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女子W杯を2年ごとに開催か、FIFAが前向きに検討

2020 1/10 11:00Takuya Nagata
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Ⓒゲッティイメージズ

フランス連盟の提言にFIFAが乗り気

国際サッカー連盟(FIFA)のジャンニ・インファンティーノ会長が、女子のワールドカップの開催周期を、現行の4年に1度から2年ごとにすることを検討していることを明らかにした。

およそ10億人が視聴し大成功を収めた2019年女子ワールドカップ。そのホスト国、フランスサッカー連盟(FFF)のノエル・ル・グラエ会長の提案を受けて、FIFAは今後、前向きに検証していくという。その理由について、W杯が女子サッカーの発展に大きなプラスの影響を与えるからだとしている。

男子に続き女子でも拡大路線

日本も招致に立候補している次回2023年大会では、出場国が24チームから32チームに拡大することが既に決定している。FIFAは、男子サッカー同様に、女子サッカーも拡大路線をとっていくようだ。

男子サッカーでは様々な日程の事情により、W杯開催は4年に1度というのが総意だといわれている。欧州選手権やアジアカップといった大陸ごとの大会も4年に1度行われており、主要国際大会が2年に1度ある。予選期間も考慮すると、これ以上の頻度で開催するのは非現実的だという考えが大勢を占める。

一方、女子の各大陸の大会は、W杯と比較して注目度が低い。現行の女子アジアカップはW杯予選を兼ねているため、必然的に下位の大会という位置づけになる。欧州を例外として、その他の大陸は概ね大陸の大会とW杯予選が統合されており、このままだと大会としての存在感を出しにくい。

この状況を鑑みると、女子サッカーを盛り上げるためにW杯を2年に1度開催するよりも、各大陸の大会をW杯から分離することを検討してみてもよいのではないだろうか。その一方で、男子と比較してまだ日程に余裕があるというのも事実だろう。

女子サッカーはオリンピックもA代表、米国一強を打破せよ

忘れていはいけないのは、女子サッカーはオリンピックも年齢制限のないフル代表が参加しているということだ。FIFAは国際オリンピック委員会(IOC)の要請に応じずに、男子サッカーに限ってはオリンピックの出場選手に原則23歳以下という年齢制限を設けている。これは、FIFAW杯を世界で最も権威ある大会にするための戦略だ。

女子サッカーはW杯とオリンピックでA代表の世界大会だらけでマンネリになり、逆にW杯の価値が下がってしまわないだろうか。女子サッカーの人気が高まったただけに、オリンピックは将来的に男子と同様に、U23の大会になる可能性も考えられる。

もう一つ、女子サッカーの現状に言えることは、米国の一強の時代が続いているという事実だ。2011年に決勝戦で日本がアメリカを下して以降、2015年、2019年とアメリカが連覇している。大会が始まる前から、優勝チームの見当がついてしまうようでは、盛り上がりは頭打ちになる。ただ大会を増やすばかりではなく、日本は勿論、他の国々が米国に太刀打ちできるだけの実力をつけることを期待したい。

また、女子のサッカーが近年盛り上がりを見せているのはW杯だけではない。クラブレベルでも欧州では非常に盛り上がっている。代表チーム同士の世界大会を増やすことだけが、選択肢ではないかもしれない。

大量生産はドラマの価値向上にならない可能性も

短い選手人生でW杯は4年に1度しか訪れない。1選手が出場できるのは多くても4、5回だろう。よほどの大物選手でない限り、アスリートとしてのピークは5~10年。一生に1度くらいの覚悟で、選手たちはW杯に臨んでくる。大会直前に負傷をして子供のように泣き出す選手もいる。それがW杯のドラマなのだ。プロ選手が試合中に泣き出すシーンが見られる大会というのも非常に稀だ。

大会を拡大して、露出や収益が向上するという考えは理解できるが、スポーツはドラマでもある。大量生産は必ずしもプロダクトの価値を高めることにはならないことも強調しておきたい。

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