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「闘犬」ガットゥーゾ 名門ミラン復活を期す

2018 5/1 13:06dai06
ガットゥーゾ
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ミランに欠けていた求心力

2011-12シーズンを最後にACミランが築き上げてきた黄金期は終演を迎えた。翌シーズンからはリーグ制覇の立役者であったズラタン・イブラヒモヴィッチやチアゴ・シウバを、国外へ売却せざるを得ない緊縮財政へと舵を切った。当時ミランの選手だったガットゥーゾもこのシーズンの終了を機にミランを退団している。

その後のミランは悲惨だった。獲得した選手は数知れないが、多くの選手は結果を出せない状況が続く。当然ミランの調子も上向かず、フィリッポ・インザーギやクラレンス・セードルフらレジェンドがチームの指揮を執ることとなるが、それでも結果は出なかった。

しかし、ガットゥーゾが就任した今、そうしたミランの機運は変わりつつある。インザーギやセードルフにはなかった、ミランが必要としていた求心力が、「闘犬」、「リーノ(唸り声)」の愛称で親しまれたガットゥーゾにはあった。

テクニカルエリアで試合の行く末を睨みつけるように眺めるその様は、熱かった選手時代と全く変わらない。監督就任後初めてのホームゲームとなった第16節ボローニャとの一戦では、退場者を出しつつも2-1で勝利。試合後に笑顔で選手たちと円陣を組み、喜びを分かち合うその姿は、常に選手と一緒になって戦っているのだという気持ちが伝わってくる。

ガットゥーゾが求めるミランのプレースタイル

ガットゥーゾが現在のミランに敷いているプレースタイルの基盤には、決して手を抜かない「ハードワーク」がある。これまでのミランの中盤は相手のパスコースをつぶすことができず、相手の攻撃ルートに多くの選択肢を与えてきた。しかし、ガットゥーゾがやってきてからは、徹底したプレスとエリアのカバーによって、そうしたルートを絞ることが可能になった。ガットゥーゾが選手時代に行っていたことは、後輩達に受け継がれたわけだ。

また、ジャンルイジ・ドンナルンマ、レオナルド・ボヌッチ、ジャコモ・ボナベントゥーラといった、サポーターらが期待してきたイタリア人主体のサッカーを作り上げることにも成功している。ミランの復活はこうした自国選手の活躍が1つのカギとなるに違いない。

選手とサポーター双方の心を掴んだガットゥーゾの指示で行われるハードワークは非常に精度が高く、サボる選手がいない。2017年夏に高額な移籍金を支払い獲得した得点源、アンドレ・シウバの攻撃力が戻ってくれば今のミランはもっと強くなる。同じく獲得に大金を要したチャルハノールは、ガットゥーゾの下で感覚を取り戻した。

ハードワークによって取り返したボールを、チャルハノールが左右もしくは前に速いスピードでパスを配給していくことで、攻撃を加速させる。「堅守速攻」、ガットゥーゾのミランが目指しているのはこれだ。

好調のスソと気になるドンナルンマの去就

ドンナルンマ

Photo by bestino/Shutterstock.com


ガットゥーゾの下で目覚ましい成長を見せているのが、スソだ。中央でもプレーできるスソだが、ガットゥーゾが就任してからはサイドを主戦場とすることが増えてきた。その市場価値は今や3500万ユーロ(約46億円)は下らないとされ、現在のミランに欠かせない存在となっている。

サイドから切り込むドリブルは相手のディフェンス陣を脅かすだけでなく、味方選手のプレースペースも生む。利き足の左足から繰り出されるシュート、その左足と遜色なく使える右足からのクロスも精度が高い。まだまだ攻撃力が不足するミランにとっては、スソと他の選手とで実現する崩しが重要な得点源だ。

彼が2022年までミランと契約延長したことは、クラブとサポーター達にとって大変明るいニュースといえる。信頼できる監督ガットゥーゾの下で彼はさらに輝きを増すはずだ。

選手の去就で懸念点があるとするならば、それはジャンルイジ・ドンナルンマだろう。サポーターから「金の亡者」といわれながらも契約を延長したドンナルンマだが、その去就は未だに定かではない。まだ若いドンナルンマだが、イタリアはおろか世界を代表するGKに成長することは間違いない。そんな彼を狙うクラブは数知れない上に、代理人のミーノ・ライオラはサッカー界では有名な曲者の代理人だ。

おそらくはガットゥーゾの下でミランがどれだけ結果を出せるか、ドンナルンマがそれに満足できるかが去就を左右する。今後のガットゥーゾの手腕、ミランとドンナルンマの行く末に注目が集まる。