フル代表デビュー戦で決勝点アシスト
崖っぷちに立たされていた森保ジャパンに待望の救世主が登場した。鮮烈なフル代表デビューを飾った24歳の超絶ドリブラー、三笘薫(サンジロワーズ)だ。
サッカーの2022年ワールドカップ(W杯)カタール大会アジア最終予選B組第6戦は11月16日、各地で行われ、年内最終戦の日本は敵地のマスカットでオマーンを1―0で下した。
後半36分、東京五輪代表世代でもある国際Aマッチ初出場の三笘のクロスから伊東純也(ゲンク)が2試合連続ゴールを決め、9月には敗れたオマーンにアウェーで雪辱。3連勝で勝ち点を12に伸ばし、W杯本大会出場権を獲得できる2位に浮上した。
止められない、止まらないドリブル
後半開始から投入された三笘はファーストプレーから迷いなく、鋭いドリブルで仕掛けた。左のライン際でボールを受けると、滑らかに動きでボールを運びながら加速。オマーン2選手を翻弄して敵陣深くに進入して倒され、FKを獲得した。
まさに止められない、止まらない―。一瞬にしてチームのムードが前半からがらりと変わった。解説の岡田武史元日本代表監督も「いいですねえー、こういうプレーが欲しかった」と絶賛した。
三笘のドリブルはJリーグの川崎フロンターレ時代から唯一無二のオリジナルティーにあふれている。身長178センチで爆発的なスピードがあるわけではない。それでも縦や中に切れ込むドリブル突破もできれば、緩急自在にスピードのアクセントを付けて相手を揺さぶる多彩なパターンを持ち合わせる。
視野が広く、独特の間があるボールの持ち方や細かいタッチも秀逸で、対峙する相手が我慢できずに先に動いてしまうのが特徴的だ。スピードを上げても常にボールはコントロールできる位置にあり、相手はコースを読みづらい。一部で「ヌルヌル」ドリブルとも呼ばれる、そんな三笘の強みがオマーン戦でも随所に現れていた。
後半36分にはDF中山雄太(ズウォレ)の縦パスに反応した三笘がペナルティーエリア内で倒れ込みながら中央へクロス。これを伊東が押し込んで決勝ゴールを奪った。
筑波大の卒論テーマもドリブルの情報処理
神奈川県川崎市出身で兄の影響でサッカーを始めた。地元の川崎フロンターレの育成出身。高校卒業時にプロ契約の誘いを断って筑波大に進学し、1対1のドリブル練習を重ねてきた。
卒業論文のテーマは「サッカーの1対1場面における攻撃側の情報処理に関する研究」。陸上男子110メートル障害の元日本記録保持者、谷川聡准教授にも師事し、緩急をつけた走り方や止まり方など「体を自在に操る方法」を学び、最大の武器に磨きをかけた。
プロ1年目は新人最多タイの13得点
プロ1年目から大活躍し、新人最多タイの13得点、J1最多12アシストで、ベストイレブン選手間投票で最多得票。ラストパスだけではなく、点も取れるアタッカーとしてJリーグ時代から最強チームの中でも圧倒的な存在感を発揮してきた。
「切り札」としての起用にも応え、昨季30試合中19試合、13得点中8得点が途中出場からというデータもある。
憧れはメッシとネイマール
川崎フロンターレ時代の公式サイトによると、プロ選手として絶対に譲れないプレーは「ボールを運ぶ技術」。自分の武器は「ドリブル、逆をとるプレー」。憧れる選手はメッシ(アルゼンチン)とネイマール(ブラジル)という天才ドリブラーを挙げている。
東京五輪は直前の負傷で不完全燃焼だったが、J1川崎での活躍で評価を高め、欧州に渡った。10月にはベルギー1部のサンジロワーズでリーグ戦初得点を含む3ゴールの活躍で4―2の逆転勝ちに貢献。0―2の後半から出場し、圧巻のハットトリックで劇的な逆転勝ちを呼び込み、文句なしで試合のMVPに選ばれた。
いつも冷静沈着で、変幻自在のドリブルを持つ三笘が見据える目標の頂きは高い。今後も森保ジャパンで唯一無二の切り札になっていくだろう。
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