伊東純也を過小評価したサウジアラビア
サッカーのカタールW杯アジア最終予選(グループB)第8節が2月1日に行われ、日本代表は埼玉スタジアムでサウジアラビア代表と激突した。緊迫した攻防が繰り広げられるも、日本が要所でサウジアラビアを上回り、2-0で快勝した。
マン・オブ・ザ・マッチは、間違いなく伊東純也(ヘンク)だ。前回対戦で先発した浅野の代わりに先発した右サイドで伊東は、1得点1アシストと結果を出した。特に前半32分、サウジアラビアのDFを追い抜いてのアシストは、俊足が活きた伊東ならではのプレイだった。
さらに後半5分、伊東が4試合連続弾となるミドルシュートを決める。2点差をつけられて意気消沈したのか、サウジアラビアの連携が乱れるなど試合の流れを決定づける一発だった。
少し驚きだったのは、サウジアラビアが伊東に走るスペースを与えたことだ。事前にデータはあったはずだが、2〜3人がかりで伊東を囲う場面がほぼなかった。昨年10月の対戦で、同じ俊足の浅野にいい仕事をさせなかったことが自信になったのかもしれない。
結果、伊東をスピードに乗せてしまう場面を作り出してしまう。これはサウジアラビア(エルヴェ・ルナール監督)のミスと言えるだろう。かけっこになれば、アジアレベルで伊東に勝てるDFはそう多くない。
また、前半23分に伊東と交錯したアブドゥレラー・アル・マルキ(アルヒラル)が負傷交代したことで、サウジアラビアのプランに狂いも出たのかもしれない。ただし、それらを差し引いても伊東は称賛されるべき出来だった。
左サイド問題は決着つかず 酒井宏樹&冨安健洋の両翼もあり?
日本代表は、今節も中国戦と同じ先発メンバーで臨んだ。注目された左サイドバックは、この試合だけで比べれば、セーフティーなプレイを見せた長友佑都(FC東京)のほうが、短時間で複数回ボールを失った中山雄太(ズヴォレ)より出来は良かった。
とはいえ、レベルが均衡したチームを相手に、後半からサイドバックとして途中出場するのは本来どんな選手でも入り方が難しい。中山を責めるのはやや酷だろう。左サイドバックで先発すべきは長友か、中山か、という問題は判定が難しく、解決は先送りになった格好だ。
ただしW杯本戦を見据えると、長友と中山の2人には、フィジカルや判断力、技術力のいずれかで物足りなさも感じられる。
長友は攻撃で詰まる場面が少なくなかった。ほぼクロスを上げる選択肢しかなく、サウジアラビアからすれば守りやすかったはずだ。中山は、緊迫した試合での守備不安を露呈した。ただ、前述した途中出場の入りの難しさもあった。サウジアラビアと同等、あるいはそれ以上の相手と90分対峙したときのパフォーマンスが見たいところだ。同様に、旗手怜央(セルティック)も左サイドバックでテストしてほしい。
左サイドバック問題の解決策としては、他の形も考えられる。サウジアラビア戦でセンターバックを務めた板倉滉(シャルケ)と谷口彰悟(川崎フロンターレ)が計算できるようになった今こそ、冨安健洋(アーセナル)のサイドバック起用も試してほしい。両利きであるため、左でも右と同じくらいプレイできる可能性を秘めている。酒井宏樹(浦和レッズ)、旗手らと組み合わせて機能すれば、日本代表の守備陣は攻守のギアが一段階上がるはずだ。
4-3-3は完成度高まるも……W杯本戦に備えた代替プランの必要性
今回のサウジアラビア戦で伊東の次に活躍したのは、遠藤航(シュトゥットガルト)ら中盤の3人だ。10月の対戦で先発した鎌田大地(フランクフルト)と柴崎岳(レガネス)の代わりに、田中碧(デュッセルドルフ)と守田英正(サンタ・クララ)が入ったことで守備強度が格段に上がった。この中盤の3人が90分に渡ってピッチのいたるところに顔を出し、ピンチの芽をつみ、チャンスを生み出し続けた。もはや現日本代表の生命線と言えるだろう。
だが幸か不幸か、4-3-3の戦術が当たっていることで先発メンバーが固定されてしまった感もある。今はまだ良いが、W杯本戦で連戦になれば中盤の遠藤・田中・守田もどこかでガス欠を起こしかねない。
しかしこの3人が揃わないと、4-3-3の守備強度は出にくい。東京五輪の二の舞にならないよう、別選手たちを起用した4-2-3-1など代替プランも仕上げたいところだ。
もちろんサッカー日本代表の直近の最重要課題は、アジア予選を勝ち抜くことだ。しかし日本のサッカーファンの間では、2018年のロシアW杯でベルギーに敗北した直後から、本戦ベスト8進出を願う空気が濃くなっている。それを実現するためには、W杯出場に一喜一憂せず、快勝の裏に隠れた課題も処理していく必要があるのではないだろうか。
【関連記事】
・サッカー日本代表、中国戦で見えたW杯への光明と不安
・サッカー日本代表に新戦力台頭、大迫勇也、柴崎岳、長友佑都の起用法に疑問符
・「ドル箱」だったはずが…サッカー日本代表戦が地上波から消えた複雑な事情