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平野歩夢、スケボーで史上初の夏冬両五輪メダルに挑戦

2019 6/15 07:00田村崇仁
スケボーで東京五輪を目指す平野歩夢Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

スノボでソチ、平昌銀メダル

米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平が投打の「二刀流」で野球界の常識を覆す活躍を見せているが、来年の東京五輪に向けても「二刀流」に挑戦する注目選手がいる。

スノーボードの男子ハーフパイプで2014年ソチ、18年平昌と冬季五輪2大会連続銀メダルの平野歩夢(木下グループ)だ。東京五輪で初採用されるスケートボードに挑戦することを表明し、5月の強化選手選考会を兼ねた日本選手権(新潟県村上市)では天性の高く滞空時間の長いジャンプを持ち味に、パークの男子でいきなり初優勝。その非凡な才能をいかんなく発揮し、20歳のホープは「二刀流」で日本史上5人目となる夏と冬の五輪出場を目指す。

スケボー一筋のライバル抑え日本一

コンクリート状のすり鉢状のコースで競うスケートボードのパーク。最初に挑んだ3月の日本オープンで、平野はジャンプしながら背中向きに1回転半回る大技「バックサイド540」を成功させるなど、3位に入って周囲を驚かせた。

そして迎えた日本選手権では、わずか2カ月でさらにレベルアップした技をアピール。昨年の大会と日本オープンを制した笹岡建介(Proshop Bells)らスケートボード一筋のライバルたちを抑えて、堂々と日本一に輝いた。

競技は40秒を3回滑ってベストスコアで争うが、1回目から勝負に出ると、空中に跳び上がってから板を蹴って進行方向と垂直に回転させ、左手でつかんでから着地する「キックフリップ・インディーグラブ」を成功。1回転半の「バックサイド540」も手堅く決め、65.7点をたたきだした。トラック(車輪の軸)でコースの縁を滑る技も安定し、世界への挑戦権を勝ち取った。

過去の「二刀流」は4人

夏冬両五輪に出た過去の日本選手は女子3人、男子1人の計4人だ。スピードスケート女子で1984年サラエボ冬季五輪から4大会連続出場した銅メダリストの橋本聖子は、88年ソウル夏季五輪から3大会連続で自転車の代表に選出された。関ナツエと大菅小百合も冬季はスピードスケート、夏季は自転車の代表となった。

男子は88年ソウル、92年バルセロナ五輪に出場した陸上短距離の青戸慎司が、98年長野五輪ボブスレー4人乗りに出場。しかし夏冬両方の五輪でメダルを獲得した選手はいない。

夏冬両五輪に出場した日本選手ⒸSPAIA

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スノボより長いスケボー歴

東京五輪のスケートボードは2種目で「ストリート」と「パーク」を実施。ストリートは街中にある斜面や階段、手すりを模したコース、パークは深さや角度が異なるくぼ地を組み合わせたコースを使用する。採点はトリックの難易度や独創性などを評価する方式だ。出場枠は各20人。1種目当たり1カ国最大3人までで、東京五輪直近の世界選手権の上位3人が最優先で確定し、残りは国際大会で得られるポイントのランキングで出場が決まる。

平野のスケボー歴は4歳の頃からで、実はスノーボードよりも長い。今回、日本選手権を制したことで、東京五輪出場に必要なポイントを稼げる海外大会へも派遣されることになり、今後は海外に目標をシフトしてさらなるレベルアップを図る。

縦の動きと横の速さを磨けば

世界のトップ選手とはまだ技術的にも感覚的にも実力差があることは本人も自覚している。スノボで培ったジャンプの滞空時間と高さは圧倒的だが、あらゆる難コースに対応し、多様な技の組み合わせや独創性をもっと成長させる必要がある。

パーク男子は国内で絶対的と呼べる存在もおらず、世界的にも群雄割拠という状況。縦の動きと横の速さを磨けば、世界のトップに近づける可能性があると期待する専門家は多い。人が跳べない高さに迫力のある滑りと独創性が加味されると、世界の強豪相手にも十分立ち向かえる。夏冬両方の五輪でメダルを獲得すれば、日本人としては初。前人未到の偉業に、天才ボーダーがいよいよ挑む。

平野 歩夢(ひらの・あゆむ)14年ソチ冬季五輪のスノーボード男子ハーフパイプで銀メダルを獲得し、雪上競技で五輪史上最年少となる15歳74日で表彰台に立った。18年平昌五輪では2大会連続の銀メダル。最高峰のプロ大会「冬季Xゲーム」は16年オスロ大会で優勝。新潟・開志国際高出、日大。木下グループ。160センチ、50キロ。20歳。新潟県出身。