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「不世出の3年連続J1スプリント王」前田大然が欧州へ殴り込み?

2021 12/20 06:00小林智明
横浜F・マリノスの前田大然Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

23ゴールで2021年得点王

2021年J1リーグで自己最多の23得点を挙げ、レアンドロ・ダミアン(川崎フロンターレ)と並び得点王に輝いた前田大然(横浜F・マリノス)。24歳での得点王のタイトル獲得は、02年の高原直泰(当時ジュビロ磐田)らの23歳に次ぐ若さであり、今年は東京オリンピック代表、A代表にも選出されるなど、まさにブレイクスルーを果たした。

その前田の代名詞といえば、50m5秒8を誇るスピード。スピード=走りにつながるが、走りを可視化するデータとして、メディアでよく取り上げられているのが、「スプリント回数」だ。時速24㎞以上(50m7秒5以下)で1秒以上走るとカウントされ、要するにダッシュした本数=スプリント回数と言える。

J1試合別スプリント回数トップ5


表の通り、前田は19年シーズンより3年連続で、試合別スプリントランキングで1位に輝いた。それだけでも圧巻だが、3年間のトップ5の計15枠内が前田の名前で8枠も占められている。

2番目に多いのは、19年3位・20年5位の藤春廣輝(ガンバ大阪)の2枠のみ。コンスタントに多くのスプリント回数を叩き出すことが、いかに難しいかが読み取れ、前田の凄さが際立つ。

圧倒的な初速の速さと、何度でもダッシュを繰り出せる驚異的な筋持久力が、希代のスプリント王には備わっているに違いない。

松本山雅時代から見出された走りの才能

19、20年シーズンのスプリント回数を比較すると、J1復帰1年目の松本山雅FCに所属した19年のほうが当時ディフェンディング・チャンピオンだった横浜FMへ移籍した20年よりも回数、ランク登場数共に多い(19年夏からポルトガルのマリティモで1シーズンプレー)。

19年に松本を率いた反町康治監督は、前田の特徴について「推進力を前に向かうだけでなく、プレスやプレスバックにも使える」と話していた。攻守に脱兎のごとく駆け回り、チームに貢献するスタイル自体は、横浜FM移籍後も変わらない。ただしポジションが変わった。

松本時代はシャドーストライカーなど中央のFWを務めたが、横浜FMでは左ウイングに初挑戦。タッチライン際で攻守に奮闘するも一人で打開できるタイプではないため、サイドでボールを受けても手詰まり感があった。

また、シーズン途中にシステム変更でシャドーの位置を任されるも、戦術にフィットし切れず、「パスをもっと引き出すこと」(前田)を課題に挙げている。20年は3得点止まり。21年の大爆発は正直、予想できなかった。

移籍決定ならセルティックでも暴れる可能性大

21年シーズンは、8月15日に行われた真夏の大分トリニータ戦で、64回のスプリントをマーク。これはトラッキングデータがJ1リーグに導入された15年以降の最多記録だ。

この試合に留まらず、試合別スプリント回数のトップ10の中で5位と10位以外の8つの順位に名を連ね、年間累計スプリント数は1457回と前人未踏の新記録を樹立した(2位は16年、当時湘南ベルマーレの高山薫の1127回)。

ポジション自体は、20年と同じく左ウイングが主戦場だった。そのなかで、「去年はサイドに張ってプレーしていたけど、今年は中にどんどん入っている。それがうまくハマっていると思う」(前田)と自分の“居場所”を見つけ、周りの選手も彼の動きを理解。サイドに縛り付けずに自由にプレーさせた結果、本来の走りを呼び覚まし、驚異のスプリントが得点に直結した。

その証拠に大記録のスプリント64回の大分戦と、同じく55回のFC東京戦では共にハットトリックを達成。また、試合別スプリント回数のトップ20中、前田はランクインした16試合の合計で15点を叩き出した。

つまりスプリント回数は、前田の調子を示すバロメーター。前へ走れば走るほど、得点力が増す傾向にある。

横浜FMも、21年のチーム平均スプリント回数が211回とJ1で1位の座を掴んだ(J1平均回数は171回)。横浜FMの攻守において前がかりに走るサッカーと、前田のプレースタイルとの親和性は高い。

そして、今の横浜FMの戦術の土台を築いたのは、現在スコットランドのセルティックFCで指揮を執るアンジェ・ポステコグルー監督である。噂されているセルティックへの移籍が決まれば、チームに違和感なく溶け込み、欧州でもスプリントモンスターが暴れるはずだ。

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