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サッカー日本代表強化へ、Jリーグ活性化へ「アジアリーグ」創設を

2021 12/1 06:00中島雅淑
サッカー日本代表の森保一監督,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

「アジア全体の強化」が日本代表の強化策

現在、カタールW杯アジア最終予選で苦戦が続く日本代表。6大会連続本大会出場により「出場は当たり前」という空気感が生み出されており、“おごり”があったのかも知れない。しかし、それ以上にアジア全体のレベルが上がっていることが予選を難しいものにしている最大の要因だろう。

初戦で手痛い黒星を喫したオマーン代表には、過去の対戦で1度も敗れたことがなかった。アジアカップなどで不思議と対戦の機会が多く何とか退けてきたが、2026年からはW杯出場国はさらに拡大することになっており、これまで辺境の地と言われていた国々の鼻息は荒い。

日本がさらに強くなるためには、どのような強化が必要だろうか。ヒントとなるのは、元日本代表監督も務めた岡田武史氏(現J3今治代表)の「アジア全体の強化こそが日本代表を強化することにつながる」という話だ。

強豪国と言われる南米やヨーロッパの国々と親善試合を積んでいけば自然とチームの強化は図れる気もするが、現在の過密日程の影響により、国際AマッチデーはW杯予選やEURO予選で埋まっているという事情もある。さらに現在UEFAはネーションズリーグの創設により、代表戦すら放映権収入にしようと画策している。なかなかマッチメイクするのは困難だろう。

必然的にアジア諸国との対戦機会が多くなる中で、その一戦をいかに有意義なものにできるかが今後の大きなテーマだ。数年前から日本サッカー協会は国内でも指導者としての実績がある西野朗氏や三浦俊也氏などをタイ、ベトナムといったサッカー後進国に送り込むプロジェクトを進めてきた。

前者は多くの選手がJリーグにやってきて実力の高さを証明しており、後者は2019アジアカップベスト8に食い込むなど躍進している。その礎を築いたのは日本人指導者の尽力だったと言えるだろう。

アジア予選の難易度が上がっていけば、さらに個人、チームとしてレベルアップを果たす必然性に迫られる。常に厳しい環境下で試合をすることが重要だ。このプロジェクトの動向は引き続き見守っていきたい。

ヨーロッパリーグをモデルにした「アジアリーグ」

筆者が提言したいのは新たな「アジアリーグ」創設だ。現在、アジアクラブNo.1を決める大会としてはACLがあるが、今シーズンはAFC加盟の40チームが出場するビッグトーナメントで、Jリーグからは川崎F、G大阪、名古屋、C大阪の4チームが参戦し、アジアの頂点を争った。

同大会にはJリーグの順位1-3位のチームおよび天皇杯優勝チーム(天皇杯優勝チームとリーグ上位チームが同じ場合はリーグ4位チームが出場権を得る)に参加資格が与えられているが、この大会に次ぐコンペティションの創設がアジアの競技レベル向上に寄与するのではないか、と考える。

モデルとなるのはヨーロッパのリーグ事情だ。例えばセリエAを例にとると、上位4チームに翌シーズンのCL出場権が与えられる。さらに5、6位のチームはEL出場権を確保し、コパイタリアの優勝チームもEL出場権は確保できる。

この条件設定がリーグを面白くする要因になる。リーグ優勝は難しくとも、ヨーロッパの大会への出場資格を得る順位の確保なら、名だたるビッグクラブを出し抜いてプロビンチャーレにも十分可能なミッションだ。事実、過去にはウディネーゼやキエーボといったクラブが順位表をかき回したシーズンもあり、優勝争い以外の楽しみを我々に提供してくれた。

現行のACLに倣い、新たなリーグの規模を考えると、32チームほどが出場権を得る大会となるだろうか。Jリーグからは2、3チームが出場権を獲得する。現在のリーグ戦順位で6位のチームまでが翌シーズンのアジアでの戦いに参戦するチャンスがあり、リーグは最後まで目が離せなくなる。

消化試合が減り財政面でも好影響必至

川崎Fの「独り勝ち」が続き、最終盤にはリーグへの興味も薄れた感すら見受けられたここ数年。「優勝争いもなく、降格することもない」というクラブが必然的に増えてしまい、選手たちにとってはモチベーションの維持が課題になる。

また、集客においても目玉となる「何か」が欲しいところで、それらの問題の特効薬となるのが、新たなリーグ戦の導入だ。最後までしびれる戦いが展開されることで、Jリーグのためだけではなく、コロナウイルスの影響で財政的に苦しむ多くのクラブにとっても光明となるだろう。

折りしも、中国では強大な資金力を背景に海外から選手を集め、ACL制覇などタイトルを総なめにした広州恒大(現広州FC)が親会社の恒大グループの経営破綻により、危機的状況を迎えている。同国リーグを引っ張ってきた存在だけに他クラブに与える影響は計り知れない。

こうしたクラブの救済、そして、新興勢力の強化という観点から意義は大きいはず。開催日程や放映権、AFCのスタジアム規定に到達しているかなど、クリアしなければならない細かな問題は多いが、今までそのチャンスを得られなかったチームが、アジアの強豪チームと戦う機会を得られるかもしれない夢のような話だ。ぜひとも実現してもらいたい。

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