力水とはなにか?
土俵下で待機していた力士は呼出に呼ばれて土俵に上がると、端でひしゃくの水を渡されます。渡された水で口をすすいだ後に吐き出しますが、この水が「力水」。
一連の行為が「力水をつける」ということになります。これは土俵に入る前に水で体を清めるという意味合いを持っています。
土俵に入る前に塩をまくのも同様です。力水のことは「清めの水」、塩のことは「清めの塩」と呼ぶこともあります。これらが許されるのは十両以上の取組からとなっています。
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大相撲の取組の前には「力水をつける」ということが行われています。神聖な儀式のようですが、実際はどのような意味があるのでしょうか。 今回は大相撲ファンならぜひ知っておきたい「力水」について解説していきます。
土俵下で待機していた力士は呼出に呼ばれて土俵に上がると、端でひしゃくの水を渡されます。渡された水で口をすすいだ後に吐き出しますが、この水が「力水」。
一連の行為が「力水をつける」ということになります。これは土俵に入る前に水で体を清めるという意味合いを持っています。
土俵に入る前に塩をまくのも同様です。力水のことは「清めの水」、塩のことは「清めの塩」と呼ぶこともあります。これらが許されるのは十両以上の取組からとなっています。
土俵の隅には東と西にわけて、清めの塩や力水が準備してあります。そこには呼出も待機していて力士のフォローをしてくれます。力水は水桶に入っており、ひしゃくを使って力士に渡します。力水をつけるのは東西それぞれ直前の取組で勝利した力士に任されます。
そのため勝った力士は土俵下で待機、負けた力士はさっさと帰るという光景が見られるわけです。渡される側は片膝を立てるか蹲踞(そんきょ)の姿勢で受けて一口だけ口に含んで口をすすいだ後、次に渡される力紙で口元を隠しながら水を吐き出します。
力水をつける力士は直前に勝った力士が努めますが、例外的な場合もあります。基本的に負けた力士はつけられないため、前の取組で負けが続くと力士がいない場合もでてきてしまいます。その場合は仕方がないので次の取組の力士がつけます。
十両、幕内の最初の取組に関しても同様に次の力士がつけています。逆に最後の方も例外が適用されます。結びから2つ前の取組で勝った力士は次の力士に力水を付けた後、帰らずに待機します。これを「勝ち残り」とよび、力水を付けた力士が負けた場合は結びの一番でも力水をつけることになります。
力水というからには神聖な水が使われているイメージがありますが、実際に使われている水は普通のミネラルウォーターです。現在この水は福岡県の米菓製造会社「もち吉」が無償で提供しています。
1991年に地元で巡業が開催されたのに喜んだ社長の心意気によって、1992年春場所から無償での提供が始まりました。提供されているのはその名も「力水」という商品で、自然豊かな福智山山系の地下水をくみあげたおいしいミネラルウォーターです。観客にも無料配布されているので飲んだ方も多いはずです。
現在では力水は最初の一回だけつける形で定着していますが、これの始まりとなったのが名横綱・双葉山関からであるとされています。それまでは仕切り直しのたびに力水をつけることも多かったようですが、双葉山関は「あまり無駄なことはしたくない」と簡略化したそうです。
「死を覚悟してのぞむ前の水盃だから一回だけでいい」というような話も広まっているようですが、双葉山関本人はそこまで考えていなかったようです。他には初のアフリカ出身力士となった大砂嵐関が初めて十両での取組を迎えた際に、緊張のあまり力水をごっくんしてしまうというエピソードもありました。
使われている水が普通の水というのは意外でした。しかし、厳かに行われる儀式というのは見ていて気持ちがいいです。観戦する際には、力水をつけるために残ったりする力士たちの動きにも注目すると面白いですね。
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