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「カタルーニャの誇り」バルサのソシオはテクノロジーと融合するか

2019 10/10 17:00Takuya Nagata
バルサのソシオは電子投票導入を否決したⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

バルサのソシオが選挙の電子投票導入を否決

FCバルセロナは、10月6日に年次総会を行い、今年一番の争点だったオンライン投票の導入を見送る決定をした。FCバルセロナ次期会長候補のビクトル・フォンテ氏の提案には5000人もの会員の署名が集まったが、必要とされる投票3分の2まで、わずかに届かなかった。

会長選にも電子投票を導入するように求めたことで、会場となったパラウ・ブラウグラナ(本拠地に隣接するアリーナ)での議論は熱を帯びた。導入するためには少なくとも417票の賛成票が必要だったが、投票結果は賛成359票、反対173票、棄権67票。これにより、2021年の会長選ではオンライン投票を行わず、従来どおり投票のために足を運ぶことになる。

ソシオは単なるファンクラブではない

バルセロナのソシオは、単なるサポーター会員制度ではなく、実質クラブを所有し、運営を行う組織だ。

会員になるには、原則としてカーネット・デ・コンプロミス(コミットメント・カード)を取得した3年後に正規会員に申請できる。15歳未満の場合は、家族に会員がいるか、入会2年経過に条件が緩和される。正規会員になると、チケット購入の優先権や投票権を得ることができる。

最近のカーネット・デ・コンプロミスの会員登録料は108ユーロで、年会費は141ユーロだ。一方で、ソシオ正規会員の会員登録料は138ユーロで、年会費は184ユーロとなっている。したがって、特別、裕福ではなくても、運営に参加できる。

スペインで、非営利スポーツ団体ソシオによるクラブ運営を採用するのは、他にレアル・マドリー、アスレティック・ビルバオ、CAオサスナがある。

会員の負担軽減も地域性薄まる可能性

仮に電子投票が実現した場合、当然ながら会員の負担は軽減される。しかし、それだけではなく、クラブの決定にも多くの影響を及ぼすことが考えられる。

投票所になるのはバルセロナ市内にあるパラウ・ブラウグラナ。つまり、遠方に住んでいる人は、投票に行くのは非常に難しい。もちろん今回の投票も実際に出向く必要があった。これを仮にオンラインで投票していたら、おそらく電子投票導入は決まっていただろう。

現地投票を義務付けている現在、クラブの決定は、事実上、生粋のバルセロナ市民が握っていることになる。オンライン投票ができるようになれば、遠方からも投票してクラブ運営に参加できるため、ソシオの会員数は増え、投票率も高まるだろう。会員の運営参加が増えることで、関心はより一層高まる。

その一方で、スペイン全土、全世界の会員が投票に参加できるようになると、バルセロナという地域性が薄らぐ可能性もある。FCバルセロナが本拠地を置くカタルーニャ州は独立運動が盛んで、バルサはカタルーニャ人の誇りとアイデンティティの象徴でもある。だが、カタルーニャ州の出身ではないファンにとっては、これはさほど重要ではなく、魅力的なサッカーをすることの方が求められる。

また、FCバルセロナの歴代の会長は郷土愛を強調する人物が多いが、将来的にはクラブの会長の信念や方針が変わってくる可能性もあるだろう。例えば、カタルーニャ独立主義にそぐわなくても意に介さず、巨額の資金をもたらすスポンサーと契約し、より強いチームづくりを目指すかもしれない。

オンライン投票は、クラブの視野やファンの裾野を広げることになる一方、バルセロナの地域性が弱まる可能性があるのだ。

オンライン投票採用なら明確なビジョン必要

テクノロジーは、世界中であらゆるものを変えているが、近い将来、ソシオの運営にも大きな影響をもたらすのではないだろうか。

選挙に電子投票を採用しているエストニアは、行政へのテクノロジー導入に積極的なことで知られる。経済振興や効率化はもちろんだが、大国に挟まれた小国で、たとえ領土が奪われても、バーチャルに国家を維持し続けるという意図もあると言われている。

FCバルセロナが今後、どのようなビジョンを持って、オンライン投票を採用するのか、あるいはしないのか。今後の議論にも注目だ。

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