48年ぶりトップリーグで首位
ロイヤル・ユニオン・サン=ジロワーズ。聞きなれないこのクラブが今シーズン、ベルギーリーグを席巻している。
今夏、川崎Fからプレミアリーグのブライトンに移籍したMF三笘薫が英国の労働許可証が下りないため、レンタル移籍という形で同クラブへやって来た。
過去11度リーグ優勝経験のある名門だが、トップリーグは実に48年ぶり。近年は3部リーグまで経験していたという。降格候補の筆頭と見る向きもあったが、予想に反し14節終了時点で多くの強豪クラブを差し置いて首位に立っている。
最大の強みはリーグ最多を誇る得点力で、ウンダヴとヴァンザイルの2トップはともに得点ランキングの上位につけている。一方で守備陣もルクセンブルク代表GKアントニー・モリスを中心にしのいで、失点もリーグ最少。攻守がかみ合っており、この順位にふさわしい盤石の戦いを見せているといった印象だ。
ビッグクラブ隆盛の現代サッカー界にあって、このような伏兵の躍進はリーグ戦を面白くしてくれる明るいニュースであるが、後半戦に向けて、手放しで喜んでばかりいられない様々な事情がある。
いつの時代も伏兵が躍進するときには「本命」と言われているチームは苦戦を強いられていることになる。今季のベルギーリーグはまさにそうなのだが、その要因の一つとなっているのが、他ならぬ日本人選手のプレーの低調ぶりだ。
三笘と森岡亮太の3得点が日本人最多
現在同リーグでは9人の日本人がプレーしているが、FWが点を取らなければ、なかなか個人としてもチームとしても調子が上向いていくことはない。これだけの選手がプレーしていながら、得点ランキングで日本人最多がシャルルロワの森岡亮太、そして三苫の3得点とは寂しすぎる数字だ。しかも彼らは純粋なCFタイプの選手ではない。
現在W杯アジア最終予選で苦戦が続く日本代表だが、「永遠の課題」と言われるのが得点力不足だ。
解消には個のレベルアップが不可欠。ベルギーリーグのレベルはCLでの惨状を見れば分かるように決して高くない。国内リーグで得点を挙げることができないようであれば、自クラブでも、代表でも、チームを救うことはできない。
昇格クラブの首位快走は残念ながら日本人選手の不振を明らかにしてしまった感があるが、まだシーズンは半分以上残っている。彼らの巻き返しに期待したい。
今後の優勝争いに注目
他方、リーグ最多優勝を誇るアンデルレヒトなど名門クラブもこのまま黙ってはいないだろう。そしてそれはシーズン後半戦、ロイヤル・ユニオンにとって最大の脅威だ。
何しろ、約半世紀ぶりのトップリーグだ。優勝はおろか最近まで下部リーグでしかプレーの経験がない選手たちばかりなのだ。終盤が近づくにつれ「追われる者のプレッシャー」に苛まれることだろう。
たとえタイトルを勝ち取ることができなかったとしても、ここまでの活躍だけでも十分に称賛に値する。謙虚な気持ちを胸に戦い続けることができればビッグサプライズを我々に提供してくれることだろう。また、冬の移籍市場でピンポイントの補強を施すことができるかにも注目だ。
シーズン後半戦、彼らの動向と日本人選手の復調、ベルギーリーグから目が離せない。
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