はない。

フェデラー、ジョコヴィッチと類似点も

実は、現世界1位のナダルは、このATPファイナルズでの優勝経験がない。一方でフェデラーとジョコヴィッチは、それぞれ6回と5回、同大会で優勝している。フェデラーの初優勝は2003年で当時22歳、ジョコヴィッチは2008年で21歳だった。この2人と、ズベレフとチチパスには、ファイナルズ獲得時の環境に共通点がある。

フェデラーがATPファイナルズで初優勝した2003年は、彼にとって飛躍のきっかけとなるシーズンだった。初のグランドスラムタイトルであるウィンブルドンをはじめ6大会で優勝し、ファイナルズに出場。前年に続いて2度目の出場で優勝を果たし、年間最終順位はランク2位となった。ここからフェデラーのいわば伝説が始まる。翌2004年にはグランドスラムは3大会優勝を果たすのを皮切りに、4年連続でグランドスラム複数大会優勝。ATPランクの年間最終順位も4年連続で1位となった。

ジョコヴィッチがファイナルズで初めてタイトルを手にしたのは2008年。前年に初のトップ3入りとファイナルズ初出場を果たしていたジョコヴィッチは、2008年は全豪でグランドスラム初タイトルを取るなど3大会でベスト4入り。その勢いのままファイナルズでも優勝した。翌シーズン以降も16年まで年間TOP3以内をキープし続けた。

フェデラーやジョコヴィッチ、ナダルは、ベテランの域に入ってもなおトップを走り、そのキャリアは永遠に輝き続けるのかと錯覚すら起こす。だが、フェデラーが台頭してきた当時も、同様に倒すことなどできないような強力なベテランがいた。レイトン・ヒューイットやアンドレ・アガシ、フアン・カルロス・フェレーロだ。フェデラーはすぐに彼らをしのぐ圧倒的な成績を収めたわけではない、2、3シーズンかけて彼らとわたり合い、肩を並べ、そして抜き去った。

またジョコヴィッチが出てきた2008年前後には圧倒的ベテランの存在は少なかったが、フェデラーやナダルが中堅として、また同世代にフアン・マルティン・デルポトロやアンディ・マリーらが頭角を現していた。

ズベレフやチチパスが台頭してきた昨季と今季。トップ20以内にはベッレティーニやメドベージェフ、シャポワロフといった同世代の有望株がひしめき合い、さらに上位にはBIG3が君臨する。 これらの世代がBIG3を抜き去る時代がすぐそこまで来ているのかもしれない。