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VAR元年に向けて知っておきたいこと

2020 1/22 06:00中山亮
VARⒸMisterEmil/Shutterstock.com
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ⒸMisterEmil/Shutterstock.com

VARとは何か

VARとはビデオ・アシスタント・レフェリーを略したもの。レフェリーが主審。アシスタント・レフェリーが副審。そしてビデオ・アシスタント・レフェリーなので映像を使って主審をサポートする審判員。仕組みの名称ではなく審判員の役割の名称である。

その役割は判定のはっきりとした明確な間違いや重大な見落としを見極め、主審をサポートすること。昨季の浦和対湘南戦で起こった「ゴール見落とし」のような事例を無くすため、1年前倒しで2020年からの導入することになった。

【VARが介入する場面】
・得点か、得点ではないか
・PKか、PKではないか
・退場か、退場ではないか(2枚目のイエローカードは対象外)
・警告退場の人間違い

この4つの場面で起こった「はっきりとした、明白な間違い」や「見逃された重大な事象」に限定されている。

VARが介入する場面が起こった時の流れ

原則としては、VAR側から主審へ交信。そして、主審によって2つのジェスチャーが行われる。

「片方の耳に指を当て、もう一方の腕を伸ばす」は、VARと交信中であることを表すジェスチャー。VARが主審と交信する必要があると判断した際に示される。「指でTV画面の四角形を表す」は、「はっきりとした、明白な間違い」もしくは「見逃された重大な事象」と主審が判断した場合にVAR介入を表すジェスチャーである。間違えてはいけないのは、「主審は従来どおり判定を下し、VARはあくまでサポート」であるということだ。

VAR介入となった場合、2種類の流れになる。「オンフィールドレビュー」(主審がTVモニターで映像を確認)と「VARオンリーレビュー」(画面で確認するのはVARのみで、主審はVARからの情報を聞く)があり、ゴールラインを割ったかどうかやオフサイドかどうかなど、客観的な事実に基づく判定や主審の判断の確認だけであれば、主審が映像を見る必要は無いため「VARオンリーレビュー」となる。

そのため、先日のUAFC U-23選手権グループステージ3戦目で起こったPK判定の場面で解説者は、主審がVAR介入を表すジェスチャーをしたが「オンフィールドレビュー」が行われないことを批判していたが、「オンフィールドレビュー」を行わないこと自体には何の問題も無い。そして、このレビューが行われた後に主審はもう1度「指でTV画面の四角形を表す」ジェスチャーをし、判定を行う。もちろんVARの介入があったとしても、当初の主審の判定が変わらない場合もある。

VARの導入で気をつけなければいけないこと

2018年のワールドカップロシア大会以来、ヨーロッパの各国リーグでも導入されているVAR。J1でもいよいよ2020年から導入されることになるわけだが、観客からすれば昨季ルヴァンカップ決勝で川崎Fの谷口が退場した時のように、何が起こっているのかわかりにくいはず。

それは、昨年のラグビーワールドカップのTMOのようにスタジアムの大画面で映像を再生することなく、アメリカンフットボールのように(審判員がマイクをつけていなかったため)反則の理由を説明しなかったからだろう。

Jリーグ副理事長でもある原博実氏は運用に関する課題を把握しており、発言もしている。より観客にわかりやすいシステムへの改善を望みたい。

また、現時点でプレー面への影響もある。

例えば、先日のAFC U-23選手権グループステージ3戦目。カタール戦で田中碧がレッドカードを受けた場面。当初は田中のナイスタックルかと思われたが、VARの介入によりレッドカードが提示された。タックルした時にスパイクの裏が相手の足にあたっており、これが危険なプレーとみなされたのだ。

さらに、この大会で日本は3試合で3度PKを与えている。これはワールドカップロシア大会でも指摘されていたことだが、従来、接触は「どの程度の強さだったか」「どの程度、プレーに影響を与えたのか」を考慮し判定されていた。しかし、スローや一時停止を繰り返し、映像で確認するとなると、どうしても「接触があったかどうか」に注目してしまう。

VAR元年となる2020年シーズン。今季は「選手やチームがVARに対してどう対応するのか」も問われることになりそうだ。