山口のプレッシングに苦しむも
2月22日にフライデーナイトJリーグとして一足早く開幕戦を飾るセレッソ大阪。その開幕戦まで1週間をきった2月17日にJ2レノファ山口とプレシーズンマッチを行うも敵地で1-0の敗戦。山口が行う高い位置からのプレッシングに苦しむ場面も多く、カテゴリーが下の相手から1点も奪うことができなかった。
しかし試合後にロティーナ監督が「試合に負けたので満足はできませんが、我々にとって、とてもいい試合になりました」と語った様に、決してネガティブなだけの試合では無かった。
この試合は、柿谷がコンディションの問題でメンバー外となったが、現在のほぼベストメンバーともいえる形で4-2-3-1の布陣をとってきたC大阪。
しかし試合の立ち上がりは、今季から取り入れているGK、最終ラインから丁寧にパスを繋いでいくビルドアップが4-3-3の布陣で3トップだけでなく2人のインサイドハーフまで積極的に高い位置からプレッシングをしかけてくる山口にうまくハメられてしまい思うようにボールを前進させることができなかった。
カテゴリの違いもあり個の力ではC大阪が上回っている部分があるため、簡単にボールを失うということは無いのだが、パスを出してもボールを前進させることに繋がっておらず手数がかかり過ぎていた。
しかし、前半中盤以降は徐々に山口のプレッシングを逆手に取るようなボール運びも見られるようになり、前半の終盤には山口がプレッシング時の形を4-4-2へと変えざるを得ない状況に。後半には失点もあったが、終盤にはいくつかチャンスも作っている。
理論的なロティーナのサッカー
東京Vでもそうだったが、ロティーナ監督のサッカーは理詰めだ。
例えば、GKのキム・ジンヒョンがボールを持っている時はCBの2人が大きく開いたポジションをとる。そしてCBの前にはSBがおり、その前には前線の4人という形を常に作っていた。
これに対して山口は高い位置からプレッシングで選手を捕まえにくる。
そうなるとC大阪はCBを助けるために守備的MFが下がる。山口がプレッシングを続けると下がるMFに対しても新たに選手がついていくことになるのだが、そうなるとちょうどピッチのど真ん中に敵も味方も誰もいないポッカリと空いたスペースが生まれる。このスペースに前線の選手が下がってきたり両サイドの選手が中に入ったりして基点となり、さらにこれに対応しようとすると芋づる式に前線に新たなスペースができてしまうのだ。
この試合でも同じ状況を作り上げようとする動きは見られた。
必要なのは判断力
ただしこの形を活かすために必要なのはピッチ内の選手の判断の精度と速度。ボールの状況、相手の状況を把握し、優先順位を整理し、判断を行う必要がある。
現段階のC大阪はまだこの部分が発展途上。プレッシングの場面一つをとっても、相手のプレスを逆手にとったボール運びをするまでに20分ほどの時間を擁し、さらに山口が中盤のスペースを嫌がり、プレッシングの形を4-3-3から4-4-2に変えたことへの対応にも時間がかかっていた。
その他の場面でも同じ。パスを右足で蹴るのか左足で蹴るのか。もしくはドリブルで持ち出すのか。理詰めのポジショニングで優位性を作ろうとする戦術なので判断力こそが大きなポイントとなる。この日無得点に終わったアタッキングサードでの場面も同様だ。
そして判断力を向上させるのは実戦をおいてほかにない。キャンプではここ数年では見られないほどの練習試合を組んだのも判断力を向上させるためだろう。
s
怪我人が多いという計算外の部分はあるだろうが、この試合では清武が今季のプレシーズンで初めて実戦復帰というポジティブなニュースもある。
現段階ではチームで取り組もうとしている戦い方の骨格ははっきりと見ることができ、判断力をさらに高めるだけというところまで落とし込むことができている。結果的には格下に敗れたという今回のプレシーズンマッチだったが、内容的には新生C大阪に期待を感じさせるものだった。