全豪テニスはビザ取り消しで国外退去
男子テニスの世界ランキング1位、34歳のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が新型コロナウイルスのワクチン未接種を巡って競技生活の窮地に立たされている。
1月17日開幕の全豪オープンでは大会4連覇と前人未到の四大大会21度目の優勝が懸かっていたが、オーストラリアの査証(ビザ)がワクチン接種の要件を満たしていないとして二転三転の末に取り消され、国際政治を巻き込む騒動を経て国外退去となったばかり。
ところが今度は四大大会の次戦、5月22日開幕予定の全仏オープン(パリ)でも同じトラブルに直面する可能性が出てきた。
フランスの地元メディアによると、マラシネアヌ・スポーツ担当相がワクチン証明を義務付ける新法が適用されると公表。新法はスポーツ・イベント会場や飲食店、長距離列車で、ワクチン接種証明の提示を求める内容で、新たに導入されたワクチン接種証明書の法律は「観客、プロ選手の双方に適用。フランス人、外国人を問わない」とスポーツ選手ら全ての参加者に適用となったためだ。
新型コロナの感染状況で今後規制が緩和される可能性もあるが、現段階での法律では全仏出場にはワクチン接種が義務。昨年の全仏オープンで男子シングルスを制したジョコビッチは出場できないことになる。
全米オープンもワクチン条件で出場困難?
失意の世界王者ジョコビッチはオーストラリアを離れ、ドバイ経由で母国セルビアに帰国。空港では、地元ファンが国旗を持ち、歓迎したという。
だが周囲の状況は厳しさを増すばかりのようだ。3月には四大大会に次ぐ規模の2大会が米国で開催されるが、米国は現時点で入国にはワクチン接種が義務。英メディアによると、四大大会の全米オープンも「ワクチン2回接種が条件になる」と報じられており、現状では出場が極めて困難な見通しになっている。
芝のウィンブルドン(英国)は現時点では「10日間の隔離」で出場できる見込みだが、今後の感染状況次第で他国と足並みを揃える可能性もある。
食生活や繊細な一面、ナダルはワクチン推奨
ピザレストランを営む両親に育てられたジョコビッチは、小麦を避ける「グルテンフリー」の食生活に変えてから絶対的な強さを取り戻してきた過去がある。日本でも本を出すほど、その繊細な食生活や肉体づくりは有名だ。
体内に摂取する物質には人一倍神経を使う傾向があり、トップ選手としてワクチン接種には慎重な考え方を貫いている可能性もある。
海外メディアによると、ジョコビッチの国外追放を受け、セルビアのブルナビッチ首相は「オーストラリア裁判所の判断は恥ずべきだ」などと批判。セルビアテニス協会は「茶番だ」「政治がスポーツを打ち負かした」などと指摘し、ジョコビッチの家族も声明で「非常に落胆した」と訴えた。
一方、トップ選手のラファエル・ナダル(スペイン)はジョコビッチの状況に同情しつつも「ワクチン接種すればプレーできるということは明確」と自身の考えを述べている。男子テニスツアーを統括するATPは「最終的には公衆衛生に関する法的機関の決定が尊重されなければならない。彼が全豪を欠場することはテニス全体にとって大きな損失だ。引き続きすべての選手に対してワクチン接種を強く推奨する」との声明を出した。
四大大会21勝の新記録を見据える世界王者にとって、競技生活を続けていく上でワクチンを接種するか終息を待つか、その選択肢は多くない。思わぬコロナ余波でテニス界全体も揺れている。
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